【TIFF】キツツキと雨:記者会見~沖田修一監督、役所広司、小栗旬

沖田ワールドのユーモアの源泉とは?

(第24回東京国際映画祭コンペティション部門)

(左より〉小栗旬、役所広司、沖田修一監督

今年の東京国際映画祭(TIFF)で、日本映画から唯一、コンペティション部門に参加した『キツツキと雨』。舞台は日本の小さな山村で、60歳の無骨な木こり・克彦(役所広司)と25歳の気弱な映画監督・幸一(小栗旬)がひょんなことから出会い、映画づくりを通して、互いの心の距離を縮めていくという心温まるストーリーだ。『南極料理人』(09)で高い評価を得た沖田修一監督がメガホンを取っている。

役所広司

TIFF2日目の10月23日(日)、沖田監督、役所広司、小栗旬が記者会見に登場。ガラス張りの会見場の外には、彼らを一目見ようと多くのファンが詰めかけた。
会見の冒頭、役所は「本作が東京国際映画祭で上映されて光栄です。とにかく心温まる、ほんわかとした映画なので、皆さんに楽しんでもらえたら嬉しく思います」と挨拶すれば、小栗も「この作品に参加できて光栄です。とても面白い映画に仕上がったと思います」とともに作品への手応えを語った。

本作では、克彦と幸一、映画のスタッフ、村の人々が次第に一体となって、幸一が監督するゾンビ映画の撮影が進められる。映画づくりの過程が面白くて、夢がある。その設定でどうしても気になるのが、役所は『ガマの油』(09)、小栗は『シュアリー・サムデイ』(10) と、ともに映画の監督経験があることだ。本作の役柄に、彼らの経験はどのように投影されたのだろうか?

小栗旬

役所は「僕が監督した映画(『ガマの油』)は、小栗さん演じる幸一のゾンビ映画よりは予算はあったかな」と場を笑わせたあとに、「いろいろな現場を見てきましたが、沖田監督の脚本はリアルに映画の現場を描いています。こういうスタッフ、こういう俳優っているなと思いつつ、皆で楽しみながら現場で過ごしていました」。小栗は「幸一がプレッシャーに負けて、現場から逃げ出そうとするシーンがありますが、あの幸一の気持ちは、自分が映画を撮っていたとき、実は毎日感じていました。監督をやりたいと言って、自分から始めたことなのに、いざ始めてみたらこんなにも大変なんだ・・・と。とにかく逃げたい、誰もいないところに行きたいと思っていました。幸一役を頂いたとき、その当時を思い出しました」と苦笑い。

そんな小栗の経験がキャスティングに影響したのかどうかという質問に沖田監督は、「僕が小栗旬という俳優が好きだということが、前提です。『シュアリー・サムデイ』での彼のインタビューを読んでいたら、監督の苦労をご自身の言葉で素直に語っていて、そういうところは(幸一の)キャスティングとして考えました」と明かしてくれた。

沖田修一監督

劇中で繰り広げられる克彦と幸一の、どこかズレていて、会話が噛み合っているような、噛み合っていないような・・・という絶妙な掛け合いに何度も笑わせてもらった。それは爆笑という類の笑いではなく、ユーモアを噛みしめるような、余韻を楽しむ笑い。『南極料理人』でもそうであったように、沖田監督のユーモアに魅了され、やみつきになるファンも多いことだろう。そんな監督のユーモアのネタの源は、どこにあるのだろうか?

「自分でもよく分からないんです・・・」と困り顔の表情の沖田監督。ただ、「必死で生きている人を映画に登場させて、その人たちの物語をつくると、人間のおかしみが自然に出てくることがあるので、そういう点を大切にしています。また、俳優が脚本を楽しんで、受け入れてくれることでユーモアが生まれてくるのかな、と思います」と誠実に答えてくれた。

そんな監督のユーモアを、役所と小栗はどう捉えていたのだろうか?
役所は「脚本がこれだけ面白いのに、俳優が演じたときに、脚本よりつまらなくなったらどうしようという不安はあります。しかし、その(演じている)人物がユーモアを狙って喋ったり、行動しているのではなく、生きるうえで何らかの理由があるからだと感じています。それが沖田監督の狙っているユーモアだと思います」と監督のユーモアに対する見解を披露。また小栗は「監督は特に何がダメっていうわけじゃないんですが、「もう一回、(本番)いいですか?」って聞いてくるんですよね(笑)。それは役所さんとも話していたことですが、監督にしか分からない、何か微妙なズレみたいなものがあるんだろうな、と思っています。僕らは、どうしたら監督が「いい」と言うようになるんだろうか、と思っていました。僕らは(演技のうえで)特に何かを変えているわけではないですが、前の演技よりはちょっとした何かが違うんだろうなということを、日々体験していました」と沖田監督独特の“何か”について、不思議がっていた。

ムービー用カメラに向かい、笑顔で手を振る3人

小栗の言うところの、“何か”が違うことについて、沖田監督自身は分かっているのだろうか?
その問いに対して「多分、分かっていないのですが、何というか、そのときの空気か何かが違うこともあったし、もう一回やったらより良くなるんじゃないか、って思うこともありました。だから、その理由はないのですが、「もう一回いいですか?」って2人にお願いしていました」と沖田ワールドの一端を淡々と炸裂させて、会見は終了した。

そのよく分からない“何か”というのは、監督にしか分からないものなのだろう。それも言葉で言い表すというよりも、直感的なひらめきなのかもしれない。本作は、そんな沖田監督のひらめきが、あちこちで静かに息づいている。コンペ部門の審査結果の発表は、映画祭最終日の10月30日(日)。ぜひとも吉報が届くことを期待したい。

取材・文: 富田優子

▼作品情報▼

©2012「キツツキと雨」製作委員会

製作国:日本
製作年:2011年
監督・脚本:沖田修一
出演:役所広司、小栗旬、高良健吾、臼田あさ美、古舘寛治、嶋田久作、平田満、伊武雅刀、山﨑努
配給:角川映画
公式サイト:http://kitsutsuki-rain.jp/
2012年2月11日全国ロードショー

▼第24回東京国際映画祭▼
日時:平成23年10月22日(土)~30日(日)
公式サイト:http://2011.tiff-jp.net/ja/


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