【TIFF】映画が生まれるとき(ユース)
上映前には西川監督だけでなく、プログラミング・ディレクターの市山尚三氏なども登壇し、本映画祭がこの取り組みをいかに重要視しているかということが窺えた。西川監督も「一度は断ったが、とても良い機会をいただけたと思っている」とこのプロジェクトを絶賛。個人的にも、この「TIFFティーンズ映画教室」は大変有意義だと感じたし、レベルの高さに正直驚かされた。
今回、大田区の中学生が夏休みに8日間かけて作成した3本のショートフィルムが紹介された。映画に出演した経験があるという子もいれば、映画はほとんど観たこともないという子もいて、バックグラウンドはさまざま。それでいて、みんな初対面。初日はお菓子を食べるだけで何も決まらなかったというチームもあったそうだ。
だが出来上がった作品は、お世辞ぬきでどれも素晴らしく面白かった。一体どんな魔法を使ったんだろうと思ったが、西川監督も子どもたちの自由なひらめきと創造力を絶賛していた。
メイキングを見ると、たしかに子どもたちは自分たちでアイデアを出し合い、試行錯誤を繰り返して、楽しそうに真剣に作っている。伸びやかで自由な感性に溢れていた。そこに西川監督が所々ポイントでアドバイスを与えるという具合だ。
私見だが、最近の子どもはSNSを日常的に使っているせいか、動画の撮影や編集についても、こなれているという感じがした。
このプロジェクトで大切なのは「面白い」「面白くない」という他人の評価ではなく、仲間とのコミュニケーションを恐れずに意見を出し合って、いかに「冒険」するかである。
「短篇映画というのは人生に例えると、いわば子供のような、まだ一番初めの段階です。そこで、リスクを冒さないというのはとても嘆かわしいことです」。これはフランスの俳優マチュー・アマルリックの言葉であるが、今回の取り組みを見て、この言葉を思い出した。
この体験が彼らの今後の人生にどう影響を与えるのかと想像しただけでもワクワクする。これからも貪欲にチャレンジをして、未来の映画作家、俳優、スタッフ、はたまた映画ファンとなり、この業界を盛り上げていってくれればと期待せずにはいられない。
※東京国際映画祭(11月3日)では西川美和監督ほか、このプロジェクトに関わられた大人のスタッフ、中学生が登壇し、メイキング映像と3本の短編作品「あなたの夢は美しい」、「XX(ばつばつ)プロジェクト」、「編集後記」が紹介されました。
(参考)
マチュー・アマルリック、トークイベントで「映画にはリスクを!」と語る
第37回東京国際映画祭
会期:令和6年10月28日(月)~11月6日(水)
会場:シネスイッチ銀座、丸ノ内TOEI(中央区)、角川シネマ有楽町、TOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ 日比谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、丸の内ピカデリー、有楽町よみうりホール、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場、LEXUS MEETS…、東京宝塚劇場(千代田区)ほか、都内の各劇場及び施設・ホールを使用
公式サイト: https://2024.tiff-jp.net/ja/