【TNLF_2012】『マンマ・ゴーゴー』 愛と自虐で綴った母への想い -「春にして君を想う」の後日譚

マンマ・ゴーゴー人生とは皮肉なものだ。そう思わずにはいられないのがフリドリクソン監督の最新作である。「春にして君を想う」(91)では、故郷への思いから施設を脱走する老人を撮った監督。その後、自身の母親がアルツハイマーを発症してしまうのだが、本作『マンマ・ゴーゴー』は監督の実体験をもとに、アルツハイマーの母親に振り回され翻弄される家族を描いている。

ストーリーは「春にして〜」の完成披露試写の監督スピーチから始まる。「この映画を母に捧げます」という言葉で拍手喝采を浴びる監督。この時、誰が彼の身に起こる悲劇を予想できただろう。その後、母親のアルツハイマーは次第にひどくなり、奇行やわがまま、毒舌がエスカレートしていく。そんな母親に振り回され、疲弊しきった彼と家族は、なんと彼女を老人ホームに入居させてしまうのだった。誰もが「やむを得まい」と思うところだろう。あの感動的なスピーチさえ聞かなければ・・・。
フリドリクソン監督は、そんなアイロニーに満ちた自身の境遇と葛藤を、自虐交じりのユーモアで作品に投影している。一方で、母親の目線や想いというものもファンタジックな映像で綴られており、心にしみ入る温かい後味が残る。自虐と現実だけでは終わらない、もう一つの物語を見せてくれるのだ。

映画祭のサプライズとして本編後に上映された監督インタビューによると、「脚色も含まれているので全てが事実というわけではない」とのことだ。ちなみにマンマもご存命のよう。本作品は2010年に制作され、台湾、韓国、中国ではすでに配給が決まっているという。今回の映画祭でもフリドリクソン監督は、いまだなお人気が高いという印象を受けたのだが、日本では配給未定である。残念ながら98年以来、フリドリクソン作品の国内配給はないが、本作品は国際的な評価も高い「春にして〜」(91)とリンクした内容であることから、公開を望むファンも多いのではないだろうか。

オススメ度:★★★★☆
Text by鈴木こより

▼『マンマ・ゴーゴー』作品情報
英題:Mamma Gogo
監督:フリドリック・トール・フリドリクソン
出演:クリストビョルグ・キィエルド/ヒルミル・スナイル・グズナソン/グンナル・エイヨウルフソン/マルグレート・ヴィルイャルムスドッティル
制作:2010年/アイスランド他/アイスランド語/90分
受賞:2010年エッダ賞(アイスランドアカデミー賞)最優秀主演女優賞ほか

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▼トーキョー ノーザンライツ フェスティバル
2012年2月11日(土)から2月17日(金)渋谷ユーロスペースにて開催
公式サイト:トーキョーノーザンライツフェスティバル 2012

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