【FILMeX】東京プレイボーイクラブ:Q&A/舞台挨拶~奥田庸介監督、大森南朋、臼田あさ美、淵上泰史

熱くて楽しい撮影現場を語る

(第12回東京フィルメックス・コンペティション作品/学生審査員賞受賞)

舞台挨拶:(左から)淵上泰史、臼田あさ美、大森南朋、奥田庸介監督

11月25日(金)、第12回東京フィルメックス・コンペティション作品『東京プレイボーイクラブ』が上映され、奥田庸介監督、大森南朋、臼田あさ美、淵上泰史が舞台挨拶および上映後のQ&Aに登壇した(注:臼田は舞台挨拶のみ出席)。

奥田監督は若干25歳で本作が商業映画デビューとなった。「自主映画を撮り続けていましたが、先が見えないとき、苦しいときに巡ってきたチャンスでした。これを逃したら俺は終わりだ、と思っていたので、身を削るような思いで撮りました。こうして皆さんに観てもらうことができて嬉しい」と作品に対する渾身の思いを語った。対して大森は「最近はやたらとテレビ(の缶コーヒーのCM)で“いい人”をやっていますが、この映画では決して“いい人”ではないので、ぜひ楽しんで」との余裕のコメントで、会場の笑いを誘った。

本作は、主人公・勝利(大森)が職場での喧嘩が原因で町を離れ、東京にいる昔の仲間・成吉(光石研)が経営するさびれたサロン「東京プレイボーイクラブ」に身を寄せる。一方、サロンのボーイ・貴弘(淵上)の恋人エリ子(臼田)は、貴弘がサロンのカネを持ち逃げしようとしたカタとして、ホステスとして働かされる羽目に。ある日、勝利は近所のチンピラと喧嘩し、相手を叩きのめしてしまう。この事件をきっかけに、勝利、成吉、エリ子の3人はとんでもない事態に巻き込まれていくという物語だ。バイオレンスに満ち溢れているが、笑いの要素もあり、とてもメリハリが効いている。『ハゲタカ』鷲津役や大河ドラマ『龍馬伝』武市半平太役でも凄みのある演技を見せていた大森だが、本作での暴力シーンでは凄みもそうだが、スクリーン目一杯に暴れる姿を披露している。そんなシーンを大森は「今まで演じたことのない役柄だったので、楽しかった」と振り返った。

自分でも何が何だか分からないうちにトラブルに次ぐトラブルに巻き込まれるエリ子役を、茫然自失演技(?)で見せた臼田は、「撮影前は大森さん、光石さんという素晴らしい映画人と共演できることに緊張や不安が募っていた」という。でも「笑いの絶えない現場で、緊迫感のあるシーンを撮ることが多いのに皆さんといろいろとおしゃべりできて楽しかった」と現場の様子を語り、「エリ子を演じられて良かった」と作品への手応えに満足げ。また淵上は本作が初の大役といってもいいくらいの抜擢に対し「本当に俺でいいのかなー?と驚いたが、選ばれたからには危機感を持って必死に取り組んだ」と役への意気込みを振り返った。

Q&Aの様子

撮影現場は赤羽の飲み屋街ということで、撮影時はかなり酔っ払いに絡まれることが多かったという。奥田監督は「絡まれると、ついカーっとなっちゃって・・・。現場に迷惑かけました・・・」と反省の弁。淵上は登場シーンの撮影時で絡まれたとのことで、「頼むから殴るなよーっ」と念じながら(?)演技を続けていたとのエピソードを披露した。

また印象的なシーンとして「光石さんとの居酒屋のシーン」(大森)、「光石さんに追いかけられるシーン」(淵上)、と二人とも光石とのシーンを挙げたことが興味深い。「あのおじさん(光石)がおかしくて仕方なくて、笑わないようにするのが大変でした。アドリブも多かったし」と大森が言えば、淵上は「光石さんに頭をはたかれるシーンでは、本当にたんこぶができちゃって・・・。でも大先輩が俺に本気で向かってきてくれていることが嬉しかった」。日本映画界には欠かせない名脇役として活躍する光石だが、本作でもキーパーソン的な役割が光っている。彼のコミカルな演技も必見だ。

最後に奥田監督が「俺、まだ25(歳)だからぁ、のびしろあるしぃ、本当にマジで精進して、もっといい作品をお見せできるように頑張ります」と締めくくったが、発言の途中で大森が「上から目線で言わない」とツッコミをいれる一幕も。“イマドキの若者”的な態度の監督だったが、「現場に入ったときに、一流の役者やスタッフと一緒に仕事ができることで熱を出して病院で点滴を打ってもらった」という繊細な(?)一面も披露していたので、そのギャップがかわいくておかしかった。大森は奥田監督に触発されたのか、「俺、まだ40(歳)だからぁ…」と監督のマネをしてみたものの、やはり彼は“いい人”。照れて困惑気味な表情の大森に、会場は笑いと拍手に包まれた。

本作は、東京フィルメックスで初の試みとなる学生審査員賞を受賞。

取材・文:富田優子

▼作品情報▼
監督:奥田庸介
出演:大森南朋、光石研、臼田あさ美、淵上泰史
日本 / 2011 / 96分
配給:スタイルジャム
©2011 東京プレイボーイクラブ
公式サイト:http://tokyoplayboyclub.jp/
2012年2月4日(土)より、渋谷ユーロスペース、シネマート新宿他にて全国公開

▼第12回東京フィルメックス▼
日時:平成23年11月19日(土)~11月27日(日)
会場:有楽町朝日ホール、東劇、TOHOシネマズ日劇他
公式サイト:http://filmex.net/2011/

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