【YFFF_2012】「サッカー」と「映画」の化学反応や、いかに!?:ヨコハマ・フットボール映画祭、今年も開催決定
昨年2月に、サッカー映画を集めた映画フェスティバルとして始まった「ヨコハマ・フットボール映画祭」(YFFF)。この国内初の試みは、前売り券が全作品完売になるなど、好評を博した。そんなYFFFが今年も神奈川県横浜市での開催が決定。昨年の上映作品は4作品だったが、今年は7作品を一挙に上映。しかも映画祭の期間を3日間(2月19日(日)、25日(土)、26日(日))に拡大、さらにサッカーショートフィルムの祭典も同時開催するなど、スケールアップして帰ってくる!
今回の上映作品として発表されたのが、今年 20 回目の開催を迎える J リーグを記念して、あの懐かしの『Jリーグを100 倍楽しく見る方法!!』や北朝鮮代表・鄭大世(チョン・テセ)選手のドキュメンタリー映画『TESE』、YFFFでの上映がジャパン・プレミアとなる『モンテビデオ-夢のワールドカップ-』、国内劇場未公開作品『二人のエスコバル』、『テヘラン、25 時』など、YFFFだけでしか観られない作品が目白押しだ。そして、観客リクエストによる『オフサイド・ガールズ』(ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞作)もあわせて上映することとなった。上映作品の詳細については、下記を参照いただければ幸いだ。
【上映作品】
『TESE』
監督:姜成明
日本/ドキュメンタリー/85 分/2011
出演:鄭大世(チョン・テセ)
舞台:ワールドカップ・南アフリカ大会、Jリーグ、独ブンデスリーガ
「韓国、北朝鮮、日本。故郷はいっぱいあるけど自分にはホームがない・・・」多くのファンが代表にと願った大型FWが選んだのは日本でも韓国でもなく北朝鮮だった。複雑な運命を背負いゴールを目指すテセを3年半にわたって密着したドキュメンタリー。貴重な北朝鮮代表チームの密着映像も必見。
©2011「TESE」製作委員会
★作品レビュー:サッカー北朝鮮代表チョン・テセ選手のドキュメンタリー映画「TESE」人間にとって“国”とは何だろう
『Jリーグを100倍楽しく見る方法!!』
監督:磯村一路
日本/アニメ&ドキュメンタリー/102 分/1994
出演:ラモス瑠偉、中山雅史、井原正巳、森敦彦、ラモン・ディアス、リトバルスキー
舞台:J リーグ
リーグ草創期のスターがスクリーンで大暴れ!見ないとイエローカードなのだ!!日本社会に空前のブームを巻き起こした“J リーグ”。その魅力をアニメと実写のH&A方式で完全映画化!当時の熱気を伝える貴重な作品を今年リーグ開催20回目を迎えるJリーグを記念して特別上映。
© 1994TBS
『二人のエスコバル』
監督:ジェフ・ジンバリスト&マイケル・ジンバリスト
米国/ドキュメンタリー/103 分/2010
出演:アンドレス・エスコバル、バルデラマ、イギータ
舞台:ワールドカップ・アメリカ大会、コロンビアリーグ
1994年のW杯アメリカ大会でオウンゴールをしたコロンビア代表チームのディフェンダーが何者かに暗殺された。サッカー界最大の悲劇、エスコバル射殺事件。この悲劇の陰には麻薬王であるもうひとりの「エスコバル」の姿が。南米のサッカーと暗黒の闇社会の関係を告発するドキュメンタリー。
(補足)なお、麻薬王パブロ・エスコバルについてのドキュメンタリー映画『わが父の大罪-麻薬王パブロ・エスコバル-』は、一昨年のラテンビート映画祭で上映されている。
★参考記事: 【LBFF_2010】『わが父の大罪-麻薬王パブロ・エスコバル-』憎悪の連鎖を断ち切れない世界に、最も必要な思いがここにある!
©2010 ESPN
『ぼくらのサッカーチーム』
監督:ラム・レ・ジュン
ベトナム/ドラマ/89 分/2004
舞台:少年サッカー大会
大人たちの思惑に振り回されながらも、少年サッカー大会を通じて子供たちの成長や友情を描いたコメディ。今シーズンよりJリーグの放映が始まるベトナムでは「2番がないナンバーワンスポーツ」と呼ばれるほどサッカー人気が高い国であることもよくわかる作品。
『オフサイド・ガールズ』
監督:ジャファル・パナヒ
イラン/コメディ/92 分/2006/35mm
舞台:イラン・アザディスタジアム ドイツワールドカップアジア予選
この試合だけは見逃せない!女人禁制のスタジアムへ突破を図る彼女たちの運命は?女性は男子の試合をスタジアム観戦するべからず。そんな法律があるイランで、ワールドカップ予選の大一番が行われる!警察のディフェンス網を突破するために彼女たちが考えた策とは?イランのジャファル・パナヒ監督がベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞した名作。
(補足)本作のパナヒ監督は、反アフマディネジャド体制派として一昨年3月に逮捕され、懲役6年、映画製作禁止20年の刑が確定し自宅軟禁中の身となっている(一部で保釈されたとの報道もあり)。そんな彼が秘かに製作した『これは映画ではない』が昨年の東京フィルメックスで上映されている。
★参考記事: 【FILMeX_2011】「これは映画ではない」それでも映画を作りたい!~イラン映画界の不幸な現実~
『テヘラン、25時 』 (『オフサイド・ガールズ』と二本立て上映)
監督:セイフラー・サマディアン
イラン/ドキュメンタリー/20 分/1999
舞台:フランスワールドカップ 予選大陸間プレーオフ直後のテヘラン
ワールドカップ出場が決まった瞬間、テヘランの街は壊れた!1998年フランスワールドカップ最終予選のジョホールバルで日本に敗れたイラン代表は、オーストラリア代表とのプレーオフに挑んだ。絶対絶命の状況から一転、歓喜に湧くテヘランの街の貴重なドキュメント。
『モンテビデオ-夢のワールドカップ-』 (ジャパン・プレミア)
監督:ドラガン・ジェログリッチ
セルビア/青春ドラマ/140 分/2010
舞台:ワールドカップウルグアイ大会 前夜
オシムの涙を遡ること70年前。かつて「東欧のブラジル」といわれた幻のサッカー王国ユーゴスラビア代表のルーツがここに!ウルグアイで開かれた第1回ワールドカップで欧州勢最高の4位という成績を残したユーゴスラビア代表。その結成の秘話を忠実に再現。モスクワ国際映画祭観客賞、プーラ国際映画祭審査員特別賞受賞作。
©2012 Montevideo,Bog te video!‒ multimedia project
また、米国アカデミー賞公認の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル&アジア」とコラボレーションし、昨年 6 月に初めて開催した「フットボールプログラム presented by Jリーグ」で上映したサッカーのショートフィルム作品を、2月20日(月)から26日(日)に、横浜市内のブリリア ショートショート シアターにて上映することも決まった。“サッカーの神様”の子供時代を描いた作品(『サッカーストーリー』)もあり、サッカー&映画ファン垂涎のラインナップであること、請け合いだ。
【上映作品】
『サッカーと友情』
パリの街中でサッカーが出来る場所を探すのは一苦労。ようやく見つけた場所で国際色豊かなグループがサッカーを始めようとするが、邪魔が入ってしまう…それはローカルなパリっ子たち。
『パンイーFC』
タイのサッカーチームの実話。タイ南部のパンイー島は海に浮かぶ水上集落の島。そこに住む子供たちは、1986 年のメキシコワールドカップに影響され、サッカーをする場所がない島でチームを作ることに。
『サッカーストーリー』
ブラジルの小さな街でストリートサッカーをしていた 1950 年代頃を懐かしく思い出す老人。彼の仲間の一人には、後にサッカー界伝説の男がいた。
※第73回(2000)米国アカデミー賞短編実写部門ノミネート
『オフサイド』
英独両軍が睨み合う最前線に飛び出した、一個のサッカーボール。第一次大戦中の 1914 年のクリスマスにあった本当の話。
さらに、サッカーを愛するアーティストによるサッカーをテーマとした展覧会「サッカーのチカラ展」の作品の特別展示なども行い、「サッカー発祥の地」「戦後映画のパイオニアの地」である横浜を盛り上げていく。イベント情報、ゲスト情報等は随時公式サイトで更新されるので、関心がある方は要チェックだ。
サッカーは、国や人種や宗教の壁を越えて、幅広く人々に愛される国際的なスポーツだと思う。YFFFでは、そんなことを実感できる映画が揃っている。そして、このYFFFを通して、サッカーファンは映画の魅力に気付くかもしれないし、映画ファンはサッカーの楽しさに目覚めるかもしれない。「サッカー」と「映画」が融合したとき、どんな化学反応が起きるのか?そんなことも注目したい映画祭である。
文:富田優子
【ヨコハマ・フットボール映画祭2012開催概要】
日時:2012 年 2 月 19 日(日)、25 日(土)、26 日(日)
場所:シネマ ジャック&ベティ
・公式サイト
・Twitter
(共同開催)
ショートショート フィルムフェスティバル&アジア「フットボールプログラム presented by Jリーグ」
日時:2012年2月20日(月)~26日(日)(※21日(火)は休館)
場所:ブリリア ショートショート シアター