【TIFF】プレイ(パート2)

作品のもつ緊迫感、臨場感…その秘密

プレイ

© Coproduction Office

(第24回東京国際映画祭・コンペティション・最優秀監督賞受賞)
それにしても、この作品の臨場感、緊張感たるや半端ではなく、観終わった後はくたくたに疲れてしまう。なぜこんなにキツイのか、それは、カメラの位置に秘密があるように思う。離れた距離から、長回しで少年たちを写す場面が多いので、カメラは固定されていたかのような印象が強い。けれども意外に動いているのである。

デパートのスポーツ用品売り場では、同じ位置からカメラを左右に振って、アフリカ系の少年たちと、カツアゲされることになる少年たちを交互に写している。アフリカ系少年たちが写っていないところでも、彼らの奇声だけが常に聴こえていて、彼らが見えないことで逆に威圧感を与えている。アフリカ系の少年たちを避けて、デパートを出た少年たちの姿を、正面から、しかも同じ距離を保ちながら捉え、後ろから集団が迫ってくるのではないかという不安感を出す。ここでも追ってきているはずのアフリカ系少年たちの姿を見せないのが、恐怖感に繋がっている。ついに追いつかれて逃げられなくなった少年たちが、カツアゲ集団と行動を共にすることになった時は、離れた距離から、彼らの背中を追う。そのことで、うなだれ、不安な気持ちで彼らに従っている少年たちの気持が表れる。カメラの位置は、近づいたり離れたり、常に観客の不安をかきたてるような絶妙なポジションに置かれている。

もうひとつ例を挙げよう。追われる少年たちがお店の人に助けを求める場面では、カメラの位置は、彼らの目線と同じ高さになり、肩越しに店員の姿を捉えている。店員が奥に引っ込み店長に相談しに行っても、カメラの位置はそのままで、ガラス越しにその様子が写されるだけだ。ガラス一枚隔てているので、何をしゃべっているのかは、まるで聴こえない。この場面で観客は、少年たちとまったく同じ立場に立たされている。それが私たちに焦燥感を与える。このように、音声もまた間近に聴こえたり、あるいはまるで聴こえなかったり、その場に応じて選択されているのである。こうして、私たち観客の感情は、完全に監督のコントロール化に置かれ、動揺させられ続けられるのだ。人間の心理を巧みに計算したその細やかな演出は見事である。

また、長回しの中、役を演じる少年たちもドキュメンタリーでも観ているかのようにリアルなのがすごい。おそらく、近距離での撮影ではきっちりと演技指導がされているが、遠距離で撮影している時には、ポイントだけが言い渡されて、彼らの自由にまかされている可能性が高い。というのも、白人の少年が「腕立て伏せを100回やったら、この場を離れてもいい」と言われ、腕立て伏せをするシーン。回数が進むにつれ、黒人少年と捕えられた少年たちの双方が応援を始めるのだが、立場を超えて彼らが完全に一体化しているのが、画面から伝わってくるのだ。それは演技というよりは、彼らの文字通りプレイ(遊び)に近い感覚である。その辺りの塩梅が巧みゆえ、彼らが活き活きとして見えるのである。

ただひとつ、この作品で気になるのは、リアリズムを追求するあまりに、演出をやり過ぎてしまうところである。例えば、急に便意を催した少年が、集団から離れ用を足しにいく場面。カメラは実際に彼がウンコをするところまで写してしまう。しかも立ったまま、お尻の穴から出て、ボトボトと落ちるところまで見せている。おそらく、あそこまで大量に出るところを見ると、下剤でも飲ませていたのではないかと疑わざるを得ない。こういうのを、文字通りクソリアリズムという。見ていて不快な気持にさせられるだけだし、わざわざそんなところまで写すことによって、それが作品の中でどういう意味を持つのか、全く理解しがたい。劇映画とは、見せないまでも演出によっていかに観客の想像力をかきたてるかが、良し悪しの分かれ目であると思っている私には、こういう描写はもはや現実であって、演出とは言えないのである。作品をさんざん褒め称えておいて、結果星3つというのは、そういう理由によるものだ。

※脱糞シーンはトリックであることが判明しました。ほっとはしてみたものの、やっぱり不快なことには変わりないのですが。
おススメ度:★★★☆☆
Text by 藤澤貞彦


▼『プレイ』作品情報▼
監督・脚本:リューベン・オストルンド
出演:アナス・アブディラーマン、セバスチャン・ブリケット
制作:2011年/スウェーデン=デンマーク=フランス/118分
原題:Play
© Coproduction Office


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