【LBFF】ラテン美男子が次々登場!

『EVA<エヴァ>』キケ・マイジョ監督と『Estudiante エストゥディアンテ』サンチアゴ・ミトレ監督Q&A

『Estudiante エストゥディアンテ』

東京・新宿バルト9で好評開催中の第9回ラテンビート映画祭(LBFF)で、9月30日(日)、『EVA<エヴァ>』のキケ・マイジョ監督と『Estudiante エストゥディアンテ』のサンチアゴ・ミトレ監督が上映後にそれぞれQ&Aに登壇した。

マイジョ監督もミトレ監督も何とまあ、カッコイイ。私事で大変恐縮なのだが、大学時代に第2外国語ではスペイン語を選択したこともあり(?)、とにかくラテン系男子に弱い筆者。両監督とも筆者の期待に応えるイケメンで、それぞれのQ&Aはまさに目の保養状態だった。

★★★★★★★

キケ・マイジョ監督(左)とアルベルト・カレロ・ルゴ氏。監督の手にはダニエル・ブリュールの代役として受け取ったLBFF主演男優賞のトロフィーが。

まず、マイジョ監督にとって、この『EVA<エヴァ>』が長編初監督作品。この作品で今年のゴヤ賞(スペイン・アカデミー賞)で見事に新人監督賞を受賞した注目株。その他、名優ルイス・オマールも助演男優賞を獲得した等の話題作だ。
「私にとって初めての長編映画ですが、情熱を持って仕上げた作品です。感情を持つ、完璧なロボットをつくろうとする人々の物語ですが、ロボットを通して愛について考えてみたいと思い、つくった映画です」とマイジョ監督。

本作は近未来を舞台に、ロボット科学者のアレックス(ダニエル・ブリュール)と兄ダビッド(アルベルト・アンマン)、兄の妻ラナの三角関係が展開する。アレックスはダビット夫妻の娘エヴァ(クラウディア・ヴェガ)の物怖じしない態度や感情豊かな様子に興味を持つが、エヴァには、彼女自身も知らない驚愕の秘密があった・・・。
「人間同士の関係は難しくて、決して気持ちのいいものとは限らない。永久に続くものだと思っていたような感情や関係も、失われることもあります。それはもちろん、愛でも。永遠に失うことがなければいいのに・・・と思ったことが本作をつくったきっかけです」と監督。実は20年ほど飼っていた猫が死んでしまったことからそう感じたのだという。「愛は人間同士だけに限らず、ペットに対する気持ちもそうですよね」。

本作のキーパーソン、エヴァ役のクラウディア・ヴェガがダニエル・ブリュールと対等に渡り合う演技を見せ、魅了された。マイジョ監督は彼女の起用について、
「エヴァは感情が豊かな少女という設定です。そういう子役を選ぶのは大変で、3000人くらいの少女と会って検討した結果、クラウディアが相応しいと考えました」と明かす。

そして、LBFFのプログラミングディレクターのアルベルト・カレロ・ルゴさんよりダニエル・ブリュールのLBFF主演男優賞受賞が発表され、ダニエルの代わりに、マイジョ監督がトロフィーを受け取った。
「撮影の準備をしていたときに、ダニエルが“この映画を70年代風の雰囲気にするつもりなのか?”と尋ねてきました。ダニエルはスペイン人だけど、ドイツ的なこだわりを持った人で、近未来なのにレトロな車が登場することなどが気になっていたようです。でも私は日本でなら絶対にウケる!と思っていました。この賞がそれを証明してくれたんだよね!」と嬉しそうだった。


サンチアゴ・ミトレ監督

『Estudianteエストゥディアンテ』のサンチアゴ・ミトレ監督はアルゼンチン出身。『カランチョ』(LBFF2010上映)や『檻の中』(LBFF2009上映)などのパブロ・トラベロ監督作品の脚本家としても知られている。ブエノスアイレス大学に入学した青年ロケ(エステバン・ラモチェ)は物足りない生活を送っていたが、あるとき美しい女性教員への下心がきっかけで政治活動に目覚め、そこで政治の腐敗や混沌に直面する社会派ドラマという、往年の名作『いちご白書』を連想させるような物語だ。

ミトレ監督は8年ほど前から映画の構想を抱えていたが、「大学組織は外部の人間には見えない複雑さがあって、そこに興味を持ちました。ロケのような学生運動や政治運動などの体験はないけれど、(本作で描かれるような)大学の混乱や陰謀は身近なものでした」と言う。
「アルゼンチンは政治的な緊張が強い国なんです。皆さんはアルゼンチンといえば、マラドーナに象徴されるようなサッカーとかタンゴなどのイメージがあるでしょうが、アルゼンチン人が最も熱くなるのは、実は政治なんですよ。マラドーナよりもペロン大統領とかチェ・ゲバラのほうが人気があるんです」とアルゼンチン気質の意外な(?)一面を語った。

また、出演者について
「主役ロケ役のエステバン・ラモチェは子役出身で、主演は初めてでした。エステバンの立ち居振る舞いがロケのキャラクター作りに参考になりました。エステバンに合わせて、他の俳優の配役を決めました。彼らはアルゼンチン国内で特に有名な俳優というわけではないですけどね」との弁だが、俳優陣の堅実な演技が光った作品だったと思う。
「本作の予算は3万ドルほどの低予算で、資金繰りが難しかった」とミトレ監督は苦労を語る。でも、「撮影中は楽しく過ごせました」とも製作中の充実ぶりを振り返った。

本作は正直なところ、アルゼンチンの学校の制度や政治のしくみを知らないと、理解しづらい点もある。その点はミトレ監督も承知していたようで、
「ブエノスアイレス大学の隠語を取り入れたセリフなどもあるのですが、アルゼンチンの人でもこういう点は分かりづらかったようです」。
確かに、固有の政党名やグループ名、各々の派の政治思想等、難解な点はあったが、政治的な駆け引きや交渉の面白さや緊迫感は伝わってきて、見応えのある作品だった。ちなみに、本作の舞台となったブエノスアイレス大学は、特に政治に利用されやすいため、アルゼンチン社会の政治の裏舞台を象徴する存在という監督からのガイドもあった。

ミトレ監督とアルベルト氏

観客よりラストシーン、ロケの決断の意味を問う質問があったが、
「私が直接答えるのは差し控えたい。これは観客の皆さんが考えてほしいことだから」と監督が答えを押しつけるのではなく、観客の判断に委ねたいとの意見を示した。

アルベルトさんより本作に優秀シナリオ賞が授与されることが発表されたのを受けて、ミトレ監督は「日本に招待してくれて、ありがとうございました。映画祭がなければアルゼンチン国外に出ることができない映画人もいますし、こういう映画祭が日本で開かれたことも嬉しく思います」と笑顔と感謝の弁で締めくくった。

★★★★★★★

第9回ラテンビート映画祭は現在開催中。今後、横浜、大阪、京都、博多でも開催される。詳細な情報は公式HP(click!)でご確認を。『EVA<エヴァ>』『Estudianteエストゥディアンテ』ともに上映機会があるので、お見逃しなく。
また、『EVA<エヴァ>』は10月27日(土)より「“シッチェス映画祭”ファンタスティック・セレクション」(公式サイト)での上映も決まっているので、こちらにも注目いただきたいところ。
なお、マイジョ監督のインタビューは近日中に本サイトに掲載予定なので、どうぞお楽しみに。

▼「第9回ラテンビート映画祭」開催概要▼
東京:9月27日(木)~10月5日(金) 新宿バルト9
横浜:10月4日(木)~10月10日(水) 横浜ブルク13
梅田:10月18日(木)~10月21日(日) 梅田ブルク7
京都:10月18日(木)~10月21日(日) T・ジョイ京都
博多:10月18日(木)~10月21日(日) T・ジョイ博多

公式ブログ:http://lbff.blog129.fc2.com/
公式Facebook:http://www.facebook.com/LatinBeatFilmFestival
公式Twitter アカウント:@LBFF_2012

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