【三大映画祭週間2011】カンヌ、ヴェネツィア、ベルリンの世界三大映画祭で選ばれし秀作を一挙上映!

ミニシアターブームは、もはや“今は昔”と言うべきなのであろう。昨年から今年にかけては経済状況の悪化のあおりを受け、ミニシアターが次々に姿を消してしまうという、映画ファンとしてはあまりにも無念な知らせが相次いだ。そのせいもあり、カンヌ、ヴェネツィア、ベルリンという世界三大映画祭で重要な賞を受賞した作品ですら、日本での上映機会は極端に少なくなってしまった。ニュース等で映画祭のラインナップや受賞結果を聞くたびに、「あ、見たい!」という思いを募らせるものの、それと同時に「日本で果たして公開されるのかしら・・・?」という不安が常につきまとう。そして、結果的に劇場公開にまでこぎ着ける作品は、本当にごく僅かだ。 

そんななか、心躍るような朗報が飛び込んできた。それは8月13日(土)から26日(金)の2週間にわたり、ヒューマントラストシネマ渋谷で開催される「三大映画祭週間2011」だ。世界三大映画祭で受賞しながらも日本での劇場公開に至らなかった作品を一挙に上映。多くの映画会社の協力により実現した本映画祭では、英国の演技派女優サリー・ホーキンス(『わたしを離さないで』『ウディ・アレンの夢と犯罪』)が2008年ベルリン国際映画祭で銀熊賞(女優賞)を受賞した『ハッピー・ゴー・ラッキー』(イギリス)、2010年カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した『終わりなき叫び』(フランス、ベルギー、チャド)、2010年ベルリン国際映画祭で銀熊賞(男優賞、芸術貢献賞)を受賞した『夏の終止符』(ロシア)など、三大映画祭で受賞の栄に浴した7作品と、特別上映2作品を加えた全9作品の上映が決定している。映画ファンにとって、まさに垂涎ものの企画だ。 

このチャンスを逃せば、スクリーンでは二度とお目にかかれない作品ばかりかもしれない。この貴重なチャンスにぜひ劇場に足を運んでいただきたいと思う。なお、当サイト「映画と。」でも順次、上映作品のレビュー等を紹介していく予定。こちらにもご期待いただきたい。 


▼上映作品紹介▼ 

© 2010 Pili Films – GoÏ-Goï Productions - Entre Chien et Loup

『終わりなき叫び』
2010年カンヌ国際映画祭審査員賞受賞
監督・脚本:マハマト=サレ・ハルーン
出演:ユースフ・ジャオロ、ディオク・コマ、エミル=アボソロ・ムボ
2010年/フランス・ベルギー・チャド/シネマスコープ/92分
原題:Un Homme qui Crie 
英題:A SCREAMING MAN 

物語:現代のチャド。アダムはかつては水泳のチャンピオンに輝いた60歳代の男で、高級ホテルでプールの監視員をしている。しかし、ホテルは新しく中国系のオーナーに代わり、彼は自分の仕事を息子のアブデルに譲るように強要される。激しい怒りに駆られ、アダムは自分が社会的に辱めを受けたと感じる。一方、チャドは内戦の混乱の最中であった。反乱勢は政府軍を攻撃している。政府は市民に「戦争への参加」を求め、敵に対して戦える年齢に達した志願者に金を与えていた。地域の区長は度々アダムに参加するように強要する。アダムに金はなく、いるのは息子のみだったが… 

★作品レビュー: 「終わりなき叫び」父親と息子の間にある独特の空気を描く


© Swift Productions 2009

『キナタイ-マニラ・アンダーグラウンド-』
2009年カンヌ国際映画祭監督賞受賞
監督:ブリランテ・メンドーサ
出演:ココ・マルティン、フリオ・ディアス、マリア・イサベル・ロペス
2009年/フランス・フィリピン/ヴィスタ/110分
原題:KINATAY 

物語:ペッピングは新しく生まれてくる子供のために、若い恋人との幸せな結婚を控えていた。貧乏な警察学校の生徒である彼には、金を稼ぐ機会があればそれをみすみす逃すことなどあり得ない。すでに、ちょっとしたサイドビジネスとして麻薬の売買に関わって小銭を稼いでいたペッピングは、汚職に手を染めていた友人からの魅力的な金額の仕事の申し出を簡単に受けてしまった。すぐに彼は暗黒社会への強烈な道を辿ることになり、誘拐や美しい娼婦への拷問を体験する。精神を病んだ殺し屋に支配された悪夢のような一夜の中でおののき、助けを求めることも出来ず、ペッピングは自分の中にも殺し屋と同様の殺意が潜んでいるのではないかと考え始めるが… 

★作品レビュー: 「キナタイ‐マニラ・アンダーグラウンド‐」これはフィリピン版「闇の奥」である!


© Koktebel Film

『夏の終止符』
2010年ベルリン国際映画祭銀熊賞(男優賞)/銀熊賞(芸術貢献賞)
監督・脚本:アレクセイ・ポポグレブスキー
出演:グリゴリー・ドブリギン、セルゲイ・プスケパリス
原題:Kak ya Provyol Etim Letom
英題:HOW I ENDED THIS SUMMER
2010年/ロシア/ヴィスタ/124分 

物語:ロシアの北極圏辺境の島の気象観測所で二人の男が黙々と働いていた。彼らの仕事は定期的に周囲の放射能を測定し、そのデータを本庁に通信することだった。それこそが彼らと外界を繋ぐたった一つの手段だった。長年、孤独な環境の中、ここで働くセルゲイはこの仕事を非常に重要なものとして捉えていたが、一方、彼の新しいパートナー、パベルは夏を観測所で過ごすことを申請してきた新人だった。
ある日、セルゲイはパベルに観測をまかせて、鱒釣りに出かけた。未熟なパベルは観測時間を逃した上、それを埋め合わせるために嘘の記録を作ってしまう。しかも、さらに悪いことに、本庁からはセルゲイ宛に悪い知らせが届けられた。すっかり不安になったパベルは、帰ってきたセルゲイにそれらの酷いニュースを伝えることができない。しかし、真実はやがてセルゲイの知るところとなり、薄い霧とそそり立つ岩、砕ける波と容赦ない北極海が取り巻く荒涼とした土地で必然の結果が二人を待っていた。 

★作品レビュー: 「夏の終止符」北極圏の気象観測所、男たちに訪れた悪夢とは・・・


© Komplizen Film

『恋愛社会学のススメ』
2009年ベルリン国際映画祭銀熊賞(女優賞)/銀熊賞(審査員賞)
監督・脚本:マーレン・アーデ
出演:ビルギット・ミニヒマイアー、ラース・アイディンガー、ニコル・マリシュカ
2009年/ドイツ/ヴィスタ/119分
原題:Alle Anderen
英題:EVERYONE ELSE 

物語:サルディニアの避暑コテージに来たクリスとギッティは、表面上、熱烈な恋におぼれるカップルのように見える。しかし、彼らの大袈裟なはしゃぎ振りや秘密の約束ごとが、水面下の緊張感を伝えてくる。ギッティが何の心配もなくクリスへの熱愛をあからさまに表現するのに対し、クリスは自分の生活を受け入れ、個人的・社会的不安などについても考えていた。しかし、彼らが明らかにもっと幸せそうで上手く行っているように見える別のカップルと出会った時、二人の理想的な役割の幻想はもろくも崩れてしまう。クリスはより強く主導権を握ろうとし、ギッティはそれに合わせようとするが、自分の個性を見失いそうになり苦しむ。二人は他のカップルのように新しい生き方を見つけることが出来るだろうか? 


© 2007 Untitled 06 Distribution Limited, Channel4 Television Corporation and UK Film Council. All Rights Reserved.

『ハッピー・ゴー・ラッキー』
2008年ベルリン国際映画祭銀熊賞(女優賞)
監督:マイク・リー
出演:サリー・ホーキンス、エリオット・コーワン、アレクシス・ゼガーマン、エディ・マーサン
2008年/イギリス/シネマスコープ/118分
原題:HAPPY-GO-LUCKY 

物語:ポピー・クロスは楽天的な30歳。熱心で生き生きとした小学校の低学年向けの教師である。昔からの親友のゾエと一緒に暮らし、妹の一人とは仲がいいけど、もう一人とはそうでもない。彼女は厳しいインストラクターのスコットに運転を習ったり、情熱的なスペイン人のフラメンコ講習を受け、夜にはホームレスに出くわしたり、ソーシャルワーカーの助けを借りて、乱暴者の生徒を諌めたりする。その彼女の開けっぴろげな行動が見る者に何か誤解を生んだり、もっと悪い事態に嵌まったりしないかと首をかしげさせるが…果たして幸せはどこからやってくるのだろうか? 

★作品レビュー「ハッピー・ゴー・ラッキー」30歳・独身女性の“天然キャラ”が炸裂!


『我らが愛にゆれる時』
2008年ベルリン国際映画祭銀熊賞(脚本賞)
監督:ワン・シャオシュアイ
出演:リウ・ウェイウェイ、チャン・ジャーイー、ユー・ナン、チェン・タイシェン
2008年/中国/シネマスコープ/115分
原題:左右 
英題:IN LOVE WE TRUST 

物語:メイ・チューは娘のハーハーの余命があと2、3年で、救うためには骨髄移植が必要だと知らされる。彼女は前夫のシアオ・ルーに連絡を取り、移植の適合検査を受けるが二人とも一致しなかった。焦ったメイ・チューは人工授精でもう一人子供をもうけ、臍帯血移植で娘を救うしかないと考え、シアオ・ルーに相談する。二人ともそれぞれ新しい夫と妻を持ち、別々の人生を歩んでいたが、娘の命を救うためにそれに同意する。
産児制限のある中国では、メイ・チューが第二子を産むと、シアオ・ルーの妻トン・ファンは子供を持つことが出来ない。そのため、最初彼女はこの人工授精に猛反発するが、結局、ハーハーの命を救うためそれを受け入れる。しかし、人工授精は失敗。メイ・チューとシアオ・ルーは最後の手段として、秘密裏に直接性交渉で子供を作ろうとするが… 

★作品レビュー: 「我らが愛にゆれる時」幼き命を救うために、2組の夫婦が出した究極の結論とは…


『宇宙飛行士の医者』
2008年ヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)
監督:アレクセイ・ゲルマン・ジュニア
出演:チュルパン・ハマートヴァ、メラーブ・ニニッゼ、アナスタシア・シェベレワ
2008年/ロシア/シネマスコープ/118分
原題:Bumazhnyy Soldat 英題:PAPER SOLDIER 

物語:1961年、カザフスタン。ダニエルはソ連初の宇宙飛行計画に従事する専門医だった。彼はすでに結婚していたが、かの地でとても複雑で、しかし心休まる関係を若い女ヴェラと築いていた。後にモスクワへ戻り、ダニエルは将来の宇宙飛行士たちの健康管理の責任者になり、単なる士官たちへの医者というより、友達として接することに努めた。彼には国家の発展のために若者たちの命が犠牲になることがどうしても納得できなかった。それには彼の妻ニーナも同じ思いだった。そのため、彼女はダニエルが人命を危険にさらす計画に加わることを受け入れられず、仕事を辞めるように願った。ある日、ついに士官の一人が死に、ダニエルは心身を消耗して神経衰弱に陥った。しかし、世界初の有人飛行の基地を設置するために、彼は蝕まれた体を押して再びカザフスタンに向けて出発するが… 


<特別上映>『中国娘』
2009年ロカルノ国際映画祭金豹賞
監督:グオ・シャオルー
出演:ルー・ホアン、ボー・ウェイイー、ジェフリー・ハッチングス
2009年/イギリス・フランス・ドイツ/ヴィスタ/98分
原題:SHE, A CHINESE 

物語:山奥の小さな村から喧騒を求めて重慶に出てきたメイだが、その生活は本人が夢見ていたものと大きく違った。彼女はすぐに工場を首になり、いかがわしい床屋で職を見つけて、そのそばに住むやくざのスパンキーと恋仲になる。しかし、それも長くは続かず、ある日の深夜、スパンキーが背中に致命傷を負って帰ってくると彼女の眼の前で息を引き取った。メイは追手から逃れるために有り金をかき集めると、かねてからスパンキーの憧れの地だったロンドンへ旅立つ。彼女はそこで、ハントという老人と出会い結婚するが、すぐにその生活が平凡で退屈なものだと気づかされる。年老いたハントは川沿いに散歩に行けば新聞を読みふけり、庭で日光浴をすれば動こうとしない。若いメイはそれに耐えられず、次に、小さなレストランを経営していたインド人移民のリチャードの処へ転がり込む。ところがリチャードが突然、インドに帰ると言いだし、その時すでに、メイはお腹の中に彼の子を宿していたが… 


© 2006 – Les Productions du Trésor – EuropaCorp – Caneo Films – M6 Films

<特別上映>『唇を閉ざせ』
2007年セザール賞最優秀監督賞/最優秀男優賞
監督:ギヨーム・カネ
出演:フランソワ・クリューゼ、マリー=ジョセ・クローズ、クリスティン・スコット・トーマス
2006年/フランス/シネマスコープ/131分
原題:Ne le dis a Personne
英題:TELL NO ONE 

物語:アレックスは妻マルゴと訪れた湖畔で突然何者かに襲われ、湖に沈められる。奇跡的に助けられた彼だったが、マルゴはその後惨殺死体で発見される。しかし、8年後、マルゴを名乗る見知らぬメールがアレックスの元に届く。そして、そこには「このことは誰にも言わないで」という一言が…彼が、そのリンク先をクリックすると、その先に映っていたのは、少し年を重ねたが、元気なマルゴの姿だった。アレックスは一人で、マルゴの居場所と殺人の裏に隠された秘密を求めて、調査を開始する。一方、その時、マルゴの死体が発見された場所から新たな死体が現われ、警察はアレックスを容疑者として追い始める。アレックスが真実に迫る時、マルゴの行方を追う別のグループが現われアレックスを拉致しようとする。果たして、誰が何のために、二人を追うのか?事件の裏側に隠された恐るべき真相とは? 

★作品レビュー:ギヨーム・カネ監督の映像センスが光る「唇を閉ざせ」


▼「三大映画祭週間2011」開催概要▼
日時:平成23年8月13日(土)~26日(金)
場所:ヒューマントラストシネマ渋谷他(全国順次)
公式HP:http://sandaifestival.jp/ 


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