【TNLF】トーキョーノーザンライツフェスティバル開催記念特別座談会2

『北欧映画の生まれるトコロ』PART2

第2部 特別座談会「北欧映画の生まれるトコロ」

座談会1

左からイェンセンさん、エイナソンさん、ニスカネンさん、森さん、ベルグさん、まつかわゆまさん


ゲスト
イェンス・イェンセンさん
(デンマーク出身)
アリニ・パル・エイナソンさん
(アイスランド出身)
エイヤ・ニスカネンさん
(フィンランド出身)
森ステファンさん
(スウェーデン出身)
ミカール・ルイス・ベルグさん
(ノルウェー出身)


司会者のまつかわゆまさんからテーマが出され、順番に意見が出される。みなさんとても日本語がお上手。実は、ゲストの人たちにとっても、北欧五カ国の人たちが一同に会して話をするというのは初めての体験。それだけに興味深い話が色々と飛び出した。除々に雰囲気も打ち解けていき、笑いの絶えない楽しい座談会となった。
―世界幸福地図では北欧の国々は常に上位にきているのですが、あなたの国の幸福度が高いという実感はありますか
座談会2
フィンランドのエイヤ・ニスカネンさんは「フィンランドが6位、びっくりしています。私たちはそんなに幸せではないですね。寒さの中で住んでいる。雪の中から車を掘り出さなきゃならない。そのような生活をしていると、へんなヒューモアを作って過ごすしかないのですね。」と語ったが、他の方たちは、自分たちの国を暮らしやすいと認識していた。
何をおいても心配ごとがない。社会保障がしっかりしているからだ。学校は無料、貧乏な人でも頭さえ良ければ、良い大学に行ける。年金もお金を払ってさえいれば、確実に将来貰える保証がある。スウェーデンの森ステファンさんは「日本は生活に対する心配事が多いです。子供の学校はどうしようとか、老後はどうなるのかとか、病気になったらどうしようかとか、スウェーデンではそのようなことは頭に入れてなかったですね。」と言う。
また、ライフスタイルにも余裕が感じられる。「仕事の時間と自分の時間がくっきりと分けられています。1日8時間勤務なのですが、フレックスタイムになっているし、ある日に残業をしたら翌日は早く帰るということもできます。お父さんでも育児休暇を取りやすくなっています」とは、デンマークのイェンス・イェンセンさんだが、他の人たちも概ね同様で、そんな時間を使い、自然でリラックスすることを大切にしているようだ。しかしながら、こういう感想を持ったのも、日本に来て初めて実感したという人がほとんど。確かに、これらのことは、世界幸福地図90位の日本には足りないことばかりなのである。
―現在ある問題についてそれぞれの国ではいかがですか、移民の問題とか…
座談会3
北欧では移民問題は、他のヨーロッパ諸国に較べると、深刻度は低いようである。かといって移民が少ないのかというと、フィンランドでは「ヘルシンキの小学校の2割くらいは移民の子供たちです」ということだし、スウェーデンでは小学校のクラスの半分は、移民の子供たちで占められていたという。ただそのための対策を子供時代からしっかりやっているということが見て取れる。
スウェーデンの森ステファンさんによれば「学校の中でのいじめの問題というのは、いつもそういうテーマに沿った映画を見せられるのですね。いじめはいけないですよとか。それで教室に戻ってディスカッションをするのです。考えさせられる映画を小さいときからたくさん観ていた覚えがあります。学校では教育のツールとして映画をよく使っているのですね。こういう映画を学校で使いたいというと助成金が出たり、ただで貸し出してくれたりするシステムになっているのです」ということだ。
ただ、やはり移民の問題は微妙なところがあるようで、イェンス・イェンセンさんは、「デンマークでも国に戻っての心配ごとがあります。移民問題とか結構あるので、ビザが厳しくなっているのです。僕は日本人の妻と結婚しているのですが、それでもビザは簡単には貰えないのですね」とみずからの心配事を語る。
他の社会問題としては、世界的な経済不況が北欧諸国をも襲っているということだろう。イェンス・イェンセンさんによると、「デンマークでは経済不況で、国の予算が足りなくなっている。それでリタイアの年齢を繰り上げている。65歳だったのを74歳にしたりだとか、例えば体力仕事をした人とかは、今までは50歳まででリタイアできたのが、その制度はやめて今は65歳まで働かなくてはならなくなったとかそういうところが今話題になっています」ということだ。
―自国以外の4カ国についてどんな意識を持っていますか
北欧というと、私たち日本人から見ると、とかくひと括りにしてしまいがちなのだが、各々の国がさまざまな顔を持っており、各人色々な思いを持っていることがとても興味深い。

デンマーク/イェンス・イェンセンさん
「ノルウェーは石油があるからとてもお金持ちの国というイメージがあります。キュウリを買うと非常に高い。スウェーデンはあんまりユーモアが無い国、あまりお酒を飲まない。フィンランドは寒い、暗い。包丁を持ってウォッカを飲んでいるというイメージがあります。アイスランドはちょっと離れている国かなと思います」
アイスランド/アリニ・パル・エイナソンさん
「デンマークは食べ物がおいしい。フィンランドはノキアとサウナ、スウェーデンは、一番大きな国、我々はいつもスポーツで負けている、ノルウェーはフレンドリーなお金持ちの国というイメージがあります」
フィンランド/エイヤ・ニスカネンさん
「デンマーク人は楽しいビールを飲んでいる人なのです。アイスランド人は本当のバイキングです。スウェーデン人はちょっと日本人に似ている。真面目な人。フィンランド人はスウェーデン人にちょっと愛情があります。アイスホッケーいっしょにがんばろうとか。ノルウェーは石油のあるお金持ち、EUに入る必要のない人。フィンランド人とノルウェー人は少し似ているという気持ちもあります」
スウェーデン/森ステファンさん
「アイスランド人は日本に来て初めてお会いしました。いい印象ばかりです。フィンランドは産業的にはスウェーデンと良く似ているのですね。木材の文化だし、私の最初の彼女はフィンランド人でした。彼女のお母さんに作ってもらったシチューのおいしかったこと。ノルウェーはフィヨルドです。お金持ちの国で、親父とかはノルウェーに車で行くと、見るもの見て早くスウェーデンに帰ろうっていうのですよ。石油が取れるのにガソリンも高いし。ただノルウェーは民族的には一番近いと思うのですよね。デンマークはどちらかというとドイツの文化も入っている。ノルウェーは同じ国というくらいの意識があります」
座談会4
ノルウェー/ミカール・ルイス・ベルグさん
―『キッチン・ストーリー』という映画でノルウェー人とスウェーデン人の間の葛藤が描かれていますが、あれは本当ですかという、まつかわゆまさんの質問に対して―
「本当です。でも本当はとても仲が良いのですよ。仲が良いから正直になりましょう。ノルウェーはお兄ちゃんスウェーデンは可愛い弟、そういう感覚です。ノルウェーは本当に物価が高いです。デンマーク人はガタイのいいおじさん、いつもお酒を飲んでニコニコしていて、見るだけで元気になるくらい。スウェーデンは女性が非常に綺麗だと思います。フィンランドはムーミンがあるのにどうしてサンタクロースを自分のものにしようとしているのでしょうか。本当のサンタはノルウェーがオリジナルです。アイスランドは、経済的にアンラッキーなことがありましたが、ぜひノルウェーの強いお金をアイスランドで使いたいと思います。あと、アイスランドは世界一の温泉があるということで興味満々です。もしかしたらアイスランド人はいいイメージばかりなので、もしかしたらその昔、バイキングの時代にアイスランドに行って戻れなくなったノルウェー人かと思うくらいアイスランド人はいいです」
【会場からのQ&A】
―各国の映画事情についてお聞きします。映画館が閉館されるなど、何か映画のことで問題になっていることとかありますか
各国とも、小さい規模の映画館は閉じられ、シネコンに集約されていくといった事情はいっしょのようである。特に北欧の場合は、家に広いスペースがあり、大きな画面でホーム・シアターを楽しめるといった環境の要因も手伝って、日本よりもさらにその傾向が強くなっているようだ。エイヤ・ニスカネンさんによれば、フィンランドでは「ヘルシンキの映画館の9割が同じ配給会社の映画館なのですね。モノポリー状態です。したがってインディーズ映画が配給されないというのが問題になっています」とのこと。ただ、その一方で「それが悪いことばかりではなく、逆に家庭にシアターができることによって、映画ファン自体のすそ野が広がった」(森ステファンさん)というのもひとつの見かたなのかもしれない。
―日本のサブカルルチャーや映画はどのように受け入れられていますか
残念ながら日本映画は、北欧ではほとんど観られることがないようである。その代わり日本のアニメーション、コミックは北欧の若者の文化までをも席捲しているようだ。
「フィンランドではコスプレまでする若者もいます。宮崎駿の映画は映画館でヒットしました。90年代までは北野武の映画は入っていましたが、映画館での配給はちょっとないです。ヘルシンキ映画祭では、三池崇監督作品が上映され、Jホラーが人気を呼びました。また、松本人志の『しんぼる』が観客に受けました。」(エイヤ・ニスカネンさん
「昔は、忍者映画が人気でした。子供のときにはショー・コスギの映画が大好きだったのです。黒澤明は一応全作品観ています。今は日本の文化といえばゲームですね。スウェーデンのいとこの子供たちによく何を送ってくれとせがまれています」(森ステファンさん)
「少年ジャンプのような漫画がノルウェー語で出されていました。そういったものを通じて日本語を勉強したいという若い人も増えてきたことは、ぼくにとってはとてもいいことだと思います」(ミカール・ルイス・ベルグさん
…アニメーションが日本への興味に繋がる。日本にとっては、それもひとつの財産であると言えよう。
1時間半の予定が、2時間近くまで延長して行われた講演と座談会。それでもまだまだ話が聴きたくなってしまうほど、興味深く、楽しい時間であった。もちろん、その全部をここでお伝えすることはできないのだが、このレポートが、2月12日からスタートする「トーキョー・ノーザン・ライツ・フェスティバル」のご参考に少しでもなれば幸いです。
取材:藤澤貞彦
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