「ウォール・ストリート」今回はキャリー・マリガンがキーパーソン!

欲望は罪なのか
というキャッチフレーズにハッとさせられる。

リーマン・ショックから続くこの大不況時代において、多くの人々が金融業界にダークなイメージを抱いている。インサイダー取引や粉飾などの犯罪が横行し、毎日のようにメディアでも取り上げられていたのだが・・・
ほんとうに、悪いのは彼らだけなのだろうか?

『ウォール街』から23年の歳月を経て、オリバー・ストーン監督が新たな疑問を投げかける。金融業界を舞台としテーマを深化させながらも、人間の「再生」の物語を描いた上質のエンターテインメントだ。

物語は8年の服役を終えた元カリスマ投資家・ゴートン・ゲッコー(マイケル・ダグラス)の出所シーンからはじまる。前作のファンにはたまらないシーンであろう。家庭を崩壊させた男に迎えの家族の姿はない。その頃、彼の娘ウィニー(キャリー・マリガン)は恋人のジェイコブ(シャイア・ラブーフ)と結婚秒読みの同棲生活をしていた。しかしウィニーは、恋人が皮肉にも父親と同じ投資家であることに、一抹の不安を感じていた。三人の運命はいかに・・・。

この物語のキーパーソンとなっているのが、キャリー・マリガン演じるウィニーだ。三人の中では一番受け身であり、ストーリーを引っぱっていくというキャラクターではないのだが、他の人物との対比によって彼女の主張は、静かに、だが強烈に効いてくる。
父親や恋人が投資家であるのに対し、彼女はウィキリークスを連想させる「非営利ニュースサイト」の運営メンバーだ。周りに流されない知性とモラルをもつ彼女を、『17歳の肖像』でいきなりオスカー主演女優賞候補となったキャリー・マリガンが的確な演技で体現している。ウィニーは「再生」の女神でもあり、新たな時代の幕開けを感じさせる象徴となっている。彼女が身に付けているアクセサリーは、物語をより深く理解するヒントにもなっているので、ぜひ注目してほしい。

前作の「欲望は善である」というゲッコーの衝撃的なセリフから時代は変わり、「欲望は罪なのか?」と問われる現代。オリバー・ストーン監督は『ウォール街』と『ウォール・ストリート』でバブルの「始まり」と「終焉」を描き、その時代を生きる人間の本質に迫っている。

2011年2月4日(金)より、TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー!

おススメ度:★★★★☆
Text by 鈴木こより

監督:オリバー・ストーン(『ウォール街』『プラトーン』『ワールドトレードセンター』)
出演:マイケル・ダグラス(『ウォール街』)/シャイア・ラブーフ(『トランス・フォーマー』)
キャリー・マリガン(『17歳の肖像』)/ジョシュ・ブローリン(『ブッシュ』)
配給:20世紀FOX映画
上映時間:2時間13分
公式サイト: http://movies.foxjapan.com/wallstreet/
(C)2010 TWENTIETH CENTURY FOX

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