フランス映画祭2016来日映画人アルバム

華やかな来日ゲストによる名言、迷言、至言ハイライト

集合写真イザベル・ユペールに熱狂した、今年のフランス映画祭。残念ながら直前になって、『ショコラ!』のロシュディ・ゼム監督、オマール・シィの来日中止という残念なお知らせもありましたが、それでも12名もの豪華なゲストが来日し、イヴェントを盛り上げてくれました。こんなこと言っていいの?という発言から、作品の裏話、映画作りのコツまで。そのほんの一部を写真と共にお届けします。

6月24日(金)

『太陽のめざめ』

ロッド・パラド

ロッド・パルド「高校にいた時、ある女性がやってきて、あなた映画に出てみないと声をかけられました。その後30回ほどのオーディションが重ねられたのです…カトリヌ・ドヌーブとのカメラテストは、最初はすごく緊張していました。彼女からあなたいくつなの?と聞かれたので、僕は18歳です。あなたは?て聞いたのですね。そうしたらすぐに彼女は自分の年齢を言って下さった。そんなところから打ち解けていきました」

「アラン・ドロンのようになれるかもなどと褒めていただき、ありがとうございます。とてもくすぐったいですが。実は僕はアラン・ドロンに会ったことがあるんですよ。大俳優ではありますが、この人いい人だなっていう風に思いました。もちろん僕も、彼のようなキャリアを積んでいければいいなぁと、思っています」

『太陽のめざめ』
監督:エマニュエル・ベルコ
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ロッド・パラド、ブノワ・マジメル、サラ・フォレスティエ、ディアーヌ・ルーセル
2015年/フランス/フランス語/119分
2016年8月 シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
配給:アルバトロス・フィルム/セテラ・インターナショナル

『太陽のめざめ』クロスレビュー

6月25日(土)

『The Final Lesson (仮題)』

パスカル・プサドゥー監督

パスカル・プサドゥー「愛する人を失うと、大抵の人は後悔する。この作品で私は、愛する人と共に時間を過ごし、相手の選択(死)を受け入れることによって、後悔をしないように生きましょうということを、皆様にお伝えしたかったのです」

「映画とは、映像で訴えかけるものなのですが、会話だけでなく、その中に音楽を加えることによって魔法が生まれるという思いをもっています。ジルベール・ベコーの代表的なシャンソン「そして今は」を映画の中で使ったのですが、素晴らしい詩(※1)なのですね。2人の病気で入院している高齢者が、会話している中で、あの歌を歌い出すというのは、イメージにピッタリだったのです。ただ、あの音楽の使用については、大変苦戦しました。ジルベール・ベコーの奥さまが、この映画は悲しすぎるということで、すぐには承諾して下さらなかったのです。それで私はものすごく闘いました。映画というのは、作る前も戦いで、作っている間も闘いで、作った後も闘いだということを認識した次第です」

※1
夜は何でいつも訪れるんだ
誰のための夜なんだ
この朝だって
何の意味も無く明けるじゃないか

マルト・ヴィラロンガ

マルト・ヴィラロンガ「この役が私に来た時には、とても嬉しかったです。絶対に他の人には取られたくないと思いました。この作品の話は、誰にでも起こることだと思うのです。私はこの映画に参加できたことに心から満足しています。人生というのは、笑う時もあれば、涙する時もある。そのことを忘れないように、自然に演じることを心がけました。」

『The Final Lesson (仮題)』
監督:パスカル・プザドゥー
出演:サンドリーヌ・ボネール、マルト・ヴィラロンガ
2015年/フランス/フランス語/106分
2016年 シネスイッチ銀座ほか全国順次公開
配給:ギャガ


『愛と死の谷』

ギヨーム・ニクルー監督

ギヨーム・ニクルー「『修道女』でイザベル・ユペールとは一緒に仕事をしていまして、その時にもう一度ご一緒したいと思っていました。テーマはもう少し親密な、現代的なものにしたいと思っていました。イザベルの声や顔が、想像力を掻き立ててくれ、それでシナリオを書きまして、その後しばらく経ってから、ドパルデューのことを考えました」

「撮影の最中、5日間は記録的な猛暑となりまして、60℃まで気温が上がったのです。危険ということで、その5日間は、国立公園内での撮影が許可されなかったのです。なので、公園以外の民間の人が所有している場所で撮影しました」

イザベル・ユペール

ユペール愛と死の谷1「ジェラール・ドパルデューとの共演は『バルスーズ』『ルル』につづき、これが3回目になります。彼のような頭の良い俳優と仕事をする時は、すべてがシンプルに運びます。私とジェラールのような関係ですと、何も考えずに現場に行って、仕事ができるのです。2人とも仕事のしかたは本当に似ているのですね。」

「デス・バレーは、昼も50℃、夜になっても50℃という、驚くべき所でしたけれど、人間の身体というのは慣れるもので、そんなに大きな苦しみというほどのものではありませんでした。役を演じるにあたって、そうした環境が栄養になったと思います」

ユペール愛と死の谷2「日本から帰ったら、ミヒャエル・ハネケの『ハッピー・エンディング』という作品の撮影があります。父親役がジャン=ルイ・トランティニャンで、フランスの北部を舞台とした、家族の物語です」

イザベル・ユペールの大ファンという方の熱烈なラヴ・コールに…

「あらっ、1年に1回と言わず、毎日日本に来ようかしら」

同じくファンの方から「フランスでは歳を重ねた女優さんがとても美しく…」という質問に

「ありがとうございます。でもそんなに歳を重ねているとは思わないのですが…やっぱり日本に来るのはやめようかな」

『愛と死の谷』
監督:ギヨーム・ニクルー
出演:イザベル・ユペール、ジェラール・ドパルデュー
2015年/フランス/フランス語・英語/92分
日本配給未定


『モン・ロワ(原題)』

マイウェン監督

マイウェン「幸せなカップルを映画で撮るということが怖かったのですね。どうしてもそういうものは、甘ったるく感傷的で、つまらないものになってしまうからです。幸せな人たちには物語がないとよく言われますが、まさにそのとおりだと思います。だから私は別れるまで描きたかったのです」

「膝というのは、身体のなかで唯一過去と結び付いている器官なのですね。なぜかというと、後ろにしか曲げられない。その膝をリハビリする女性が、同時に自分の過去を振りかえり、心も直すということを描きたいと思ったのです」

「エマニュエル・ベルコは、なぜ私を起用するのかと、何度も聞いてきました。足のリハビリの話だから、もっと足の綺麗な女優さんがいいんじゃないのかとか言うのですね。彼女のそういうところが、映画の役とピッタリ合っていると思いました。彼女は自信が無かったので、現場にも準備万端でやってきたのです。分厚いノートにいっぱい理論を書いたものを現場に携えてきました。ただ、そのことによってがんじがらめになり、自分を解き放つということができなくなっていました。私の演技指導は、それを崩すことにありました」

「逆にヴァンサン・カッセルのほうは、この人ちゃんとシナリオを読んできてくれたのかなぁって心配になるほどで。毎朝、さぁ、今日は何を撮るのって、すごく軽い感じで現場にやってくるんですね。それでずっと現場ではジョークばっかり言って、せわしなく動いている人なのです。でも一旦カメラが回りだすと、すぐに人物の中に入っていくのです。彼にとっては、自分の役柄と、自分自身との間に境界線というのを設けていない人ということがすごくわかりました。最初は嫌な奴だなって思っていたジョルジュという役を、そのうち自分のことのように弁護するようになるのです」

『モン・ロワ(原題)』
監督:マイウェン
出演:エマニュエル・ベルコ、ヴァンサン・カッセル、ルイ・ガレル、イジルド・ル・ベスコ
2015年/フランス/フランス語/126分
2017年春公開予定
配給:アルバトロス・フィルム/セテラ・インターナショナル

『モン・ロワ』クロスレビュー

6月26日(日)

『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲』

ジャン=ポール・サロメ
(ユニフランス・ フィルムズ・インターナショナル会長『ルーブルの怪人』監督)

ジャン=ポール・サロメ「昨日の夜はイザベル・ユペールらとカラオケにいきまして、朝まで歌っていました。それで、声がこんなに枯れています。イザベル・ユペールは、きっとそのうち東京でコンサートが開けるかもしれないですね」

「私は、若いころ小さなカメラで短編作品を作っていたのですが、それがクロード・ルルーシュ監督の目に留まり、それがきっかけで『愛と哀しみのボレロ』に助監督として参加しました。なので、私は彼の前で小さな子供のようになってしまいます。そんなわけで今日は、ルルーシュ監督の映画の紹介のために日本に来ました」

「クロード・ルルーシュ監督は、これまで45作品以上も作品を撮っていますが、今でも若さを保っていて、映画を撮りつづけたいという情熱を持ち続けている人なので、すべての映画監督にとって素晴らしい手本になると思います」

『アンナとアントワーヌ 愛の前奏曲』
監督:クロード・ルルーシュ
出演:ジャン・デュジャルダン、エルザ・ジルベルスタイン、クリストファー・ランバート、アリス・ポル
2015年/フランス/フランス語・英語/114分
2016年9月3日(土)~Bunkamuraル・シネマほかにて公開
配給:ファントム・フィルム


『めぐりあう日』

ウニー・ルコント監督

ウニー・ルコント「実母と養子に出されたその娘が再会した時に、どうなるのかを描きたいと思いました。30年後に捨てた側と捨てられた側の人生にどういう影響が出てきているのか、そういったところを描きたいと思いました。それと、再会といっても、最初はお互いにそのことを知らずに再会させるということによって、ドラマチックなものになると考えました」

「なぜ、主人公を理学療法士という設定にしたかと言うと、それは私自身の体験によります。その時は接骨医だったのですが、母親が腕の中に子供を抱えるように抱き、揺らすことによって背中を楽にしてあげるという施術を私自身受けまして、それが身体的にも気持ち的にも、とてもインパクトがあり、その光景を映画の中のイメージとして使いたいと思ったからです」

「この職業にしたことによって、後から色々な意味が生まれることがわかりました。彼女は生まれてすぐにすぐに捨てられるといショックを味わって、看護師や保育士など、色々な人の手から手へと渡っていたであろうと思われます。大人になってから彼女がこの職業を選び人の肌に触れ合うことによって、自分自身のトラウマを乗り越えているという象徴的な意味も生まれるのですね」

『めぐりあう日』
監督:ウニー・ルコント
出演:セリーヌ・サレット、アンヌ・ブノワ、ルイ=ド・ドゥ・ランクザン、フランソワーズ・ルブラン、エリエス・アギス
2015年/フランス/フランス語/104分
2016年7月30日(土)岩波ホールほか全国順次公開
配給:クレスト・インターナショナル

『めぐりあう日』クロスレビュー

【フランス映画祭2016】

ユペールに拍手を日程:6月24日(金)〜 27日(月)
場所:有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ 日劇(東京会場)
団長:イザベル・ユペール
*フランス映画祭2016は、プログラムの一部が、福岡、京都、大阪でも上映されます。
公式サイト:http://unifrance.jp/festival/2016/
Twitter:@UnifranceTokyo
Facebook::https://www.facebook.com/unifrance.tokyo
主催:ユニフランス
共催:朝日新聞社
助成: 在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
後援:フランス文化・コミュニケーション省-CNC/TITRA FILM
協賛:ルノー/ラコステ/エールフランス航空
運営:ユニフランス/東京フィルメックス

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