【TNLF】『リリア4-ever』:トークショー

えっ、ルーカス・ムーディソンって女性の監督じゃなかったの?

トーキョー ノーザンライツ フェスティバルもいよいよ、大詰めに近づいてきた2月18日、本日は、ラース・フォン・トリアー特集と並んで本映画祭の目玉ルーカス・ムーディソン監督の三作品が上映された。

リリア

©TNLF_2011 「リリア4-ever」

その中でも劇場未公開作で、最も注目が集まっていた『リリア4-ever』。劇場内はいつもよりも早い時間から観客が押し寄せ、整理番号を呼び挙げる映画祭スタッフさんも、いつも以上に張り上げないと声が届かないほどであった。そんな熱気の中、映画上映前の15分間、シネマアナリストのまつかわゆまさんによるトークショーが行われた。女の子の感情をきめ細かく描くことに定評があるムーディソン監督。そのあたり、どんな話になるのでしょうか。
◆ムーディソン監督の日本公開作品について
ゆまさん

シネマアナリスト/まつかわゆま氏

「最初の作品『ショー・ミー・ラヴ』は、日本でも公開されたのですね。宣伝を担当していたのが、あのくらたま(倉田真由美)の夫、叶井俊太郎氏だったのですよ。この人は、当時はゲテ物映画専門、エッチ映画専門という人だったのですね。まだ『アメリ』を輸入する前のことです。それでスウェーデンの美少女のレズものという売り方をされちゃった。ところが観てみたら全然違うじゃん、これってすごく爽やかな女の子の自立の物語りだし、こういう素敵な可愛い映画をそういう売り方をしていいのかなって思ったんです。日本での登場の仕方がかわいそうだったムーディソン、この映画は、あんまりヒットしなかったのですね。『エヴァとステファン…』のときにも、最初の作品にはふれないで、ひっそりと最初のような顔をして封切られたのです。」
◆ムーディソン監督はベルイマンの息子!?
「スウェーデン映画というと、ベルイマンという大きい人がいて、難しいという気持ちがずっとあったのですね。ところが90年代の終わりに『ショー・ミー・ラヴ』という作品が出てきて、おや変わったなと思ったのです。1982年『ファニーとアレクサンドル』を作ってベルイマン監督は引退宣言をします。その後映画学校で映画を学んで、90年代の終わりころから活躍しはじめた人ってベルイマンのくびきから逃れているのですね。ムーディソンもそのひとりです。観客のほうも変わってきた。ムーディソン監督は、最初スウェーデンでもベルイマンの息子という言われ方をしていたのです。ところが、本人は「ぼくは孫くらいだよね」って言っている。今、40歳位前後の監督たちはすでにベルイマンの影響はそんなにないそうなのですよ。」
◆ムーディソン監督が影響を受けたもののリスト
「1位は、ザ・キュア(英国の)ロックバンドですね。そして2位、3位、4位もスウェーデンのバンドだった。5番目がモリッシー、それでこれじゃ音楽ばかりになっちゃうっていうので、8番にはいったのがデビッド・リンチだったのだそうです。それでリンチの映画の中で一番好きな作品は、ミーハーっぽいのですが、『ツイン・ピークス』だって言うのですね。小さな街のへんな話という点では、ムーディソン監督の作品とちょっと似ているようなところがあります。」
◆映画音楽のチョイスがとても素敵
「『リリア4-ever』では、まだブレイクする前のt.A.T.u.が使われていますね。リリアと同じ年頃の女の子バンドってことで使われたのでしょうけれどもね。『エヴァとステファン』はABBA、それぞれの年代に合わせて使っている。それぞれの映画のスタイルは違っているのに、音楽だけを聴いていると、それがアンサーソングのような感じがするって言っている方がいるんですね。ABBAがきて、t.A.T.u.がきて、答えを歌ってくれているような気がするって言う風に、音楽の面から観ている人がいるのですね。」
◆えっ、ルーカス・ムーディソンって女性の監督じゃなかったの?
リリアトークショー「あんまりにも女の子の描き方が上手なので、私てっきり女性監督だと思い込んだのですよ。今日まで女性監督だと思っていた。」
(司会者)「メールで打ち合わせのやりとりをしていて、今日は女性監督のことでも言いかなって言われたのだけれども、確かに今回、女性監督の作品は多いのだけれど、今日は違うのにどうしようかと。」
「私は、最初の作品も女性監督だと思い込んで観ていたのですよね。男性なのだけれども非常に女の子のきもちがよくわかる。思春期にかかつてくる時の女の子の揺れる気持とか、自分は他の子と違うのではないか、ではどうすればいいのだろうっていうことを、すごく丁寧にすくいあげていきますよね。絶対に自分の思い出にも基づいて作っていったのだと思います。」
(司会者)「 最初彼はゲイかと思って観てたのですけれども、子供もいるし、どうもそうではないのですよね。前世が女の子だったに違いないって思っているのですけれども。」
「あと、考えられるのは、女兄弟。兄弟が全部女の子の中で育っていると男性でもすごく女の子の気持ちがわかったりとかするようなのですよ。」
◆リリアの話
「リリア役をやっているオクサナ・アキンシアは、1987年生まれで今年24歳になります。こ最初の映画に出たときは、12歳のとき。2002年15歳でリリア役に抜擢されました。2004年には、『ボーン・スプレマシー』に出ているのですよ。ロシアのパートでイレーナという名前で出ていたそうですよ。これからもぜひ注目してほしいと思います。」
取材:藤澤貞彦

▼トーキョー ノーザンライツ フェスティバル
トーキョーノーザンライツB北欧映画の1週間:2/12(土)~20(日)
会場:ユーロスペース&アップリンク in 渋谷
公式サイト:http://www.tnlf.jp/index.html

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