【FILMeX】第26回東京フィルメックス授賞式

最優秀作品賞『サボテンの実』、審査員特別賞は内山拓也監督『しびれ』に

11月29日、有楽町朝日ホールにて第26回東京フィルメックスの授賞式が行われ、コンペティション部門の各賞及びその他の賞が発表された。最優秀作品賞は『サボテンの実』が受賞したほか、『しびれ』が審査員特別賞、スペシャル・メンションには『枯れ葉』が、観客賞には『左利きの少女(原題)』が選ばれた。日本映画の審査員特別賞受賞は第21回の『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』池田暁監督以来5年ぶりとなった。

今回のコンペティション審査員は、『記憶が私を見る』(2012)のソン・ファン ( 中国 / 映画監督 )、『煙突の中の雀』(2024)のラモン・チュルヒャー( スイス / 映画監督 )、『盗まれた男』(2007)のマティアス・ピニェイロ(アルゼンチン / 映画監督 )だった。

最優秀作品賞 (副賞 賞金70万円)

『サボテンの実』ローハン・パラシュラム・カナワデ監督
(インド、イギリス、カナダ / 2025 / 112分 )

発表は審査員のラモン・チュルヒャーから行われ、その理由については「抑圧と宗教的厳格さに特徴づけられる社会のなかで、二人の青年が繊細な距離を縮めていく姿を描いた作品です。この旅路は、繊細な脚本と緻密な映像言語によって導かれ、この作品の静かなささやきは、誰もが自由に呼吸できる世界への力強い叫びへと昇華しています」とコメントした。

カナワデ監督は映画の公開のためロサンジェルスに滞在中で、登壇は叶わなかったが、ビデオメッセージで「受賞の知らせにとても喜んでいます。審査員のみなさん、「サボテンの実」を最優秀賞に選んでいただきありがとうございます。この栄誉を謹んでお受けします。映画祭にもこの作品を上映くださりありがとうございます。観客のみなさんが、この映画で私たちの作品の体験を楽しんでいただけたらと願います。」と喜びの声を伝えた。

審査員特別賞(副賞 賞金30万円)

『しびれ』内山拓也監督
(日本 / 2025 / 118分 )

©️2025「しびれ」製作委員会

発表は審査員のマティアス・ピニェイロから行われ、その理由について「審査員特別賞は、バランス感覚を体現する作品に贈られます。沈黙と家庭内暴力に満ちた人生を凍える空気の中で呼吸しながらも、撮影される身体の動きから独特の温もりを引き出す映画です。荒削りでありながら感動的な本作の感情は、不確実性を受け入れる過激な映像的視点から生みだされています。それは呼吸を、遠くにそして近くに、静寂と変化の中で、柔らかくそして硬く、わたしたちに生き延びる姿を共有させてくれます。」と述べた。

内山拓也監督は「全員の名前をあげる時間をいただけないので、それが大変悔しいというか心苦しいのですが、全てのスタッフ、キャストの美しい仕事を誇りに思っています。また、これまで私の人生に携わってくれた全ての方々に感謝申し上げます。この映画は私の個人的な経験に根差している映画で、田舎の貧困層に生きる1人の少年の姿を映し出しながら、経済的なことのみならず、社会のあらゆる階級に生きる心の貧困の存在、その存在に光をあて、祝福することを目指しました。国内外問わず、様々な状況下の中であらゆる方々が生きていると思うけれども、そういった方々が心穏やかに映画を楽しめる世の中に少しでもなることを心から願っています」と喜びの気持ちを伝えてくれた。

スペシャルメンション

『枯れ葉』アレクサンドレ・コベリゼ監督
(ドイツ、ジョージア / 2025 / 186分 )

審査員のソン・ファンからその理由とともに発表された。「この作品の独創性と探究精神に深く感銘を受けました。独自の創造的視点、詩的な映像言語、そして瞑想的ともいえる物語の語り口によって、本作は映画がもつ純粋な魅力を提示してくれています」

学生審査員賞につづいてビデオメッセージでアレクサンドレ・コベリゼ監督は「もし次回作がフィルメックスで上映されることになれば、今度は私もその場に行けるように願っています。もちろん、審査員のみなさんスペシャルメンションありがとうございます。光栄です。みなさん良い夕べを!」と改めて挨拶をした。

学生審査員賞

『枯れ葉』アレクサンドレ・コベリゼ監督
(ドイツ、ジョージア / 2025 / 186分 )

学生審査員の熊谷萌花さん、永山凛太郎さん、Paula GEORGIEVNAさんが登壇、賞と選出理由の発表が行われた。「Lo-Fiな映像によって絵画のように形や色が立ち上がる美しさ。その中に存在する人、動物、車が奥行きを感じさせる。何かが映っている、動いている、それを見ることが映画なんだと思わされました。」

アレクサンドレ・コベリゼ監督は、既に日本を離れていたため、ビデオメッセージで喜びを明かした。「学生審査員のみなさん、ありがとうございます。私自身少し前まで学生だったので大変光栄です。卒業したのは5年前です。ある意味学生のように映画について学び続けています。ですから良いつながりだと思います。そして若い人たちが私の作品を気に入ってくれたのは良かったです。ありがとうございます。」

観客賞

『左利きの少女(原題)』ツォウ・シーチン監督
(アメリカ、イギリス、フランス、台湾 / 2025 / 108分 )

(c)2025 LEFT-HANDED GIRL FILM PRODUCTION CO., LTD ALL RIGHTS RESERVED

ツォウ・シーチン監督も登壇が叶わなかったが、ビデオメッセージでその喜びを伝えた。
「まずは東京フィルメックスに感謝します。そして、『左利きの少女』を受け入れてくださった観客の皆様にも感謝いたします。この物語は台北での思い出から生まれました。東京でも共感していただけたことに、心から感謝しています。どうもありがとうございます。」

※レビュー:台湾へのラブレター

総評

左からマティアス・ピニェイロ、ラモン・チュルヒャー、ソン・ファン

セレモニーの締めくくりに、国際審査員を代表して、ラモン・チュルヒャーから総評があった。「素晴らしい時間を我々も過ごすことができ、非常に豊かな多様性を持ったアジア映画を旅することができました。また、本当に、それぞれの作品のユニークな声、アーティスティックな個性と出会ったことも素晴らしく、人生における光のみならず、闇や影、両方が描かれている作品が多かったように思います。これもまた非常に重要なことだと思う。授賞式がもうすぐ終わるということで、あとはクロージング映画を楽しみながら、そしてまた来年ここで会えることを楽しみにしつつ、やっぱり最高の芸術であるこの“シネマ”というのを共に祝福できれば、という風に思います。」

タレンツ・トーキョー・アワード

東京都、アーツカウンシル東京、タレンツ・トーキョー実行委員会の共催、およびベルリン国際映画祭との提携、ゲーテ・インスティトゥート東京の協力によるこの事業として11月24日から11月30日の7日間にわたり、アジアから17名の映画の未来を担う人材が参加。11月28日には自身の企画を発表する公開プレゼンテーションが行われ、その審査結果を経て、『Luzonensis and Floresiensis』グレン・バリット監督が「タレンツ・トーキョー・アワード」に選ばれた。
グレン・バリット監督は「この素晴らしいプログラムに参加させていただいたことを感謝しております。この経験は一生忘れることはないと思います。またこの賞ですけれども、一緒に参加した皆さんと分かち合いたいと思っております。この賞を母に捧げたいと思っております」と感謝の気持ちを伝えた。

第26回 東京フィルメックス 開催概要

会期:2025年11月21日(金)〜 11月30日(日) (全10日間)
会場:有楽町朝日ホール ヒューマントラストシネマ有楽町
プレイベント:第26回東京フィルメックス 「香港ニューウェーブの先駆者たち:M+ Restored セレクション」
会期:2025年11月14日(金)- 11月18日(火)
会場:ヒューマントラストシネマ有楽町
主催:特定非営利活動法人東京フィルメックス
共催:朝日新聞社
東京フィルメックス公式サイト

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