トーキョーノーザンライツフェスティバル2013ガイド
トーキョーノーザンライツフェスティバルが今年も開催される。2013年2月9日(土)から2月15日(金) に渋谷のユーロスペースにてJAPAN PREMERE5本を含む14作品が上映される他、アート、音楽など関連イベントが約1ヶ月半にわたって行われる。今年で3回目となる映画祭には、クラシック部門が加わり、対象地域もバルト三国にまで広がるなど、さらなる進化を遂げている。北欧食文化に注目が集まり、ムーミン人気が再燃するなど北欧ブームがさらなる盛り上がりを見せている今、このイベントを通して、日本に居ながらにして北欧を感じられる幸せを満喫してみませんか。
「ニコラス・ウィンディング・レフン監督特集」(デンマーク)
~マッツ・ミケルセンファンは必見!『ブリーダー』~
『ドライヴ』でカンヌ映画祭監督賞に輝いた、ニコラス・ウィンディング・レフン監督の初期の日本未公開作2作品が上映されるのは、本映画祭のひとつの目玉である。『ブリーダー』(99年)は、『プッシャー』(96年)でカルト的人気を得た彼が、同映画の主演であるキム・ボドゥニアとマッツ・ミケルセン(『プッシャー』は彼のデビュー作)を再び起用した監督第2作。主人公たちの設定が映画マニアでビデオ屋の店員ということもあり、監督自身の映画の趣味なども窺い知ることができそうだ。それとオタクっぽいマッツ・ミケルセンなんて、ファンにはとても気になるはず。もう1本は3作目となる『Fear X』 (03年)こちらは、レフン監督初の英語作品で、ジョン・タトゥーロ、デボラ・カーラ・アンガーなどが出演している。『ドライヴ』の原点を体験する貴重なチャンスだ。
「ノルウェー映画の新しい風」(ノルウェー)
かつてノルウェーは、映画の空白地帯だった。極端な話『卵の番人』(95年)のベント・ハーメル監督が現れるまでは、国際的に有名な作品というのは、なかったに等しい。そんなノルウェーから続々と新しい才能が現出している。最初にその兆候が現れたのは97年。3人の個性的な監督が世に出、ノルウェーブと称された。昨年の映画祭で『ネクスト・ドア/隣人』が上映されたポール・シュレットアウネ監督は、そのうちの一人。人の深層心理に迫るサイコ・ミステリーが得意で、その評価も高い。今年は、彼の最新作『チャイルドコール呼声』 (11年)が1回限りプレミア上映される。主演の『ミレニアム三部作』のノオミ・ラパスにも注目したい作品だ。
他に、11年製作の『キング・カーリング』は、リタイアした元カーリングの名選手が再び試合に挑むスポーツ人情コメディ。同年『真実の恋』は10歳の女の子の苦くて甘い初恋物語。昨年はノルウェーブの先駆者マウリス・ホルスト監督『孤島の王』が日本で公開され、今年はアカデミー賞外国語映画賞に『kon-Tiki』がノミネートされるなど進境著しいノルウェー映画界。97年に始まったノルウェーの新しい波が、01年のノルウェー・フィルム・ファンドの設立によって実を結び、さらなる新しい才能を生み出しているようだ。今回は、ジャンルの違う最新のノルウェー映画が上映されるので大いに楽しみである。
「再発見!北欧映画の古典」(デンマーク/スウェーデン)
昨年好評だった、柳下美恵さんの伴奏によるサイレント映画の上映が、今年も実現した。作品は、昨年の『魔女』に続いてベンヤミン・クリステンセン監督の『密書』(14年)が上映される。これは彼が製作、脚本、監督、主演を兼ねた監督デビュー作である。光と影のコントラストが生み出すミステリアスな雰囲気のサスペンス映画で、この1作でベンヤミンの名は世界的に知られるようになった。アメリカでも配給され、大ヒットしたという記録も残る貴重な作品だ。
「ダーグル・カウリ監督特集」(アイスランド)
「バルト三国の映画」
なぜバルト三国か。そんな疑問を持った方もいるはず。ひと言で言えば、バルト海こそスウェーデンの歴史そのものだからなのである。いわばバルト海はバイキングの故郷と言ってもいい。17世紀、スウェーデンはバルト三国の辺り(現在のラトヴィア、エストニア)までをその領土としていた。そういった意味でも、ここは北欧とは縁の深い土地である。北欧からバルト海周辺の国々へ。映画祭が今後どのような広がりを見せていくのか楽しみである。
今回は、バルト三国の映画として2作品が上映される。『杉浦千畝の決断』 (99年)杉浦千畝はナチスの迫害から逃れたユダヤ人難民6000人の命を救った外務官僚。この話は「命のビザ」と称され、日本ではあまりにも有名なのだが、その舞台となったのは、リトアニアだったのである。これはアメリカで制作されたドキュメンタリーだ。もう1本は『マッティ・キュット短編集』彼は、エストニアのヤン・シュヴァンマイエルと呼ばれているとのことである。
「新作・注目セレクション」(スウェーデン/フィンランド)
『サウンド・オブ・ノイズ』 (10年/スウェーデン)
2010年カンヌ国際映画祭ヤング批評家賞最優秀劇映画賞を受賞した本作は、今回の映画祭で最もユニークで楽しい作品かもしれない。銀行など街のあちらこちらの施設に出没する6人組の音楽テロリストたち。彼らの目的は、金を奪うことではなく、音楽でその場を乗っ取ることだ。楽器はその場にあるものを何でも使う。スタンプやシュレッダーなどおよそ楽器になりそうもないものがアンサンブルを産み、音楽が作り出されていくという、まさに奇想天外な作品である。
『サイレンス』(11年/フィンランド)
12年のフィンランド映画祭で上映され、好評を博した作品。1944年のフィンランド・ソ連戦線が舞台。サカリ・キルヴァイネン監督は、「『サイレンス』を作るに至っては、『火垂るの墓』『おくりびと』から影響を受けた」と、同映画祭で語っているのだが、作品のどの部分にその影響が見られるか、そんなところに注目して観るのも面白いかもしれない。
☆関連情報「【フィンランド映画祭2012】月からナチスが攻めてきた?! 話題のトンデモ映画『アイアン・スカイ』で開幕」
今年も、内容盛りだくさん、魅力いっぱいの「トーキョーノーザンライツフェスティバル2013」スケジュールの詳細、イベント、最新ニュースについては、下記公式サイトでぜひご確認ください。
公式サイト::トーキョーノーザンライツフェスティバル 2013