【FILMeX】第24回東京フィルメックス授賞式

最優秀作品賞『黄色い繭の殻の中』、『冬眠さえできれば』が2冠受賞

11月26日、有楽町朝日ホールで第24回東京フィルメックスの授賞式が行われ、コンペティション部門の各賞及びその他の賞が発表された。最優秀作品賞はファム・ティエン・アン監督『黄色い繭の殻の中』(ベトナム)が受賞したほか、『クリティカル・ゾーン』(イラン他)『冬眠さえできれば』(モンゴル他)の2作品が審査員特別賞を受賞。『冬眠さえできれば』については観客賞との二冠に輝いた。今回のコンペティション審査員はワン・ビン ( WANG Bing / 中国 / 映画監督 )、アノーチャ・スウィーチャーゴーンポン ( Anocha SUWICHAKORNPONG / タイ / 映画監督・プロデューサー )、クオ・ミンジュン ( KUO Ming Jung / 台湾 / 映画プログラマー・プロデューサー )だった。

■ 観客賞

『冬眠さえできれば』If Only I Could Hibernate
(モンゴル、フランス、スイス、カタール / 2023 / 98分)
監督:ゾルジャルガル・プレブダシ

ゾルジャルガル・プレブダシ監督は、お子さんが誕生したばかりで、来日できなかったため、ビデオメッセージにてその喜びを語った。「あまりにも恵まれない環境で生活する子供たちの声を映画で叫びたい、彼らにいい機会を与える映画を作ってたくさんの人に見せたい。こうした子供たちにいい影響を与える社会を作りたいという、たくさんの人の願いで作られた映画です。こうした思いが観客の皆さんの心に通じたことをとても嬉しく思っています」

■ 学生審査員賞

『ミマン』 Mimang(韓国 / 2023 / 92分)
監督:キム・テヤン

授賞理由
目の前で生きているかのような彼らの自然な会話から、物語が立ち上がっていく。
巧みな脚本と映像設計に魅了された。人々と共に描かれる街の変化と、その中でも変わらないもの。バスに揺られていくラストの余韻が心地好い。開発が進み変わっていく街の中で、記憶を紡ぎ、覚えていることが、世の中に対する希望なのではないか。

キム・テヤン監督は、観客席にいる映画関係者の方たちを紹介の後、「映画の先生に言われた言葉があります。映画を作ると時はたくさんの人がかかわって映画を作ります。映画が公開されると観客もその一員になります。それはとてもロマンチックで大切な経験なので、映画を作るときは感謝の気持ちで映画を作りなさいと。これからも映画を撮り続けられるように頑張りたいと思います」と気持ちを語った。

■ 審査員特別賞

『冬眠さえできれば』 If Only I Could Hibernate
(モンゴル、フランス、スイス、カタール / 2023 / 98分)
監督:ゾルジャルガル・プレブダシ

授賞理由
現代モンゴル社会の苦難を描いた珠玉の作品。的確な映画的表現と嘘のない観察で、苦闘する若者たちの姿に寄り添っている。

ビデオメッセージでゾルジャルガル・プレブダシ監督は、2017年のタレンツトーキョーで賞をもらい、その時に勇気と自信をもらい、それが力となってこの映画を作ることができ、またその時に出会ったフランス人のフレデリック・コルヴェさんにもプロデューサーになってもらい、一緒にこの映画を作ったというエピソードを披露。それゆえに審査員特別賞をもらうことは何よりも嬉しいことと語った。つづいて会場に来ていた共同プロデューサーのバトヒシグ・セド・アユシジャヴさんとお母さん役のガンチメグ・サンダグドルジさんがモンゴルの民俗衣装で登場。ガンチメグ・サンダグドルジさんは「これまで20年間ナレーションが専門で、これが初めての映画出演でした。それがカンヌから始まり世界を回って東京に来て賞をいただいたことをとても嬉しく思っています。モンゴルの子供たちが良い教育が受けられるように。社会の境界線が無くなるように願っております。」と、その喜びを語った。
【タレンツ・トーキョー・アワード2017】
『冬眠さえできれば』レビュー

■ 審査員特別賞

『クリティカル・ゾーン』 Critical Zone
(イラン、ドイツ / 2023 / 99分)
監督:アリ・アフマザデ

授賞理由
この映画では、抑圧的な社会に生きる若者たちの生活を覗き見ることができる。制約の中で、この映画作家はユニークで説得力のある方法で、攻撃的な体制に立ち向かう力強い映画芸術作品を作り上げた。

アリ・アフマザデ監督は、イランからの海外渡航が禁止されているため、ビデオメッセージにて挨拶した。「オルナラティブな神話、アンダーグラウンドムービーそちらに注目してくださったことに感謝します。受賞をとても嬉しく思っています。いつの日かその場に参加してお会いできる日を楽しみにしています」
『クリティカル・ゾーン』レビュー

■ 最優秀作品賞

『黄色い繭の殻の中』Inside the Yellow Cocoon Shell
(ベトナム、シンガポール、フランス、スペイン / 2023 / 178分)
監督:ファム・ティエン・アン

授賞理由
突然の死が訪れた後、映画は生きることの意味を考えさせ、主人公を取り巻く人々の喪失、過去、欲望、決断を振り返る時間を与えている。映画における永遠の探求を、野心的かつ愛おしげに描いている。

ファム・ティエン・アン監督は「つねに、独立映画を応援してくださって、独立映画の存在を支持していただいていることに感謝しています。いただいたこの賞によって、さらに広く世界の観客のみなさんに映画を届けることができることを期待しております。また、この映画は多くの人からの支援がなければ作ることができませんでした。映画のチームメンバーに感謝したいと思います。特に今回はプロでない役者さんに頑張っていただいた映画です。この賞は彼らに捧げたいと思っております。」と挨拶した。
『黄色い繭の殻の中』レビュー


最後に、審査員長のワン・ビンが今回の映画祭を振り返り「今回のフィルメックスには、アジアの若い映画の作り手たちの素晴らしい作品が集まりました。このフィルメックスで、アジアでは、若い力のある監督たちが作品を作り続けているという状況がよくわかりました。アジアの国々の作品というのは、本当にだんだんと良くなっていると思います。以前は限られた国や地域の中で作られた作品しか見られませんでしたが、今では、アジアの異なる地域、異なる言語の素晴らしい作品が各地で出てきたこと、これが最近の大きな特徴だと思います。私自身がフィルメックスへ参加するのが初めてでしたが、審査員全員が非常に楽しんで審査をすることができたことを感謝します。」と締めくくった。

■ タレンツ・トーキョー・アワード2023

「Mangoes are Tasty There」(サイ・ナー・カム(Sai Naw Kham)/ミャンマー)
授賞理由
物語を読んで、聞いて、感じたここ数日間、美しさや、恐怖、希望や悲しみを織り交ぜた詩のような彼の視点から見る故郷の景色に私たちをこの受賞者は連れて行ってくれました。彼がこの東南アジアらしい物語を語る時、彼の個性や即興性、自信を見ることができ、私たちは、また少し彼の物語を知り、彼の物語を好きになります。この才能を発見できたことが喜ばしく、完成するのが楽しみな作品です。
■スペシャル・メンション
「Free Admission」(アンジェリーナ・マリリン・ボク(Angelina Marilyn BOK)/シンガポール)
「Water Has Another Dream」(オーツ・インチャオ(OATES Yinchao)/中国)


【開催概要】
名称 : 第24回 東京フィルメックス / TOKYO FILMeX 2023
期間 : 2023年11月19日(日) ~ 11月26日(日) (全8日間)
会場 :有楽町朝日ホール 11/22(水) ~ 11/26(日)
ヒューマントラストシネマ有楽町 11/19(日)〜11/26(日)
主催:特定非営利活動法人東京フィルメックス
共催:朝日新聞社
上映プログラム:東京フィルメックス・コンペティション、特別招待作品、メイド・イン・ジャパン
https://filmex.jp/

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