ロビン・フッド

フィクションと史実を巧みに絡めた、壮大な歴史スペクタクル

ラッセル・クロウとケイト・ブランシェット。この2人は筆者の好きな男優&女優№1だ。この№1同士の組み合わせの映画であれば、これはもう絶対に見逃すわけにはいかない!・・・と、本作が今年のカンヌ国際映画祭のオープニングを飾った時から鼻息を荒くして、日本での公開を待ちわびていた。リドリー・スコット監督の下、2人が挑んだのは、12世紀末イングランドの伝説上の人物であるロビン・フッドとその恋人マリアンだ。

本作でのラッセルは、『ワールド・オブ・ライズ』(08)のような著しくデブ化したラッセルではなく、心の底から安堵した。筆者の好み具合の精悍なラッセルに戻っていて(よほど体を絞り込んだのであろう。腹筋がきちんと割れていた・・・感激)、ラッセル本来の男臭い色気にクラクラしまくりだった。また、ケイトの気品溢れる美貌を『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(08)以来、拝むこともできて、素直に嬉しかった。

そして何と言っても、ラッセルとケイトの初顔合わせのカップルぶりが予想以上にしっくりしていて、嬉しい驚きだった。2人の軽妙な掛け合いや、反発しながらも次第に惹かれ合う様子には、ついついニンマリ。それに、ロビンがマリアンに「愛している」と告げるシーンといったら!愛の言葉を噛みしめるように発するラッセルに、こちらはもうメロメロ。終盤のイングランド軍とフランス軍の、スピード感のあるド迫力の戦闘シーンには、手に汗を握りつつ、イングランド軍に加わったラッセルとケイト、もとい、ロビンとマリアンはどうなるのっ!?とドキドキものだった。激しい戦闘のなかで2人が交わす熱い口づけに、もう目が釘付け。冷静に考えれば、周りではまだドンチャン戦っているのにそんなことしている場合か!とツッコミを入れるべきなんだろうが、2人にあまりにも感情移入してしまい、筆者のボルテージも最高潮でツッコミどころではなかった。これだけでもう、当初の鑑賞目的は十分に達せられて、大満足の作品だった。

・・・と、興奮のあまり、思わず断言してしまったが、本作の見どころは、ラッセルの色気とケイトの美貌以外にもある。ロビン・フッドを主人公にした物語は、過去にも何度か映画化されている。最近では(とは言っても1991年の映画だが)ケビン・コスナー主演作が代表格に挙げられるだろうか。
ただ過去の作品と本作が決定的に異なるのは、“彼”がいかにしてロビン・フッドになったのか?というロビン・フッド誕生物語というフィクションと、イングランドの史実を巧みに絡め、壮大な史劇スペクタクルに仕立て上げたことだ。これは筆者のような歴史ファン(特に英国王室ファン)からすれば、予定外の胸高鳴る展開だった。波瀾万丈の人生を送った女傑アリエノール・ダキテーヌやその息子リチャード獅子心王やジョン王、ジョン王の2番目の妃イザベラなど、実在のイングランド王室の人々が登場し、ロビンの人生に関わりを持つ筋書きなのだから、何ともよく練られた映画だと唸らされた。

ちなみに蛇足であるが、アリエノールとは、『冬のライオン』(68)でキャサリン・ヘップバーンが演じたエレノアのことである(アリエノールを英語読みするとエレノアになる)。この作品ではエレノア、夫ヘンリー2世(ピーター・オトゥール)、息子リチャード(アンソニー・ホプキンス)ら家族の確執が描かれているが、本作でアリエノールやイングランド王室に興味を抱かれた方は、『冬のライオン』もご覧になるのも一興かと思う。

物語は1199年、リチャード王(ダニー・ヒューストン)が十字軍遠征の帰途、戦死するシーンから始まる。ロビン・ロングスライド(ラッセル)はイングランド軍に従軍していたが王の側近く仕える政治家や騎士ではなく、一介の傭兵。王の訃報を聞いても悲しむわけでもなく、戦場から仲間と共にさっさとずらかろうとする。ところが帰途で、王弟ジョン(オスカー・アイザック)の乳兄弟ゴドフリー(マーク・ストロング)が、王宮へ王冠を届ける騎士団を襲撃する現場に遭遇してしまう。瀕死の重傷を負った騎士ロバート・ロクスリー(ダグラス・ホッジ)はノッティンガムにいる父ウォルター(マックス・フォン・シドー)に剣を届けてほしいとロビンに遺言。ロビンは遺言に従い、ノッティンガムへ向かい、ロバートの妻マリアン(ケイト)と出会う。さらにロバートの父ウォルターは、ロビンに死んだ息子のフリをしてほしいと懇願し、ロビンはノッティンガムに留まることになる。
同じ頃王宮では、ジョンが即位し、愛人イザベラ(レア・セドゥ)を正式の王妃にし、あれこれ指図する母后アリエノール(アイリーン・アトキンス)を疎み、忠実な摂政マーシャル(ウィリアム・ハート)を退け、ゴドフリーが権勢を振るう。だがゴドフリーの目的は、フランス王と共謀し、イングランドを乗っ取ることだった。

12世紀末から13世紀にかけてのイングランドは、十字軍の遠征、諸侯の内紛や貧困、フランスの脅威などで混乱し、国家としての機能は失われていた。マリアンも騎士の奥方なのに日々の食事にも事欠く有り様。ロビンも彼女の困窮ぶりに心を痛め、手を貸すことから2人の間に親密な空気が流れるようになる。だが、王の名の下による厳しい税の取り立てに、国中の諸侯のジョン王への不満は募るばかりだった。映画ではその混乱に乗じて、ゴドフリーの手引きによりフランス軍がイングランドへ攻めてくる。ロビンはイングランド軍の先頭に立ち、フランス軍とゴドフリーとの戦いに向かうのだ。

この間、ロビンはウォルターから出生の秘密を聞くことになる。史実では1215年に、ジョン王の権限を制限し、法の下での人民の自由を保障したマグナ・カルタ(大憲章)が発表されるのだが、ロビンが戦いを前にして、王や集結した諸侯に対して、万人の平等な権利を訴えるシーンは、胸が熱くなる。なぜロビンが、そのような演説ができたのかということは、ウォルターから聞いた自身の生い立ちに深く関わっているのだが、彼の演説が、後にマグナ・カルタの誕生に繋がっていくという過程は、フィクションと分かっているとはいえ、心躍った。何とまあ、巧妙に伝説と史実を組み合わせたものか、と感嘆しきり。マグナ・カルタと言えば、歴史の教科書でも太字で登場するくらい、世界の歴史においても重要なファクターではないか。その誕生にロビンが密接に関わっていたというのは、歴史ロマンに溢れている。そして、実際に猜疑心や嫉妬心の強かったジョン王の性格を考えると、なぜロビンが“アウトロー(無法者)”ロビン・フッドとなったのかというのにも、納得の結末だった。

もちろん、実在の人物に関しても、史実と異なる描写も見受けられる。例えばジョン王の2番目の王妃になったイザベラは、映画のように愛人から王妃に格上げされたわけではなく、12歳でジョンと結婚している(ただし、イザベラにはフランスに婚約者がいて、ジョンが彼女を略奪したかたちになっている)。だが、そのような違いは本作にとっては些細なことであろう。ロビン・フッド誕生物語とイングランドの歴史を絡めたドラマチックな展開は、とても魅力的だし、決して荒唐無稽とは思えない説得力を持っていた。

ラッセルやケイトの魅力にノックアウトされ、2人の恋愛模様に心ときめかせ、圧巻の戦闘シーンに興奮し、歴史のロマンに思いをはせる。まさに最高級の娯楽大作と言えよう。映画の醍醐味がぎっしり詰まった作品である。

Text by:富田優子
オススメ度:★★★★★

原題:Robin Hood 製作国:アメリカ 製作年:2010年
監督:リドリー・スコット
脚本:ブライアン・ヘルゲランド
出演:ラッセル・クロウ、ケイト・ブランシェット、マックス・フォン・シドー、ウィリアム・ハート、マーク・ストロング、オスカー・アイザック、ダニー・ヒューストン、アイリーン・アトキンス、マーク・アディ、マシュー・マクファディン、ダグラス・ホッジ、レア・セドゥ
配給:東宝東和
公式サイト
12/10(金)より全国ロードショー
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