【カンヌ国際映画祭】カンヌ常連ダルデンヌ兄弟、新作では主演に人気女優を起用!「The Kid With A Bike」

(第64回カンヌ国際映画祭グランプリ受賞)

『ロゼッタ 』(99)と『ある子供』(05)で、パルムドールを2度受賞しているカンヌ常連のダルデンヌ兄弟監督。今年もコンペティションで『The Kid With A Bike(邦題:少年と自転車)』が上映され、主演の人気女優セシル・ド・フランスとともにカンヌ入りした。

セシル・ド・フランスにキスするダルデンヌ兄弟 - フォトコールにて- Le Gamin au Vélo (c)AFP

物語は12歳になる少年シリルが、自分を児童相談所に預けたまま失踪した父を探すシーンから始まる。探している最中、かつて父の隣人だった美容師のサマンサに出会うが、何かと親身になってくれる彼女にシリルは少しずつ心を開いていく。若いサマンサには恋人もいるが、シリルへの気持ちは同情から次第に母性的な愛情へと変わっていく。

ダルデンヌ兄弟が有名な女優を起用したのは本作が初めてとのこと。サマンサのキャスティングについて監督は、「心理描写を必要とせず “好意的で太陽のような輝き” を持つ女優である必要があったが、同じベルギー出身のセシル・ド・フランスを思いついた」と語る。たしかにスクリーンから伝わってくる彼女の輝きは力強く明るくて、万人を照らす太陽のような母性を感じさせる(ちなみに『ヒア アフター』でもセシル演じる女性は、親と暮らせない孤独な少年と運命的に出会い絆を深めている)。
セシルは『ヒア アフター』でクリント・イーストウッド作品への出演も果たしたが、ダルデンヌ監督との違いについて「イーストウッド監督はリハーサルを行いませんし、衣装合わせにも参加しません。ほとんど1テイクだけの撮影です。ダルデンヌ兄弟監督の場合はリハーサルを何度も重ね、衣装合わせも7回、何テイクも撮りました。イーストウッド監督はその瞬間の魅力をとらえようとし、俳優はほとんど一人で準備しますが、ダルデンヌ兄弟監督の場合は、一緒に時間をかけて作り上げていきます」と、その制作方法にはかなりの違いがあることを明かした。

本作はプレス向け上映でも大好評でコンペ前半戦においてはパルムドール最有力といわれていたが、最終的にグランプリを受賞。また同じくコンペティションで上映された『We Need To Talk About Kevin』(リーン・ラムゼイ監督)で、ティルダ・スィントンが表現した全く違うタイプの母性との比較も興味深い。(※女優賞は『メランコリア』のキルスティン・ダンストが受賞)

本作品は2012年春にBunkamuraル・シネマでの公開が決定した。

『The Kid With A Bike(少年と自転車)』
監督:ジャン・ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
出演:セシル・ド・フランス、トーマス・ドレ
制作:1時間27分/ベルギー

取材・文 鈴木こより

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