【TIFF】歓待

何でもない家族に起こる事、誰にでも起こるかも

(第23回東京国際映画祭 日本映画・ある視点部門)
自分の仕事が紙関係という理由だけで観た「歓待」。大きな期待をせず(失礼!)観たのだが、思わぬ秀作で感銘を受けた。

家族と従業員1人だけで印刷の下請けの仕事やってて、家がそのまま印刷所という平凡な一家に、昔一家の主が世話になった人の息子だという人間が現れ住み込みで働き出した事で、平凡に見えた一家の生活が大きく変わる。

この映画、とにかく人間描写がうまい。自分の仕事が紙屋だからとてもよく分かるんだけど、下請けの仕事だけで生きてる家庭内工業の印刷屋は普通の人が思ってるより多くて、そういう印刷屋のオヤジってこういう人のいい気の弱い感じの人がとても多い。
印刷屋の若い妻が近所付き合いを嫌がったり出戻りの小姑や住み込みの加川をちょっと嫌がるのもありがちだよなって思わせるし、住み込みで働く加川というなんだか得体のしれない人間だけど、人に取り入るのがうまくて、仕事もそこそこ出来てっていう人間もいるいる。

ストーリーは、今まで雇っていた従業員が体調を悪くしたために代わりの従業員として雇った加川の大胆な行動によって、あれよあれよと思いもしない方向に持っていかれてしまう。その様がなんとも言えず、絶妙で、おかしくて、テンポがよくて、コメディ映画の王道を感じさせる。こんな平凡な人達を描いてここまで面白い映画にしてしまう監督の手腕は素晴らしい。

で、ゆすりだったり浮気だったり不法入国だったりと、平凡な一家に数々の非凡な出来事が起こり、最後は結構めちゃくちゃな状況になってしまったにも関わらず、加川の出現はこの倦怠期の夫婦に改めて何かを気付かせた事がある様で、悪くなかったんじゃないか。そんな余韻を残しながらも、特にこの夫婦の日常はこれからも変わらないんじゃないかなって思わせる終わり方でもある。この言葉で表せない雰囲気というか余韻を表現出来た事が、この映画の秀逸なところだと思う。

この映画、日本映画・ある視点部門で作品賞を受賞しました。それも納得の出来で、今回の映画祭の一番の収穫となった映画でした。

Text by 石川 達郎
オススメ度:★★★★★

4月23日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、順次全国にてロードショー!

監督:深田晃司
キャスト:山内健司、杉野希妃、古舘寛治、ブライアリー・ロング、オノエリコ、兵藤公美
(c)歓待製作委員会
96分 日本語 カラー HDCAM | 2010年 日本 | 配給:和エンタテインメント
公式サイト:http://kantai-hospitalite.com/

第23回東京国際映画祭公式サイト:http://www.tiff-jp.net/ja/

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