『マリリン 7日間の恋』ミシェル・ウィリアムズ来日記者会見

マリリンに“映画を気に入ってくれたかしら?”と訊ねたいわ

ミシェル・ウィリアムズ

世界のセックス・シンボルと謳われた伝説的スター、マリリン・モンローが亡くなって、今年で50年。リアルタイムでの彼女を知らないとしても、遺された映画や写真から伝わるその輝きは、今も私達を魅了してやまない。
『マリリン 7日間の恋』は、1956年に英国の名優ローレンス・オリヴィエと『王子と踊り子』で共演するために渡英したマリリンと、オリヴィエの第3助監督コリン・クラークとの秘やかで淡い恋の行方を描いた作品だ。本作でマリリンを演じたミシェル・ウィリアムズが、プロモーションのため初来日。3月14日に帝国ホテルで記者会見が行われた。

『ブロークバック・マウンテン』(05)、『ブルーバレンタイン』(10)、そして本作と、これまでアカデミー賞3回のノミネート経験のある実力派女優ミシェル。日本語も少し勉強したということで、「コンニチハ、ゲンキ?」と少しはみかみながら挨拶。ファッションアイコンとして常に注目される彼女の装いは、バレンティノの赤のドレスに、ジョゼッペ・ザノッティの靴。服選びのポイントは「自分が心地良いと思うものを選ぶこと」で、赤のドレスがミシェルの白い肌によく映える。顔も小さくて、ショートヘアもとてもよく似合っていて、取材する側のテンションも上がってくる。

 ミシェルは本作で素晴らしい演技と歌声を披露しているが、「マリリンの出演作を何度も観ました。それは映画に限らず、彼女のテレビやラジオの出演作、今でも観られるもの、聞けるもの全てです。なかでも『帰らざる河』(54)のパフォーマンスや声の使い方が素晴らしくて、特に参考にしました。撮影まで10ヶ月程度の準備期間がありましたが、歌の練習にかけたのは3週間から1ヶ月くらい」というリサーチぶりを明かした。また、マリリンを演じることにあたり外見的アプローチ、演技面での工夫についての質問には、「私の役作りは(演じるキャラクターの)内面、外面の双方から、同時にアプローチをしていくんです。それは自転車の前輪と後輪の関係と同じように、常に2つのバランスをとらないといけないと思っています。ただ、大切なのはリサーチから学ぶこと、そして見たり、聞いたり、感じたりしながら、その過程でマリリンが私のなかで自然に形づくられるような役作りをしていきました」。

また、最も好きなマリリンの出演作として、『お熱いのがお好き』(59)を挙げたミシェル。その理由を「彼女が最高の状態のときに撮影した、最高のパフォーマンスだったと思います。でも、一つだけ選べというのは苦渋の選択です。彼女のステキな映画はたくさんあるから。ただ、『お熱いのがお好き』は何度繰り返し観ても飽きない映画」。そのコメントに納得のファンも多いことだろう。

 記者会見に出席して改めて感じたのは、実際のマリリンとミシェルは、特別似ているわけではない。でも、映画でのミシェルは、マリリンそのものだった。ただ、本作で彼女はマリリンの単なるそっくりさんになったわけではなく、マリリンの繊細な内面を理解して、見事に表現し、それが外見にも滲み出たのではないだろうか。実際にミシェルは「マリリンをリサーチするにつれて、彼女がいかに真剣に物事に取り組んでいたのかということを実感しました。そしてデリケートで、思いやりがあって、寛大で、深い悲しみを抱えていたことに驚いたの」と語ってくれた。

そのようにマリリンの内面深くまでを理解しているミシェルだが、もし、マリリンが生き返って本作を観たら何て言ってもらいたいか?と訊ねられると、「あまりにも畏れ多くて答えられないわ。逆に彼女に“Do you like it?”(映画を気に入ってくれたかしら?)と聞きたいとは思いますが」とあくまで謙虚。また、実際のマリリンの「(寝るときに着るのは)シャネルの5番よ」という名言になぞり、ミシェルは何を着て寝るのかという問いに、「秘密。世界のごく限られた数人しか知らないことなの」と苦笑する一幕も。ちなみに、その名言が誕生したのは、奇しくも会見場所の帝国ホテル。1954年にマリリンがジョー・ディマジオとの新婚旅行で初来日した際に宿泊し、記者会見も行った場所で「魔法にかかったような、幸福なめぐり合わせ」とミシェルも感慨深げだった。

ミシェルの今回の来日目的は、映画PRの他にもう1つ。東日本大震災にショックを受けた6歳の娘さんからの義援金だ。娘さんが「日本のために何かできることは?」と考えていたときに、ミシェルが「お手伝いしてお小遣いをつくって、ガラスの瓶に貯めたらどう?」と提案。娘さんは一生懸命お手伝いをして、そのガラスの瓶がお小遣いでいっぱいになったので、それを娘さんから託されていたのだ。普段はミシェルが留守にするとがっかりする娘さんだが、今回の来日が決まったときは、非常に喜んだそう。そんな温かく一途な思いに溢れた義援金は、配給元の角川映画を通して、東日本大震災ふくしまこども寄付金に送られる。

花束贈呈役の西山茉希(左)は「ミシェルさんと直接会えて嬉しい」

記者会見当日の東京は、これまでの厳しい寒さに比べれば温かくて、まるでミシェルが春を連れてきてくれたかのよう。本作でも、彼女がスクリーンに登場するやいなや映画が輝き出し、映画の体温が上がったことが感じられた。それを目撃できることは、映画ファンとしてはとても幸せな瞬間。そして、ミシェルのマリリンの役作りへの思いを感じながら、ぜひ映画館で見ていただきたいと思う。

『マリリン 7日間の恋』は3月24日(土)から全国で公開。

文:富田優子/写真:鈴木こより


▼作品情報▼
原題:my week with Marilyn
監督:サイモン・カーティス
脚本:エイドリアン・ホッジス
原作:コリン・クラーク 「マリリン・モンロー 七日間の恋」(新潮文庫刊)
出演:ミシェル・ウィリアムズ、ケネス・ブラナー、エディ・レッドメイン、ジュリア・オーモンド、ダグレイ・スコット、ドミニク・クーパー、エマ・ワトソン、ジュディ・デンチ
配給:角川映画
公式サイト:http://marilyn-7days-love.jp/
(c) 2011 The Weinstein Company LLC. All Rights Reserved.


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