『ドライヴ』ライアン・ゴズリングが魅せる、極上のバイオレンス

2011年のカンヌ国際映画祭で、並み居る巨匠らの新作を抑え“監督賞”を受賞した本作『ドライヴ』。
デンマーク出身のニコラス・ウィンディング・レフン監督の溢れんばかりの才気と繊細な感性が、スリリングでスタイリッシュなバイオレンスを作り出す。


闇夜にまぎれて強盗の逃走を請け負う、名もなき“ドライバー”(ライアン・ゴズリング)は、昼はハリウッドのスタントマンという二つの顔を持つ。冒頭の逃走シーンから、この天才ドライバーは観る者の心をガッチリ掴んで離さない。スピードやテクニックといった派手な技術だけでなく、相手の行動を予測してタイミングを計る、冷静な状況判断力も兼ね備えているのだ。張りつめた緊張感をゲーム感覚で楽しんでいるようなフシもある。
そんな表と裏の顔を持つ男ゆえ、他人とは常に一定の距離を保っているが、同じアパートに暮らす人妻(キャリー・マリガン)と出会い、心惹かれていく。互いに心を通わせるようになる頃、出所してきた彼女の夫が突然現れる。ドライバーは、トラブルに巻き込まれた彼女ら家族を救うため、一肌脱ぐことになるのだが…。

愛する人のため、巨悪に一人立ち向かう。映画ではありがちな話である。だが“車は身体の一部”といったドライバーのやり方は、かなり独特であるし、詩的で美しい映像と浮遊感溢れる音楽の融合も、ドロッとした血なまぐさいバイオレンスとは一線を画した印象を与える。独自の美学でバイオレンスを描く、タランティーノやコーエン兄弟の作品と比べても、一味も二味も違う余韻が残る。

無口だが内に激しさを隠し持つ孤独な男を、今、最もセクシーな男の一人といわれるゴズリングが好演。クールな表情を一変させ、抑えていた感情を爆発させるクライマックスは、ギャップも相まって衝撃倍増。一方マリガンも、そういう激しいシーンと相対するイノセントな空気を醸し、コントラストを生み出している。こうした意外性や場面の対比が、ラストのバイオレンスシーンをより効果的に盛り上げている。
ちなみにレフン監督は再び彼らとタッグを組んでおり、ゴズリングとは「Only God Forgives」、マリガンとは「I Walk With The Dead」が待機中とのことで、早くも公開が待ち遠しい。

スリルやスピードだけではない陶酔度100%のドライヴを、ぜひ劇場で体感してほしい。3月31日(土)より、新宿バルト9他全国ロードショー!

オススメ度:★★★★☆
Text by 鈴木こより

監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
出演:ライアン・ゴズリング、キャリー・マリガン、アルバート・ブルックス
原題:DRIVE
制作:2011年/アメリカ/100分
公式サイト:drive-movie.jp
配給:クロックワークス

(C)2011 Drive Film Holdings, LLC. All rights reserved.

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