注目すべきは韓流だけじゃない! 中国映画界の新星ショーン・ドウ インタビュー

『1911』のジャッキー・チェン、『新少林寺』のアンディ・ラウ、『孔子の教え』のチョウ・ユンファ……今年日本で話題を呼んだ中国映画には、ずらりベテランの顔が並ぶ。彼らがウン十年にわたって中華圏のトップスターの地位に君臨し続けているという状況がまず凄いのだが、一方で若手のスター、特に世界的に活躍しそうな男性スターが中国から現れないことに一抹の不安を抱いていた映画ファンも多いのではないだろうか(え、筆者だけ?)。
そんな中国映画界に彗星の如く現れたのが、今年の夏に公開されたチャン・イーモウ監督作『サンザシの樹の下で』主演のショーン・ドウだ。長身の爽やかなルックスに加え、10代でカナダに移住したためか、オープンで朗らかな雰囲気がこれまでの中国映画のスターにはなかった持ち味。年明け1月11日には『サンザシ~』のDVDも発売になるということで、今後注目していきたい俳優、ショーン・ドウのインタビューをお届けする。

インタビューを行ったのは10月。ショーン・ドウは東京国際映画祭の提携企画として開催された「2011日本・中国映画週間」 (※関連記事)に参加するため来日していた。同映画週間では、主演した『愛のしるし』(原題:秋之白華)を上映。同作は、『山の郵便配達』(98)で有名なフォ・ジェンチー(霍建起)監督が、中国共産党初期の最高指導者の一人、瞿秋白(く・しゅうはく)とその妻の姿を美しい映像で描いた作品だ。デビュー早々、チャン・イーモウ、フォ・ジェンチーと中国を代表する大物監督の作品に立て続けに出演した輝かしいキャリアを、自身はどうとらえているのだろう?

ショーン「チャン監督に選ばれたのは、本当にラッキーでした。『サンザシの樹の下で』を通してチャン監督から教わった最大の点は、“努力する”ということですね。正しい方向に向かって努力する、ということ。『サンザシ~』の撮影時はとても緊張していたんです。私はまだまだ若くて経験が浅かったので、監督から演技についてたくさん教わりました。フォ監督はというと、穏やかでしかも非常に多才な方。『愛のしるし』では、監督は私に創作する空間を与えてくださいました。共演のドン・ジエさんと演技を考えて、監督に選んでもらうということをやったんです」

「とても才能ある監督に出会えて、すごく幸運」と質問に間髪入れず語り始め、自身に与えられたチャンスに素直に感謝するショーン。まっすぐな人柄が伝わってくる。『サンザシの樹の下で』『愛のしるし』の両作とも、真っ直ぐで熱いものを胸に秘めた青年を演じたが、彼自身の持ち味とキャラクターがリンクしている部分も多いのではと聞くと、「自分の個性と重なっている部分はありますね。でも、全面的にそれが出ているとは限りません」との答え。「『サンザシ~』で演じたスンは非常に“騎士道精神”を持ったキャラクターです。女の子の世話を焼くし、思いやりもあって、とても明るい。『愛のしるし』の瞿秋白は、とても多彩で独特な背景を持った人物です。キャリアがあって、穏やかで優雅。瞿秋白は教壇に立ったりしていましたが、“声は大きくないが、とても優しく、人をひきつける魅力を持っていた”と書かれた記録があります」

まだまだ出演作は少ないものの、中国国内でも大変な人気者となった彼。キャリアは順風万帆にみえる。取材当時、待機作としてチャン・イーモウ監督の新作「金陵十三釵」(英題:The Flowers of War)が控えていた。本国でも今月16日に公開されたばかりだが、6億元(約72億円)の製作費をかけ、クリスチャン・ベールを主演に迎えた話題の大作だ。ショーンが演じるのは国民党の兵士で、「チャン監督のお誘いで撮影現場を訪ね、特別出演しただけなんです。出番は多くないですよ」という。とはいえ、筆者が動画サイトで同作の予告編を見たことを伝えると、「観たんですね!あの2分43秒(の予告編)は音楽も映像も迫力がありますよね。日本軍大佐(渡部篤郎)とクリスチャン・ベールの短いやり取りが入っていますが、緊張感があってすごい。私も作品をまだ観ていないので、早く観たいです」と、この作品をとても楽しみにしている様子だった。南京事件を背景に展開する同作は、公開は未定ながら日本でも関心を集めると予想されるが、ちゃんと日本人出演者に触れて賛辞をおくってくれる気配りが心憎い。

「日本はすごく好きです!今回、3日間しか滞在できなくて残念。初めて東京国際映画祭にも参加してグリーンカーペットを歩きましたが、ちょうど雨が上がったばかりで清々しく、緑が映えて綺麗でした。リサイクル素材を使っているんですってね。中国でも呼びかけたい試みです」というショーン。これからもどんどん来日して、日本でもファンを増やしていってほしいところ。「金陵十三釵」は現在米ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞にノミネートされているが、中国大陸の俳優には珍しく英語が堪能。今後海外に活躍の場を広げていきたいという思いはないのかという質問には、「もし良い機会があれば必ず」とのこと。“前途洋洋”という言葉がぴったりの、スケール感のある稀有な青年。今後の活躍が楽しみだ。

中国映画週間の舞台挨拶。ドン・ジエ(左 代表作に『至福のとき』)と一緒に

Profile
ショーン・ドウ(竇驍)
1988年、中国・西安生まれ。カナダに移住し、10代をバンクーバーで過ごす。現地の中国語放送局と台湾のコミック・プロダクションが行った芸能界入り登竜門“バンクーバー・サンシャイン・ボーイズ・コンテスト”で優勝。これをきっかけに演技に興味を持ち、08年に北京電影学院に進学する。在学中から学生映画などにも積極的に出演し、『サンザシの樹の下で』のスタッフの目にとまった。待機作には、チャン・ドンゴンとチャン・ツィイー主演、韓国のホ・ジノ監督がメガホンをとる仏映画『危険な関係』のリメイク作品などがある。

(取材・文、撮影=新田理恵)

《DVD情報》
『サンザシの樹の下で』 (※作品情報)
発売元:ギャガ
販売元:TCエンタテインメント
発売日:1月11日
価格:3,990円(税込)
(C)2010, Beijing New Picture Film Co., Ltd and Film Partner (2010) International, Inc. All Rights Reserved.

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