【スウェーデン映画祭】間奏曲

若き日のイングリッド・バーグマンPART2

間奏曲有名なヴァイオリニスト、ホルガーは、永年連れ添った伴奏者、トマスの引退によって、新たな伴奏者を求めている。そんな時、娘の誕生日に招待した、彼女のピアノ教師アニタ(イングリッド・バーグマン)の演奏を見たホルガーは、たちまち彼女と恋に落ちる。それと同時に、彼はアニタの才能も発見し、自分の伴奏者に指名する。コンサート・ツアーで各地を廻り、大成功を収めた2人は、休暇でウイーンを訪れるのだったが、娘と同じ年頃の女の子に、チターを習っているうちに、ホルガーは娘のことを思い出し、故郷に置いてきたものの大きさを感じ始めるのだった…。

ストーリーは、ハリウッドリメイク版の『別離』とほぼ同じなのだが、こちらのほうが、20分以上長い。伴奏者のトマスが、アニタの教師でもあり、大きな影響力をもっていること、常に活動していなければいられないホルガーに対して、トマスが早い段階から異議を唱えていることなど、より存在感が大きくなっている。よくあるメロドラマではあるのだが、故郷に戻り、自宅の小さな庭に種を植え、花が咲く日を心待ちにしているトマスの存在が、単なるホルガーが妻子に対して良心の呵責を抱くということにとどまらず、生き方そのものを考えさせる役目も果たしている。また、アニタは、トマスの助言によって自分の道を歩む決心をするのではなく、別れ際のトマスの言葉を反芻しながら、自分自身でその決心をするなどの違いもあり、ハリウッド版より深みがあるように感じた。物語の転機となる場面で、『第三の男』より10数年前に、チターが使われていたことも大いなる“発見”であった。

『ムンクブローの伯爵』からわずか2年後の作品(21歳になっている)というのに、イングリッド・バーグマンは、大きく変わっている。役柄ということもあるのかもしれないが、あどけなさが消え、その美しさも洗練されてきている。この作品の監督でもあるグスタフ・モランデルが、この間にも2本作品を撮っており、鍛えられたということもあるのだろうか。本作でも、バーグマンが奨学資金の合格通知を前に、ホルガーと別れ、チャンスを活かすべきかどうか逡巡する場面では、正面からカメラを向けしかもかなりの長回しで、彼女に演技させており、またバーグマンもそれに見事に応えて、素晴らしい演技を見せている。なんと情感に溢れた表情をするのだろうか!

この後、グスタフ・モランデル監督は、バーグマンを主演に3本の映画を製作する。そのうちの1本は、2013年のトーキョーノーザンライツフェスティバルで上映された『女の顔』だ。顔に火傷を負い絶望し、犯罪一味の首領に収まり、日々恐喝を糧に生きている女アンナである。ハリウッドに渡ったバーグマンが、単なるスタアというだけでなく、演技派女優として長く活躍しつづける下地は、この時すでに培われていたのかもしれない。

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【スウェーデン映画祭 2016開催概要】

上映時間等詳細は公式サイトでご確認下さい。
ポスター
■開催期間:2016年9月17日(土)〜9月23日(金)
■場所:ユーロスペース(渋谷区円山町1−5)
■主催:スウェーデン映画祭実行委員会
■公式WEBサイト:http://sff-web.jp/
【ご注意】
前売り券は、全ての作品共通の鑑賞券となりますので、前売り券をお持ちの方は、ご来場当日に入場整理券(番号)への引き換えが必要となります。
入場整理券は、当日の午前10時30分から劇場窓口にて引き換えいたします。
前売り券の有無や購入日は入場整理番号には影響いたしません。
※前売り券は3回券のみの販売になります。また、上映日時や座席の指定はできません。
※上映開始10分前より整理番号順にてご入場いただきます。
※満席になりますと、前売り券をお持ちでもご入場いただけませんのでご注意ください。

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