【TIFF】転山
(第24回東京国際映画祭コンペティション部門)
台北で暮らす青年シューハオは、亡き兄が果たせなかったチベットのラサへの自転車の旅に出かけることを決意する。ラサに到着するには標高3000m以上の峰をいくつも越えなければならず、しかも季節は冬、過酷な旅であることは誰の目から見ても明らかだ。それにもかかわらず、シューハオは旅立つ。
鑑賞前は正直なところ、それほど期待値が高い作品というわけではなかった。物語の展開も何となく読めていたし、“転山”というタイトルが、どうもいまいちピンとこなかったということもある。
ところが、その予感は良い意味で裏切られた。シューハオの旅に次第に引き込まれ、クライマックスで訪れる爽やかで健やかな感動に、ノックアウトされてしまったのだ。(序盤の、なぜシューハオが兄の遺志を継いでチベットに行きたいのか?という動機の描き方が弱いなど、気になる点はあるとはいうものの。)こんなにも健全な物語(?)は、近年の東京国際映画祭のコンペティション部門では珍しいのではないか?とすら、思った。
筆者のノックアウトの原因となった、本作の主な見どころは2つ。
1つは、主演俳優チャン・シューハオの存在だ(奇しくも役名と同じお名前!)。日本でも人気が出るんじゃないかと思うような、イケメン。旅の前半は、ぼったくり被害に遭ったり、一人では心細くなって旅の道連れを探したりするなど、頼りない面も見え隠れし、それがかえって彼の甘いマスクとマッチしていた。ところが、あるアクシデントをきっかけに自分一人で厳しい自然と、そして自分自身と向き合うことを余儀なくされてからは、顔つきがガラッと変わっていく。本当に同一人物かしら?と思うくらい、時間の経過(=旅の進展)とともに精悍さを増していくのだ。その変化こそが主人公の成長の証だが、その様子に心ときめく女性の観客も多いのではないかと思う。
2つめは、チベットの自然描写だ。シューハオと並ぶもう一人(?)の主役と言ってもいい、チベットの雄大な風景は、とにかく「すごい」の一言に尽きる。容赦ない吹雪も、澄んだ青空に映える山々も見事にカメラに収めており、スクリーンで観る価値のある映画だと断言したい。特に旅行好き、山好きの人ならば、間違いなくツボに入ること、請け合いだ。
シューハオの旅の終盤は、峰の標高が5000m(!)を越えることで空気もさらに薄くなり、彼が言葉らしい言葉を発することは、ほとんどない。聞こえてくるのは、シューハオの荒い息づかいと打ちつける風雪の轟音で、こちらも息苦しくなってしまう。そんな彼と自然とが産み出した迫力ある映像は、多くの人の心にまっすぐに届くはずだ。“予想通りの展開”で新鮮な驚きは少ないかもしれないが、それを凌ぐ爽快感に浸っていただきたいと思う。
オススメ度:★★★★☆
Text by 富田優子
▼作品情報▼
製作国:中国 製作年:2011年
原題:KORA
監督:ドゥ・ジャーイー
出演:チャン・シューハオ、リー・シャオチュアン、リー・タオ
▼第24回東京国際映画祭▼
日時:平成23年10月22日(土)~30日(日)
公式サイト:http://2011.tiff-jp.net/ja/
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