【FILMeX】第14回東京フィルメックス:クロージングセレモニー

最優秀作品賞は、『花咲くころ』に決定!

集合写真

11月30日、有楽町朝日ホールで第14回東京フィルメックスのクロージングセレモニーが行われ、コンペティション部門の各賞が発表された。その模様をお伝えする。

【第14回東京フィルメックスコンペティション】
▼観客賞
『ILO ILO』
アンソニー・チェン監督
▼学生審査員賞
『トランジット』
ハンナ・エスピア監督
▼スペシャル・メンション
『カラオケ・ガール』
ウィッサラー・ウィチットワータカーン監督
『トーキョービッチ,アイラブユー』
吉田光希監督
▼審査員特別賞
『ハーモニー・レッスン』
エミリー・バイガジン監督
▼最優秀作品賞
『花咲くころ』
ナナ・エクチミシヴィリ監督、ジーモン・グロス監督



【授賞理由と各賞受賞者の喜びの声】

▼観客賞
アンソニー・チェン

  アンソニー・チェン監督


『ILO ILO』
アンソニー・チェン監督
風邪をひいたとのことで、声がおかしいのを謝りながらの登壇で、ちょっと気の毒。
「東京フィルメックスというのは、私にとって重要な映画祭です。というのは、3年前に今のタレントキャンパスの前身だったネクストマスターズ・トーキョーで出した企画で、ここに参加しなければ、この映画は作られなかったわけです。この映画は、すでにいくつか賞を取っていますが、観客賞というのは初めてで大変嬉しく思います。一般の観客にいい映画というお墨付きを頂いたわけで、大変嬉しく思います。この映画は日本で配給されていって、一般の多くの人たちの目に触れていくことを望んでいます」

▼学生審査員賞
ポール・ソリアーノ

  ポール・ソリアーノ氏


『トランジット』
学生審査員、中村祐太郎さん、川和田恵美さん、須山拓真さんより発表された。
授賞理由「ドメスティックであり、切実なテーマを、現実味を損なうことなく、映画的な手法で、私たちの前に紐解いてくれました。終着地も定まらぬまま、ここで生きていくというのが、ある種の強い生命力であり、それを鮮明に写しだした本作品は、私たちの心をまるごと引っ掴み、今も離そうとはしません」

続いて、プロデューサー、ポール・ソリアーノ氏により、ハンナ・エスピア監督からのメッセージが代読された。「まず、『トランジット』を招待してくれた東京フィルメックスに感謝申し上げます。昨年、タレント・キャンパス・トーキョーに参加する機会に恵まれ、そして今年になって東京フィルメックスに戻ってこられたことは、懐かしくもあり、エキサイティングなことでもありました。この機会を与えて下さったことに、私は一生感謝し続けると思います。また、学生審査員の審査員団にも大いに感謝いたします。映画を学ぶ学生たちこそが映画の未来であると信じていますし、才能豊かな若い人たちから、こうした賞を受けるのは光栄であり、また同時に謙虚な気持ちにもさせられます。私たちがいつまでも学ぶ気持を持ち続けられますように」

▼スペシャル・メンション
吉田光希監督

 感激する吉田光希監督


『カラオケ・ガール』
『トーキョービッチ,アイラブユー』
イザベル・グラシャン審査員により発表された。
授賞理由「今年、審査員はアジア映画の未来のために、これから期待される2人のむ監督にスペシャル・メンションを贈ります。カラオケ・ガールという風俗嬢に寄り添い、彼女の実生活を通して心の奥底までを描きだしたことにより、『カラオケ・ガール』のウィッサラー・ウィチットワータカーン監督をスペシャル・メンションとします。また、都市・東京を監督自身の哲学的な視線で見据え、人々の孤独とその中で彼らが関係をもつことの難しさを繊細に読み取った『トーキョービッチ,アイラブユー』の吉田光希監督をスペシャル・メンションとします」

ウィッサラー・ウィチットワータカーン監督は帰国されたので、吉田光希監督のみの挨拶となった。「大好きな映画祭で、スペシャル・メンションという評価を頂けたことは、大変励みになります。これから先も・・・(感極り涙声に)自分の映画を探し続けて、また皆さんの前に戻ってきたいと思っています。本日はありがとうございました」

▼審査員特別賞
カザフスタン大使

  アルマス・ディシュコフ氏


『ハーモニー・レッスン』
松田弘子審査員により発表された。
授賞理由「政治と文化の調和の在り方により生まれてしまうむ暴力性を、男性社会というメタファーで描いたその才能ある洞察力により、『ハーモニー・レッスン』のエミリー・バイガジン監督に審査員特別賞を贈ります」

エミリー・バイガジン監督帰国により、カザフスタン大使館参事官アルマス・ディシュコフにより受賞の挨拶がされた。「本日はカザフスタンの映画が特別賞を頂いたということで大変嬉しく思います。日本のみなさまにカザフスタンに興味を持っていただけると大変嬉しく思います」

▼最優秀作品賞
渡辺真起子審査員

  渡辺真起子審査員


『花咲くころ』
渡辺真起子審査員により発表された。
授賞理由「10代の少女たちの力強い生命力を、90年代前半のグルジア社会を背景に、エネルギッシュかつリアルに描き出した才能を讃え、『花咲くころ』のナナ・エクチミシヴィリ監督とジーモン・グロス監督に最優秀作品賞を贈ります」

ナナ・エクチミシヴィリ監督とジーモン・グロス監督は、本映画祭に来られていないため、林加奈子デイレクターによりメッセージが代読された。「今この瞬間、皆様と一緒にいられたらと思います。しかし、私たちの間には物理的に遠すぎる距離があり、簡単にそちらに立ち寄ることはできません。正直言って、今日の始まりはひどいものでした。朝早くから打ち合わせの予定が入っていたため、ジーモンがナナを起こそうとしたのですが、ナナは起きようとはしませんでした。外は雨降りで、11月の寒さの厳しい一日の始まりでした。しかし、ジーモンがEメールをチェックして、東京フィルメックスでの最優秀作品賞の知らせを読んだ時、私たちの一日は一瞬にして変わりました。ジーモンはその知らせを寝室に向かって叫び、それから1秒もしないうちに、ナナはジーモンのいる部屋に駆け付けていたのです。世界のまったく別の場所にいる人々の心に自分たちの作品が届くというのは、素晴らしく最高の気分です。この美しい賞をいただいたことに対し、審査員の皆さまと映画祭に感謝します」

▼審査員長モフセン・マフマルバフによる総評

モフセン・マフマルバフ審査員長

モフセン・マフマルバフ審査員長


「親愛なる日本の皆様、東京フィルメックスをありがとうございました。親愛なる東京フィルメックス、アジア映画の支援をどうもありがとうございます。現在アジアは2つの検閲の圧力に悲鳴をあげています。1つには、中国やイランのような国による思想的な検閲です。もう1つは世界中あらゆるところにある経済的な検閲です。毎日毎日、芸術的な映画の存在できる場所が小さく小さくなってきました。親愛なる映画製作者の皆様、配給会社の皆様、いつもあなたがたは、経済危機だとおっしゃいますけれども、その経済危機のルーツは、文化的な危機に根付いていると思われませんか。親愛なる観客の皆様、皆様がたの支援がこのような映画を生き永らえさせているだということを忘れないでいただきたいです。親愛なる映画作家の皆様、私よりご存知ですよね。映画作りというのは、商売ではなく、仕事ではありません。映画というのは、創りだすことへの愛であり、この社会への責任なんです。ありがとうございました」

最後に、林加奈子デイレクターの「映画祭にできることをこれからも続けて行きたいと思います。来年の第15回東京フィルメックスもどうぞご期待ください」という挨拶でセレモニーは締めくくられた。

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▼第14回東京フィルメックス▼
期間:2013年11月23日(土)〜12月1日(日)
場所:有楽町朝日ホール・TOHOシネマズ日劇
公式サイト:http://filmex.net/2013/