【フランス映画祭】モン・ロワ(原題)

映画と。ライターによるクロスレビューです

【作品紹介】

unspecified-1『美女と野獣』のヴァンサン・カッセルと『太陽のめざめ』の監督エマニュエル・ベルコが共演した、10年間にわたる男と女の激しい愛の物語。エマニュエル・ベルコは体当たりの演技が絶賛され、2015年カンヌ国際映画祭で『キャロル』のルーニー・マーラーとともに女優賞を受賞。監督は「パリ警視庁:未成年保護部隊」(11)でカンヌ映画祭審査員賞を受賞した自身も女優であるマイウェン。
弁護士のトニーはスキー事故で大けがを負いリハビリセンターに入院する。リハビリを続ける中、元夫ジョルジオとの波乱に満ちた関係を振り返る。これほどまでに深く愛した男はいったい何者だったのか。なぜ、ふたりは愛し合うことになったのか。10年前、トニーはかつて憧れていたレストラン経営者のジョルジオとクラブで再会し、激しい恋に落ちる。瞬く間に意気投合したふたりは、電撃的に結婚を決め、トニーは妊娠するが…。

【クロスレビュー】

藤澤貞彦/恋愛哲学度:★★★☆☆

物事を論理的に考えるはずの弁護士のトニー、熱烈な恋愛が冷めて行く過程を詩に綴る彼女が、自らその渦中にいることをまったく自覚できない。かくも恋とは人を狂わすものなのか。それはファーストシーン、彼女が無謀なスピードを出しスキーで滑走する様子によく似ている。追い越す時に投げかけられた子供の声も聞こえず、ただまっすぐに前を見るのが精いっぱいの状態。このような状況では、転倒し膝に大けがでもしない限り、冷静になり、過去を振り返られない。膝は唯一後ろにしか曲げられない関節である、過去を見つめてみたらという、まさにお医者さんの説明のとおり。結婚・・・男は二人の関係を維持するために、女に嘘をつき、女はそのために、自分に嘘をつく。これが冷静な判断を狂わす。その男の愛とは、彼の部屋の紙でできた海の絵のようなもの。それに対し、膝をけがして彼女が入るリハビリ施設の前には、本物の海が広がっているのが印象的だ。なぜ恋が人を盲目にするのか・・・これは、マイウェン監督の恋愛哲学とも言える作品である。

鈴木こより/実力派俳優同士による競演を堪能!度:★★★★☆

バーの経営者に恋をした女性弁護士のトニー。お互い出会ったことのないタイプで不安はあれど刺激的な恋愛を楽しんでいる。が、身ごもってからのトニーに待ち受けていたのは孤独で耐えがたい日々だった。女は子供ができると刺激よりも安定を求めるもの。彼はというと、想像を裏切らない遊び人ぶり。耐えて耐えてブチ切れる女と開き直る男。キレた時の動きが予測不可能な彼女と、ある意味ブレることなく我が道をいく彼氏の掛け合いにハラハラしながら実力派俳優同士による競演を堪能した。くっついたり、離れたり、2人の関係は寄せては返す波のよう。数々の修羅場を経て別れても、プレゼントされた腕時計をさり気なく付けて再会するトニーはチャーミングで、時間の流れとともにこの2人の関係もゆっくり熟成されていくのだろう、と(意外にも)爽やかな余韻が残った。

2017年春公開


© 2015 / LES PRODUCTIONS DU TRESOR – STUDIOCANAL

【フランス映画祭2016】

日程:6月24日(金)〜 27日(月)
場所:有楽町朝日ホール、TOHOシネマズ 日劇(東京会場)
団長:イザベル・ユペール
*フランス映画祭2016は、プログラムの一部が、福岡、京都、大阪でも上映されます。
公式サイト:http://unifrance.jp/festival/2016/
Twitter:@UnifranceTokyo
Facebook::https://www.facebook.com/unifrance.tokyo
主催:ユニフランス
共催:朝日新聞社
助成: 在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
後援:フランス文化・コミュニケーション省-CNC/TITRA FILM
協賛:ルノー/ラコステ/エールフランス航空
運営:ユニフランス/東京フィルメックス

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