【FILMeX】第17回東京フィルメックス、クロージングセレモニー

最優秀作品賞は『よみがえりの樹』チャン・ハンイ監督に!

閉会集合写真11月26日、有楽町朝日ホールで第17回東京フィルメックスのクロージングセレモニーが行われ、コンペティション部門の各賞及びその他の賞が発表された。

受賞結果

【最優秀作品賞】
『よみがえりの樹』(チャン・ハンイ監督/中国/2016年/80分)⇒クロスレビュー
【審査員特別賞】
『バーニング・バード』
(サンジーワ・プシュパクマーラ監督/フランス、スリランカ/2016年/84分)⇒クロスレビュー
【スペシャル・メンション】
『私たち』(仮題)(ユン・ガウン監督/韓国/2015 年/95 分)
【観客賞】
『私たち』(仮題)(ユン・ガウン監督/韓国/2015 年/95 分)
【学生審査員賞】
『普通の家族』(エドゥアルド・ロイ・Jr監督/フィリピン/2016 年/107 分)
【タレンツ・トーキョー・アワード2016】
『ゴー・アショア』モー・ジンジン

授賞理由と受賞者喜びの声

【タレンツ・トーキョー・アワード2016】
『ゴー・アショア』モー・ジンジン

モー・ジンジン

モー・ジンジンさん

「大変光栄に思っております。この賞は非常に励みになると思っております。日本映画は大好きで、東京も初めてだったので、この体験は忘れることがないでしょう。講師他のタレントのみなさんにお礼を申し上げたいです。皆さんのパッションとインプレッションに大変刺激を受けました」

【観客賞】『私たち』(仮題)ユン・ガウン監督

ユン・ガウン「こんばんは。私はユン・ガウンです。とても光栄です。(日本語で)昨日韓国に戻ったのですけれども(青龍映画祭新人監督賞を受賞したため)、このような素晴らしい賞を頂けるという知らせを受けまして、日本に戻ってきました。この映画を作った時には、この物語が観客の皆さんにどんな風に届くのかとても心配し、悩みましたので、この観客賞を受けたことは本当に意味があることだと思っています。観客の皆さんには、大きな勇気と刺激を受けました。本当にありがとうございます」


【学生審査員賞】『普通の家族』エドゥアルド・ロイ・Jr監督

エドゥアルド・ロイ・Jr授賞理由:生まれてくればつきまとう普通という概念について、この映画を通して、私たちはそれが主観的でしかないということに気付かされました。愛や、親が子を想う気持ちは万人共通であり、生まれ育った環境が何であれ、誰もが共通に持つ感情が描かれており、一番世界観にのめり込むことができた作品でした。また、問題提起が含まれるエンターテインメントとしての重要性を感じさせられました。この素敵な映画を通して、自分の中にある普通というものを、改めて考えていただきたい。そう思い、学生審査員賞としました。(かつりかさん・慶應義塾大学卒より発表)

エドゥアルド・ロイ・Jr監督
「スタッフとキャストにお礼を申し上げると共に、情熱と勤勉さで、映画制作の苦労を乗り越えようとしている、すべてのインディペンデント映画作家にこの賞を捧げたいと思います」

【スペシャル・メンション】『私たち』(仮題)ユン・ガウン監督

ユン・ガウン2授賞理由:とても繊細かつシンプルな手法で、子ども達のストーリーを語り気持ちを表現しています。特にクローズアップの子ども達の表情は、多くを語り、我々の心を打ちます。今後が楽しみな若い女性監督を激励する意味で、『私たち』をスペシャルメンションと致しました。(審査員松岡環氏より発表、授与)

ユン・ガウン監督
「また来ました(笑・日本語で)。上映機会を与えて下さったこと、そのうえ、このような賞を頂いたことに感謝いたします。たくさんの予算がなくても、真心を込めて作ればいいんだということ、これは、その励ましと応援のメッセージであるという思いで、この賞状を受け取りました。そんな気持ちをもってまた韓国に帰りたいと思います。スタッフ、キャストのみなさんすべての人にも、この喜びの気持ちを伝えたいと思います」

【審査員特別賞】『バーニング・バード』サンジーワ・プシュパクマーラ監督

(副賞賞金50万円)

 サンジーワ・プシェパクマーラ授賞理由:本作品は、1980年代後半の残虐なスリランカの内戦で負った痛みに対する痛烈な叫びです。夫と義母を失い、それでも力を絞り家族を守ろうと苦戦し、挙句の果てに子供たちからの敬意を失ってしまった、とある女性の視点から描かれています。過去に起きた、ほとんど世間でとりあげられることのなかった出来事ではありますが、現代社会において、むしろ切迫した、今日的に意味のあることとして描かれています。(審査員松岡環氏より発表、パク・ジョンボム監督より授与)

サンジーワ・プシュパクマーラ監督
「フィルメックスで私の作品が上映できたことを大変嬉しく思っています。この映画の制作は、難しく非常に苦しいものでしたが、何とか完成することができました。私の映画に出資した方々にもお礼を申し上げたいと思います。特に私の愛する家族、お母さん、妻にもお礼を申し上げたいと思います。この受賞を1989年の内戦で命を亡くした皆さんに捧げます」

【最優秀作品賞】『よみがえりの樹』チャン・ハンイ監督

(副賞賞金100万円)

ジャスティン・オー授賞理由;映画監督になる前はサッカー選手になりたかったという監督の、オリジナリティーあふれる初の長編映画。中国の片田舎でゆっくりと、しかし痛みを伴いながら村が消えていくという現実を捉えています - しかもそれをセンチメンタルにはさせず、安易なノスタルジーに浸る事もなく淡々と描き出しています。その手法も、男女の性別を超えるという驚くべき展開で、どの場面も強く記憶に焼き付けられます(審査員アンジェリ・バヤニより発表、授与)

ジャスティン・オー(プロデューサー)
「皆さんこんばんは。ありがとうございます(日本語で)私はサッカー選手ではなく、プロデューサーです(笑)まさかこの賞を頂くとは思わなかったので、監督はすでにもう次の映画に旅立っております。そして監督にこの賞を頂いたことを伝えたところ、ティーン・エイジャーみたいに声を無くしておりました。審査員の皆さんにお礼を申し上げたいと思います。まず初めての長編映画ということで、色々と乗り越えないといけないことがありました。幸いにも、映画作りをリードしてくれる方々にも恵まれておりました。製作のジャ・ジャンクー監督はとても厳しかったですが、私たち若い映画作家が学ばなければいけないことを教えてくれました。私はプロデューサーとして、ジャ・ジャンクー監督の主催するウインズ・プロジェクトというものに参加しております。ウインズ・プロジェクトでは、すでに初めての長編映画を撮った監督が7人おります。その中で今まで4人の監督の作品がフィルメックスで上映されました。そして2人の監督が賞を受賞しました。第13回では『記憶が私を見る』が審査員特別賞を受賞し、これが2つ目の賞となります。このプロジェクトに参加することは、良い映画作家への過程にもなっており、意味のあるものとなっております。この賞をジャ・ジャンクー監督と分かち合いたいと思います」

チャン・ハンイ

Q&Aに登壇時のチャン・ハンイ監督

チャン・ハンイ監督(ビデオメッセージ)
「映画祭では数多くの優秀な作品が参加しているなか、僕がグランプリを頂けるとは本当に思いがけないことでした。大変光栄に思っています。東京フィルメックスから次の場所へ移動している途中でこの受賞の知らせを受け、大変嬉しく感激しております。東京フィルメックスの映画界の先輩の方々から頂いたこの映画に対する評価と励ましに感謝し、これからも努力していくことを誓います。そして僕の映画人生におけるとても重要な人ジャ・ジャンクー監督に深い感謝を捧げたいと思います。監督は僕を広い世界に導いて下さり、映画芸術の上で、惜しみない援助と励ましをいただきました。ありがとうございました」

総評:トニー・レインズ審査委員長

総評

ユーモアたっぷりのトニー・レインズ氏

「みなさんこんばんは。オープニングの時に、安倍晋三総理のことについて、何か不謹慎なことを言ったと言われているのですけれども、まったく覚えていません。これから気をつけます。今回の審査会議は、なかなか強い意見が飛び交っていましたが、最終的には、いい結果になったと思っております。これは議論の力だと思います。コンペの中では『仁光の受難』という作品が、突出しておりました。コンペ作品の中で唯一受難というタイトルが付いているのですが、皮肉なことに『仁光の受難』は他の作品と比べると、受難とは程遠い作品なのですね。もちろん真面目に取り組んでいるのですが、むしろユーモアたっぷりのエンターテインメントの作品となっております。この作品は、映画の手法としても新しいことにチャレンジしているところもありますが、あくまで軽い気持ちで観られる作品だと思います。それに比べると、それ以外の作品は重い題材に取り組んでいます。審査員の中では、私か一人が『仁光の受難』を推していましたけれども、他の方たちについては、社会的なテーマを扱っている作品のほうが、心に残っていたのかと思います。今回の映画祭では、観客のみなさんから面白い質問がとんだり、反応が良かったりしたことも嬉しいことでした。だからといって、クール・ジャパン的なイメージはあまりしませんで、とても嬉しく思いました」

林加奈子最後に、林加奈子デイレクターの「奇跡の瞬間がいくつもありました。鋭い質問に監督が大喜びする瞬間が、新しい映画の企画が進む瞬間もありました。皆様にとっても、もっともっと映画を観続けようという強い気持ちを確かめる日々となりましたら、私たちは幸せです。これからも素敵な映画との出逢いが続きますように」という挨拶でセレモニーは締めくくられた。


▼第17回東京フィルメックス▼
期間:2016年11月19日(土)〜11月27日(日)
場所:有楽町朝日ホール・TOHOシネマズ日劇
公式サイト:http://filmex.net/2016/

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