『希望のかなた』紳士淑女録

登場人物について(犬を含む)のささやかな解説

ヴィクストロム=サカリ・クオスマネン

サカリ・クオスマネン

サカリ・クオスマネン

この映画主人公。カウリスマキ映画出演7本目(短編除く)。元レニングラード・カウボーイズのメンバー。カウリスマキ映画の顔である。この人が出てくると、安心感がある。さすがに年を取ったが、もう一人の主人公難民のカーリドを殴り倒すのだから元気がいい。身体は大きいが、不器用で優しい役こそが彼の真骨頂。彼が本作で買い取った寂れたレストランは、どこか『浮き雲』を思い出させるところがあって懐かしい。因みに『浮き雲』での役どころは、レストランのクローク兼ボディガードであった。レストランのオーナー役とは、大出世?である。また、ポーカーがやたら強いという特技は、『パラダイスの夕暮れ』で証明済み。スリーカードなんて朝飯前?なのだ。ポーカーに負け続けたマッティ・ペロンパーがボヤいていたのが懐かしい。


カラムニウス=イルッカ・コイヴラ

勢ぞろい

左からミルヤ、カラムニウス、ニュルヒネン、ヴィクストロム勢ぞろい

『街のあかり』では主人公を窮地に陥れるギャングの親玉を演じ、『ル・アーヴルの靴みがき』では冒頭、組織のお金を持ち逃げし、無残にも殺された人。『ポルトガル、ここに誕生す~ギマラインス歴史地区』の一編『バーテンダー』では、堂々主役だったことから、カウリスマキ・ファミリーの一員として完全定着の予感はあったが、本作では故マッティ・ペロンパーのような格好で登場したのに驚かされた。『バーテンダー』でも不味いスープを作っていたので、本作でも彼が味噌汁を作るべく鍋に向かうシーンでは、残念ではあるが、既に失敗の予感が漂っていた。


ニュルヒネン=ヤンネ・ヒューティアイネン

『過去のない男』の小さな役でカウリスマキ作品デビュー。『街のあかり』で主人公コイスティネンに大抜擢される。その時散々苦しめられたイルッカ・コイヴラと、今回はレストランの同僚ということになっている。『街のあかり』ではちょっと線が細すぎる感じがした彼も、時が経ち少しふっくらしたことで、カウリスマキ映画の住人らしい顔つきになってきた。『街のあかり』で皿洗いは経験済みだが、いかにも不器用そうで、料理人とはいかがなものかと思えば、案の定…。カウリスマキが引退を撤回し、新作を作るのであれば、イルッカ・コイヴラと共に、カウリスマキ映画の顔になっていく予感がする。


収容施設の女性=マリヤ・ヤルヴェンヘルミ

この人も『街のあかり』組。イルッカ・コイヴラと共にコイスティネンを窮地に陥れた、あの魔性の女である。メイクをしないと意外に地味な顔であることが今回わかった。難民のカーリドを気にかけ、そっと手助けをする優しい女性役だったのは、『街のあかり』の罪滅ぼしか?


ヴィクストロムの妻=カイヤ・パカリネン

カイヤ・パカリネン

カイヤ・パカリネン

『過去のない男』では、記憶喪失の男を助ける優しい隣人の奥さん。今回は一転して、アル中で夫ヴィクストロム(サカリ・クオスマネン)に捨てられる妻役。カールを巻いたままの頭で酒を片手に、タバコの煙を吐き、夫が返した結婚指輪を灰皿に投げ捨てるハードボイルドぶりに、思わず笑いが。でも実は、テーブルに置いてある、自分の頭ほどもあるように見えるサボテンが、彼女の気持ちを代弁していたのである。


ミルヤ=ヌップ・コイブ

レストランの3人の従業員の1人。まだ映画出演2作目の新人。大抜擢されただけあって、すでにカウリスマキ映画の住人らしさを漂わせていたのは立派


洋品店の女店主=カティ・オウティネン

カティ

カティのいないカウリスマキ映画なんて

カウリスマキ映画の永遠のヒロイン、ミューズ。本作で11本目の出演となる。洋品店の店員という役どころは『パラダイスの夕暮れ』『過去のない男』以来3度目。ゲスト出演ということでは、『街のあかり』でも『パラダイスの夕暮れ』を思い起こさせるレジ打ちの女で出演したことがある。今回は、短い出演時間ではあるが、「不景気だからみんなお酒を呑みに来るしかないので、レストランは儲かるわ。景気が良かったらもっと儲かるけれどもね」という名セリフを残す。メキシコに去るというセリフが、カウリスマキ作品に別れを告げているかのようで、気になって仕方がない。


犬のコイスティネン=ヴァルプ

ヴァルプ

ヴァルプ

コイスティネンは、『街のあかり』でヤンネ・ヒューティアイネンが演じた主人公の名前。ヴィクストロム(サカリ・クオスマネン)にそれは何だと問われた彼が、咄嗟にコイスティネンと答えてしまうのが可笑しい。演じるのはカウリスマキの愛犬ヴァルプ。『浮き雲』以外、出演しているのはすべて彼の愛犬、しかもすべて血筋が繋がっている。前作『ル・アーヴルの靴みがき』のライカ(二代目)の子供だとすると、もうこれで6代目ということになる。代々雑種で色々な血が混ざっているので、どの犬も親子には見えないのだが。


カーリド =シェルワン・ハジ

サカリ・クオスマネン

シェルワン・ハジ

この作品のもうひとりの主役。カウリスマキ映画ではあまり見かけることがないタイプのいい男。なので、ここでは公式サイトでの紹介を引用するだけにとどめて置きます。
1985年シリア生まれ。2010年にフィンランドへ渡る。2008年にダマスカスのHigher Institute of Dramatic Artsを卒業。いくつかのテレビシリーズに出演した後、2015年にイギリスのケンブリッジにあるアングリア・ラスキン大学芸術学部に進学し、翌年に博士号を取得した。2012年からは演技に加え、彼自身のプロダクションLion’s Lineでショートフィルムの脚本や監督、インスタレーションの制作も行っている。長編初主演となった『希望のかなた』でダブリン国際映画祭最優秀男優賞を受賞。劇中では伝統楽器サズの演奏も披露している。(公式サイトより)


ペーター・フォン・バーグに捧ぐ

 カウリスマキ兄弟と今も続くミッド・ナイトサン映画祭を設立した映画監督、脚本家。カウリスマキ作品では『コントラクト・キラー』の原作者でもあり、アキ・カウリスマキの研究本「アキ・カウリスマキ」の著者でもある。『浮き雲』では、再建されたレストランの最初の客としてゲスト出演もしている。2014年に71歳で亡くなったことから、本作は彼に捧げられた。


『希望のかなた』レビュー
アキ・カウリスマキ映画「紳士・淑女録」
© SPUTNIK OY, 2017
※12月2日(土) 渋谷・ユーロスペース、新宿ピカデリー他にて 全国順次公開

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