【LBFF_2011】「MISS BALA/銃弾」主演女優とプロデューサー舞台挨拶で黙祷:メキシコ麻薬戦争の実情を世界へ

ステファニ・シグマンさん(左)とパブロ・クルスさん

第8回ラテンビート映画祭は19日(月・祝)、新宿開催の最終日を迎えた。『MISS BALA/銃弾』の上映の前後には、プロデューサーのパブロ・クルスさんと主演女優ステファニ・シグマンさんが登壇。舞台挨拶とQ&Aが行われた。

本作は、地元のミスコンで優勝することを夢見る若い女性ラウラが、虐殺事件の目撃者となったことから犯罪組織への協力を余儀なくされていく様子を描く。メキシコの麻薬カルテル間の紛争や、それを取り締まろうとする政府との間で続いているいわゆるメキシコ麻薬戦争をテーマにした物語。舞台挨拶に立ったクルスさんは、上映に先立って麻薬戦争の被害について紹介。メキシコ政府の公式発表によると、撮影前には4万人といわれていた麻薬戦争による死者は、撮影終了時には6万人に激増していたという。
観客全員が起立してその犠牲者に黙祷を捧げた後、厳かな空気の中で上映が行われた。

シグマンさんの抜群のプロポーションにも目が釘付け

終映後に再び登場したクルスさんとシグマンさん。実在するミスコン女王がモデルになっているラウラ役を演じたシグマンさんは、『MISS BALA/銃弾』がどの程度事実をベースにしているのかという質問に対し、「ヘラルド・ナランホ監督が、ある美人コンテストの優勝者が逮捕されたという記事を目にしたことから始まりました。その記事から発想を得た映画ですが、基本的にはすべてフィクションです」と回答。そこで描かれたヒロイン像について、クルスさんも次のように説明した。
「映画をご覧になった皆さんは、『巻き込まれたラウラはなぜ逃げ出さないのか?』と疑問に思うかもしれません。逃げることは不可能なのです。軍も警察も腐っていますから。ラウラはメキシコという国の象徴のようなものなのです」
この言葉からも感じ取れるように、凄惨で胸の詰まるようなメキシコの一面を切り取った作品、『MISS BALA/銃弾』。舞台となったバハ・カリフォルニア州に住んでいたことがあるという観客からは、「なぜ、メキシコのネガティブ・キャンペーンになってしまうような映画を製作したのか?」という質問が出た。「映画人のみならず、メキシコのすべての表現者は、メキシコの現実を作品のなかで描きたいと常々思っている」と返したクルスさん。「酷い状況だが、これは我々が常日頃から目にしていることであり、こうしたことを世界の皆さんに知ってもらうことが重要だと思っている」と続けた。
ガエル・ガルシア・ベルナル、ディエゴ・ルナらメキシコの実力派俳優と映画製作会社カナナ・フィルムを立ち上げ、『闇の列車、光の旅』(09)など中南米の社会問題を取り上げた骨太の作品を世に送り出しているクルスさん。映画を通じて厳しい祖国の実情を見つめようとする真摯な姿が印象的だ。

シグマンさんにはラテンビート映画祭最優秀女優賞が、クルスさんには監督賞のトロフィーが託された


『MISS BALA/銃弾』は、T・ジョイ京都で9月25日(日)、横浜ブルク13で10月8日(土)・10日(日・祝)にも上映がある。麻薬や銃、警官の汚職といったメキシコの社会問題に切り込んだ同作。近隣の方は、この機会にぜひ!

オフィシャルサイト http://www.hispanicbeatfilmfestival.com/
オフィシャルブログ http://lbff.blog129.fc2.com/

▼作品情報▼
『MISS BALA/銃弾』
【原題】MISS BALA
【監督】ヘラルド・ナランホ
【出演】ステファニ・シグマン、イレーネ・アスエラ、ミゲル・コトゥリエル
2011年/メキシコ/113分

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