イスラーム映画祭5 直前ガイド~映画を楽しみながら、世界を知るために~

3月14日(土)~渋谷ユーロスペースほか順次全国3都市にて

 3月14日(土)から渋谷ユーロスペースを皮切りに、全国3都市にて『イスラーム映画祭』が開催される。主催者の藤本高之さんがたった一人でこの映画祭を立ち上げたのが2015年。それ以来氏の変わらぬイスラーム文化と映画への情熱によって継続し、今年でこの映画祭も5回目を迎える。イスラームの国々では、シリアの内戦、イエメン内戦も混迷を深め、現在も解決への道が見えないでいる。また昨年は、アメリカがイランのソレイマニ将軍を殺害したことから、両国が戦争の瀬戸際まで追い込まれる事態となったことも記憶に新しい。「映画を楽しみながら、世界を知るためにー」イスラームの多様な文化を、映画を通じて発信したいと願って始まった映画祭だったが、それと同時にイスラーム文化圏で起こっている問題や戦争について、現地の目から伝えるという社会的使命をも帯びたことは、この映画祭が始まった5年前、その直前にパリ同時多発テロがあり映画祭が注目を集めた時から始まっていたのかもしれない。今年もまた、それぞれの作品には多彩な識者の方々によるトーク・セッションも予定されており、映画とトークを通じてイスラーム世界への理解が深められることに相違ない。

『ゲスト:アレッポ・トゥ・イスタンブール』

 今年もそうした意味でも重要な作品がラインナップされている。出口の見えない10年目の「シリア危機」を、爆撃で家族を失った8歳のリナ(実際に難民の少女が主人公を演じている)の視点で描いた『ゲスト:アレッポ・トゥ・イスタンブール』(監督:アンダチュ・ハズネダルオール/2017年・トルコ=ヨルダン)。イスラエルによる封鎖が続くガザの人々の現実を、サーフィンを通じて描いたドキュメンタリー『ガザ・サーフ・クラブ』(監督:フィリップ・グナート、ミッキー・ヤーミン/2016年・ドイツ)。1975年にスペインからの独立過程でモロッコに侵攻され、領土の大半を占領され続けているアフリカ北西の「西サハラ」を写したドキュメンタリー『銃か、落書きか』(監督:ジョルディ・オリオラ・フォルク/2016年・スペイン)である。

『アル・リサーラ/ザ・メッセージ』

 歴史的な視点からイスラーム世界を描いた作品では、何と言っても注目は『アル・リサーラ/ザ・メッセージ アラブ・バージョン』<デジタルリマスター>(監督:ムスタファ・アッカド/1976年-2018年・リビア=モロッコ=エジプト=サウジアラビア)であろう。預言者ムハンマドを祖とする“イスラームの起源”を描いた207分のこの大作映画は、77年に『ザ・メッセージ 砂漠の旋風』の題で公開されたアメリカ映画の、キャストがまったく異なる“幻のアラブ版”で、これが日本初上映となる。アメリカ版ではアンソニー・クイン、イレーネ・パパスが出演していたが、これはそれと同時に撮影されており、アメリカ版がインターナショナル向けだったのに対し、こちらはエジプトを始めとするイスラーム圏向けに作られた作品である。音楽はどちらも『アラビアのロレンス』のモーリス・ジャールが担当している。

『ベイルート‐ブエノス・アイレス‐ベイルート』

 他にも、アラブ世界の転換点である第三次中東戦争の直前のチュニジアの海辺の町ラグレットを舞台にした作品(クラウディア・カルディナーレが本人役で出演)、『ラグレットの夏』(監督:フェリッド・ブーゲディール/1996年・チュニジア=フランス=ベルギー)。ブエノス・アイレスに暮らすレバノン移民の末裔の女性が、曾祖父の人生を追ってレバノンを旅する姿を描いたドキュメンタリー『ベイルート-ブエノス・アイレス-ベイルート』(監督:グレイス・スピネリ、エルナン・ベロン/2012年・アルゼンチン)と、注目作品が並んでいる。

『イクロ2 わたしの宇宙(そら)』

 もちろん今年も、イスラームの文化がテーマとなった作品にも見逃せない作品が揃っている。第3回イスラーム映画祭で好評を博した『イクロ クルアーンと星空』(17年)の続編『イクロ2 わたしの宇宙(そら)』(監督:イクバル・アルファジリ/2019年・インドネシア)である。この“イスラームと科学”をテーマにした作品は、昨年上映予定だったものの完成が間に合わずお預けとなっていたものだ。また『ハラール・ラブ(アンド・セックス)』(監督:アサド・フラドカール/2015年・レバノン=ドイツ)は、度々本映画祭でもテーマとなっている、ムスリム社会の婚姻規範、その愛と夫婦間の苦悩をユーモアを交じえて描いた作品である。

『私たちはどこに行くの?』

 さらに今年は5回目の開催を記念して、過去に上映した計50本の作品のすべての解説と識者の方々のコラム15本を載せた公式ムック「イスラーム映画祭アーカイブ2015-2020」が劇場限定販売されるほか、過去上映された作品から好評を博した以下の5作品がアンコール上映される。見逃していた方はこの機会に是非ご覧ください。
『神に誓って』(イスラーム映画祭2015)
⇒レビュー
『私たちはどこに行くの?』(イスラーム映画祭2)⇒レビュー
『アブ、アダムの息子』(イスラーム映画祭3)
⇒サリーム・アフマド監督トークセッション
『わたしはヌジューム、10歳で離婚した』(イスラーム映画祭4)⇒レビュー
『花嫁と角砂糖』(イスラーム映画祭3)

【開催概要】

【東 京】
会期 : 2020年3月14日(土)~3月20日(金・春分の日)
会場 : 渋谷ユーロスペース( http://www.eurospace.co.jp/
【名古屋】
会期 : 2020年4月25日~5月1日(土)
会場 : 名古屋シネマテーク( http://cineaste.jp/
【神 戸】
会期 : 2020年5月2日(土)~5月8日(金)
会場 : 神戸・元町映画館( http://www.motoei.com/
主催 : イスラーム映画祭
公式サイト:http://islamicff.com/
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