【TIFF_2013】コンペティション部門 作品一覧
10/17(木)から開催される第26回東京国際映画祭(TIFF)の上映作品が先日発表され、「コンペティション」「アジアの未来」「ワールド・フォーカス」の主要部門についてはプログラミング・ディレクターによる作品紹介が行われた。
「コンペティション」部門では映画の多様性を提示するべく、さまざまな国や地域、幅広いジャンルから作品選定され、世界の秋の新作がプレミア上映される。矢田部吉彦プログラミング・ディレクターは、今年のコンペティションの傾向について<闘う映画、抵抗する映画>がキーワードだと語る。国の体制、古い世代からの常識に闘いを挑む人々の物語、また保守的になりがちな映画界の風潮の中でもチャレンジ精神を失わずに戦う監督たちの作品が多いという。
以下、プログラミング・ディレクターのコメントを引用して、全作品を紹介したい。(「コンペティション」「ワールド・フォーカス」の欧米作品は矢田部吉彦氏、「アジアの未来」「ワールド・フォーカス」のアジア作品は石坂健治氏が紹介を担当)
■「コンペティション」部門 15作品
審査委員長:チェン・カイコー(映画監督)
審査委員:ムン・ソリ(女優)、クリス・ブラウン(プロデューサー)、クリス・ワイツ(映画監督/脚本家/プロデューサー)、寺島しのぶ(女優)
『ほとりの朔子』(日本=アメリカ)
監督:深田晃司
出演:二階堂ふみ、鶴田真由、太賀
二階堂ふみを主演に迎え、日本でヨーロッパー映画を作るという大胆な試みが成功した作品。『歓待』の深田晃司監督の新作。
矢田部PDコメント「日本でフランス映画を撮るとこうなる、という非常に特異な作品。二階堂ふみの演技が素晴らしい。ひと夏の少女の成長物語」。
※ 関連記事:深田晃司作品レビュー(「歓待」何でもない家族に起こる事、誰にでも起こるかも)
『ある理髪師の物語』(フィリピン)
監督:ジュン・ロブレス・ラナ
出演:ユージン・ドミンゴ、エディ・ガルシア、アイザ・カルサド
マルコス政権独裁下で、夫に先立たれた妻が理髪店を引き継ぐ。抵抗活動に巻き込まれながらも、芯の強さと優しさで運命と戦う様子を描く感動ドラマ。
矢田部PDコメント「フィリピンを代表する監督と主演女優のコンビ作。男性社会で抑圧された女性たちが社会に闘いを挑む、見応えのある作品」。
『ルールを曲げろ』(イラン)
監督:ベフナム・ベフザディ
出演:アミル・ジャファリ、アシュカン・ハティビ、バハラン・バニ・アハマディ
海外公演が決まったのに女優たちが渡航できず…。従来の価値観に抵抗する若者の姿を巧みに描く。イラン映画界に新世代監督の台頭を感じさせる作品。
矢田部PDコメント「芸術家が苦難を強いられているイランの状況に対する批判も根底に読み取れる。監督初作品ながら演出が巧みな青春映画」。
『ブラインド・デート』(グルジア)
監督:レヴァン・コグアシュビリ
出演:アンドロ・サクヴァレリゼ、イア・スヒタシュビリ、アルチル・キコゼ
グルジア男、波乱の婚活物語。テンポとセンスの良さが際立つコメディ。
矢田部PDコメント「グルジア映画が今、キテるんじゃないかと思う。アート映画特有の構図や映像が目を引くけど、テンポも良いコメディ」。
『捨てがたき人々』(日本)
監督:榊英雄
出演:大森南朋、三輪ひとみ、美保純
ジョージ秋山の原作、大森南朋主演。人間の欲望と因果応報を正面から描いた骨太なドラマ。榊英雄監督の地元・長崎でオール・ロケーション撮影。
矢田部PDコメント「セックス、運命、神、死というものに正面から向き合った作品。監督の気合いや情熱が伝わってくる一本」。
『ザ・ダブル/分身』(イギリス)
監督:リチャード・アヨエイド
出演:ジェシー・アイゼンバーグ、ミワ・ワシコウスカ、ウォーレス・ショーン
全く同じ容貌の男が次第に自分の人生を奪っていく。ジェシー・アイゼンバーグ主演の新感覚スリラー。
矢田部PDコメント「監督はイギリスではコメディアンとしても知られている。原作はドストエフスキー。近未来を舞台にした不条理な新感覚サスペンス」。
『ドリンキング・バディーズ』(アメリカ)
監督:ジョー・スワンバーグ
出演:オリヴィア・ワイルド、ジェイク・ジョンソン、アナ・ケンドリック
飲み友以上、恋人未満の4人の男女が旅行に行って微妙な展開に…。現実味溢れるラブ・コメディ。
矢田部PDコメント「リハーサルを重ねて、その場でセリフや掛け合いを築き上げていくという演出スタイルが功を奏している。演技がとても自然体で繊細な人間観察があり、役者陣も充実。この作品を嫌いな人とは友達になりたくない(笑)観た瞬間にビールが飲みたくなる映画」。
『エンプティ・アワーズ』(メキシコ=フランス=スペイン)
監督:アーロン・フェルナンデス
出演:クリスティアン・フェルレル、アドゥリアナ・パス
海辺のホテルを舞台に、年上の女性と少年の淡い交流をゆっくりとしたテンポで温かく描いたヒューマン・ドラマ。
矢田部PDコメント「メキシコ映画は今、世界の映画祭で注目されている。新人監督だけど、アートセンスに注目してほしい」。
『ラヴ・イズ・パーフェクト・クライム』(フランス=スイス)
監督:アルノー・ラリユー、ジャン=マリー・ラリユー
出演:マチュー・アマルリック、カリン・ヴィアール、メイウェン
マチュー・アマルリック扮する大学教授が女子大生失踪事件に巻き込まれていく、ロマンティック・スリラー。
矢田部PDコメント「とても奇妙なスタイルを持っているラリユー監督兄弟による、ロマンティック、エロティック、サスペンス」。
※関連記事:マチューが『運命のつくりかた』でタッグを組んだラリユー監督作品についてコメント。(マチュー・アマルリック、トークイベントで「映画にはリスクを!」と語る)
『馬々と人間たち』(アイスランド)
監督:ベネディクト・エルリングソン
出演:イングヴァル・E・シグルズソン、シャーロッテ・ボーヴィング、ステイン・アルマン・マグノソン
アイスランドを舞台に、馬と人間の欲望と死を描いた奇想天外なブラックコメディ。
矢田部PDコメント「今年の発見は何かと言えば、おそらくこの作品になると思う。人間と馬の関係を奇想天外なエピソードで繋いでいる。スタイルも映像も観たことないような内容で、とっても不思議な世界。ブラックユーモア溢れる作品」。
『レッド・ファミリー』(韓国)
監督:イ・ジュヒョン
出演:キム・ユミ、ソン・ビョンホ、チョン・ウ
南北朝鮮問題を家族の問題に落としこみ、絶妙にユーモアを交えて描く。キム・ギドク脚本・製作の号泣必至な感動ドラマ。
矢田部PDコメント「キム・ギドクが脚本・製作ということでも注目すべき作品。北のスパイで構成されている疑似家族が葛藤に苦しむ」。
『歌う女たち』(トルコ=ドイツ=フランス)
監督:レハ・エルデム
出演:ビンヌル・カヤ、フィリップ・アルディッティ、
ケヴォルク・マリクヤン
欲望に満ちた世界の中で、世界を救うかのごとく歌を歌う女性たちをトルコの鬼才監督が描く独創的な作品。
矢田部PDコメント「映像の迫力でみせていく作品。トルコの鬼才監督レハ・エルデムの新作。死と救済がテーマにあるのか、神としての女性を描く。不思議な世界にどっぷりと浸かっていただきたい」。
※関連記事:レハ・エルデム作品レビュー(「マイ・オンリー・サンシャイン」孤独な少女の心の世界)
『ハッピー・イヤーズ』(イタリア=フランス)
監督:ダニエレ・ルケッティ
出演:ミカエラ・ラマツォッティ、キム・ロッシ・スチュワート、マルティーナ・ジェデック
前衛美術家の父親に振り回される家族の姿をユーモラスに感動的に描く。名匠ダニエレ・ルケッティ監督の自伝的作品。
矢田部PDコメント「「我らの生活」の監督。時代と家族を描くのが得意な監督。70年代の空気の再現、フェミニズム、フリーセックス、車など美術の再現も見どころ。ルケッティ監督の集大成的な内容ではないか」。
※関連記事:ダニエレ・ルケッティ作品レビュー(「我らの生活」イタリアの美しい人情噺に潜む、僅かな違和感)
『オルドス警察日記』(中国)
監督:ニン・イン
出演:ワン・ジンチュン、チェン・ウェイハン、スン・リャン
一人の警察官の死を辿るとそこには驚きの実像が! 「北京好日」(TIFF93受賞作)監督ニン・インによる骨太な作品。
矢田部PDコメント「一人の警察官のキャリアを追うことで、急成長期の中国の現代史が垣間見えてくるという構成。実際に起きた事件を映画化」。
『ウィ・アー・ザ・ベスト!』(スウェーデン)
監督:ルーカス・ムーディソン
出演:ミーラ・バルクハンマル、ミーラ・グロシーン
リーヴ・ルモイン
80年代初頭、パンクバンドを組んで弾ける青春を送る女子中学生を瑞々しく描いた青春映画。
矢田部PDコメント「『ショー・ミー・ラヴ』の監督の新作。監督の妻の自伝漫画を映画化したもので、家族や学校に対するうっ憤をパンクという音楽にぶつけていく少女たちを描く。弾けるような瑞々しさをリアルに描いていて、痛快でスカッとする作品」。
※関連記事:ルーカス・ムーディソン作品レビュー(「ショー・ミー・ラヴ」私たちの居場所はここにはない!)(「マンモス 世界最大のSNSを創った男」世界の繋がりと家族のかたち)
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第26回東京国際映画祭
期間:2013年10月17日(木)〜10月25日(金)9日間
場所:六本木ヒルズ(港区)をメイン会場に、都内の各劇場及び施設・ホールを使用
公式サイト:http://tiff.yahoo.co.jp/2013/jp/tiff/outline.php