【スウェーデン映画祭】ムンクブローの伯爵

若き日のイングリッド・バーグマンPART1

ムンクブローの伯爵宝石店の泥棒が街を荒らしている中、見慣れない顔の男が、ムンクブロー伯爵が住むホテル(木賃宿)にふらりとやってくる。彼は一体何者なのかというミステリーをたて糸に、ムングロー伯爵を初めとするホテル(木賃宿)の住人たち(実は酒の密輸をしている)の友情を描いている。光と影を使った、ミステリー映画風の出だしから一転、ストックホルムの下町の「長屋紳士録」とでも言いたくなるような、牧歌的な喜劇になるのが楽しい。昼間から飲んだくれる2人組み、ムングロー伯爵と魚屋の雇い人の芝居が、漫才コンビのようである。魚屋の発する「ヒャッヒャッヒャヒャ」っていう笑い声が何とも印象的で耳に残る。

 スウェーデンでは、大恐慌の影響による経済的危機が1931年に頂点に達したものの、35年辺りから立ち直りを見せていく。丁度その頃製作されたこの作品には、経済危機の傷跡と、これから社会が良くなっていくのだ、という希望のようなものがゴチャ混ぜになっている感じがする。ラスト・シーンは喜びに溢れていた。

 イングリッド・バーグマンの役は、ムンクブロー伯爵と仲間たちの友人役で、同じホテルに住んでいる若い娘。余所からやってきた謎の男に、恋心を抱く。これがデビュー作。19歳のバーグマンの初々しいこと。「彼女は美しく、彫刻のような顔立ちの娘だ」と、ストックホルムの新聞でいち早く注目されたというのだが、まだ顔もふくよかで、ぽっちゃりした感じがする。いかにも下町の娘という感じでチャキチャキしており、後年のバーグマンとは違った一面が楽しめる。最初の登場シーンが、いきなり下着姿なのにはドキッとしてしまったが、とにかく可愛い。

 長屋の群像劇といった中身のため、登場場面は全体としては少ないが、謎の男と絡むということもあり、印象はとても強い。冴えない住人たちの中でその存在は、あまりにもまぶしすぎるのである。ピアノを弾いて歌を唄ったり(結局彼女は、最初の作品である本作、ハリウッド最初の作品『別離』、生涯最後の作品『秋のソナタ』でピアノを弾いたことになる)、宝石泥棒の一味と格闘したり、優雅というよりは、若さに溢れ、活発なイメージが瞼に残った。

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【スウェーデン映画祭 2016開催概要】

上映時間等詳細は公式サイトでご確認下さい。
ポスター
■開催期間:2016年9月17日(土)〜9月23日(金)
■場所:ユーロスペース(渋谷区円山町1−5)
■主催:スウェーデン映画祭実行委員会
■公式WEBサイト:http://sff-web.jp/
【ご注意】
前売り券は、全ての作品共通の鑑賞券となりますので、前売り券をお持ちの方は、ご来場当日に入場整理券(番号)への引き換えが必要となります。
入場整理券は、当日の午前10時30分から劇場窓口にて引き換えいたします。
前売り券の有無や購入日は入場整理番号には影響いたしません。
※前売り券は3回券のみの販売になります。また、上映日時や座席の指定はできません。
※上映開始10分前より整理番号順にてご入場いただきます。
※満席になりますと、前売り券をお持ちでもご入場いただけませんのでご注意ください。

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