【YFFF】「クラシコ」レアルvsバルサだけじゃない!熱い“クラシコ”が信州にもある!
(ヨコハマ・フットボール映画祭上映作品)
“クラシコ”と聞くと皆さんは真っ先に何を思い浮かべるだろうか。クラシコ=因縁の対決。多くのサッカーファンであれば、スペインの名門チーム同士のレアル・マドリードとFCバルセロナの対戦を真っ先に思い浮かべるかもしれない。かくいう筆者もその1人だ。しかし、本作で取り上げられるのは、日本のサッカー・地域リーグ北信越ブロックでしのぎを削り、なおかつ、同じ長野県を本拠地とするACパルセイロ長野と松本山雅FCの対決、いわゆる“信州ダービー”だ。
日本のサッカーリーグは、プロリーグである「Jリーグ(J1、J2)」を頂点とし、その下にアマチュアの全国リーグ「JFL(日本フットボールリーグ)」があり、さらにその下に「地域リーグ」がある。多くのチームがJリーグ入りを目指し、ACパルセイロ長野も松本山雅FCも例外ではないが、まずそのための直近の目標として、すぐ上のリーグであるJFLへ昇格することを掲げている。だが、その昇格への道も細く険しく、長野と松本が熾烈な戦いを繰り広げていた。
本作は、サッカー選手や試合そのものの対決を中心に描いているのではない。長野と松本、それぞれのチームを熱烈に愛するサポーターの物語だ。彼らの我がチームに対する声援は、Jリーグのチームに対するそれと比べても、決して見劣りしないことに驚かされた。本当に失礼な話だが、地域リーグのチームの応援はさほど本格的なものではないと思い込んでいたもので・・・。いったい彼らの熱い思いはどこから沸き上がってくるのだろう・・・。そんな彼らの熱い思いが、信州の四季折々の雄大な自然をバックにして綴られていく。
長野と松本の因縁の発端は、明治初期の廃藩置県にまで遡るという、130年の長きにわたる歴史がある。それだからこそ、松本サポーターは「長野だけには絶対に負けたくない!」という意地があり、「長野より先にJFLに昇格してみせる!」という悲願がある。だから、サッカーを純粋に愛するという思いだけではなく、地元への限りない愛着とライバルへのメラメラと燃えさかる対抗心が、彼らを奮い立たせている。いや、むしろサッカー愛よりも地元愛のほうが強いんじゃないか・・・と思わせるところも多々ある。
映画を観ていると、実際に戦う選手達は比較的平静で、応援するサポーターのほうがむやみに熱くなっているようなシーンもあって、おかしい。長野vs松本の試合会場では、有事に備えて(?)、サポーターの入場口が厳格に分けられているという徹底ぶり。サポーターの人々のチームやサッカーに対する思い入れはそれぞれ。サッカーはあまり分からないけれど、故郷のチームだから応援するというような人もおり、とにかく彼らの郷土愛には頭が下がる。それがサッカーの応援だけではなく、地元を活性化させようという意欲に繋がっている。地方の疲弊が叫ばれて久しいが、こういう人達を観ていると、楽観的なのかもしれないが、日本もまだまだ捨てたもんじゃないぞという希望すら感じさせるのだ。
もちろん、がむしゃらな熱い思いだけではなく、冷静にチーム経営を分析する人もいる。「負けている時でも、お客さんを集められるチームにしたい。例えて言うなら弱かった時の阪神タイガースやJ2降格時の浦和レッズのように」。確かに勝っている時はいいが、不調で負けが続くとチームから心が離れるファンも現れよう。そのためには、いかに魅力的なチームづくりが大切になってくる。非情ではあるが、シーズンが終われば何人かの選手とは来季の契約を結ぶことができず、そういう内容が映画に収められていると、やはり胸が痛む。
また、元日本代表選手(誰であるかは観てのお楽しみ)は、「モウリーニョ(レアル・マドリード監督)やヴェンゲル(アーセナル監督)が(JFLや地域リーグのチームの)監督をしてくれても強くはならない。彼らのレベルの高い指導に選手はついていけないからだ。選手は自分の器を理解して、それで上を目指して這い上がっていかなくてはいけない」と厳しい指摘をする。こんなことを言われると気持ちが萎えそうだが、現実問題として彼の指摘は正しいのだと思う。それらを受け止める度量がチームも選手も、そしてサポーターにも必要なのだ。そんなことをさりげなく伝え、サッカーとともに生きる苦楽が察せられる。
JFLや地域リーグの試合の様子は、全国区のニュースではほとんど伝えられない。本当に申し訳ないのだけれど、長野県にこのような熱いクラシコが存在していたとは知らなかった。筆者は、どちらかというと海外サッカー(特にイングランド・プレミアリーグ)のほうが好きで、代表戦やJ1の試合以外には、あまり目を向けてこなかった。だが、本作に触れて、サッカーに対する意識が少し変わったような気がする。もう少し視野を広げて、いろいろなチームを観ていきたいと感じた。それこそが日本のサッカー文化を成熟させる一助になるとも思うのだ。
そして何よりも。長野vs松本の試合を、いつの日かJ1の舞台でぜひとも観てみたい。長野と松本の挑戦はまだまだ続いていくはずだ。さらに夢が広がり、サポーターの人々もより熱が入ることだろう。サッカーの力や可能性を感じさせる映画だった。
監督:樋本淳
出演:AC 長野パルセイロ/松本山雅FC
ナレーション:安めぐみ
音楽:OGRE YOU ASSHOLE
2010 年製作/日本/97 分/ブルーレイ
公式サイト:http://www.clasico-movie.com/
©クラシコ製作委員会2010
2011年3月12日より池袋シネマ・ロサ、吉祥寺バウスシアターにて公開(全国順次公開)
▼樋本淳監督インタビュー記事はこちら▼
【YFFF】「クラシコ」樋本淳監督インタビュー:映画からは“日本人の底力”が感じられると思います
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2011年2月18日
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