『スターシップ9』アテム・クライチェ監督

SF映画というジャンルありきではなく、人間のストーリーとして丁寧に描きました。

――5年前に私はスペインのキケ・マイジョ監督にインタビューをしたことがあります。マイジョ監督の作品で、ダニエル・ブリュールさん主演の『EVA <エヴァ>』の日本公開時に、マイジョ監督が来日された機会に取材させて頂きました。『EVA』もSF映画だったのですが、マイジョ監督は「『EVA』がスペインで初めてのSF映画で、スペインにはSFをつくる雰囲気がこれまでなかった」とおっしゃっていたのがとても印象的だったのですが、今回、クライチェ監督が本作をつくられたということは、スペインでもSFに目を向ける映画の作り手が増えているのでしょうか?

HC:『EVA』は本当に素晴らしい作品ですよ!スペイン国内でも高く評価されましたしね。ただ残念ながらスペインでのSF映画をつくる環境は5~6年前(『EVA』ができた頃)よりも、今のほうが難しくなっていると思います。スペインではSFに対する評価が低くて(コメディのほうが人気が高い)、そんな理由から映像作家がSFを撮るのは実は(費用的にも)リスキーでもありました。

――それでは本作が公開に漕ぎ着けた要因は何だったのでしょうか?

HC:スペインでは「逆輸入もの」に弱くて(笑)。『スターシップ9』は今年のブリュッセル・ファンタスティック国際映画祭(世界三大ファンタスティック映画祭の一つ)で、とてもありがたいことに高い評価をいただきました。国内よりも国外で注目されると公開されやすくなる・・・という風潮にあります。今回はその流れに乗ることができたのかな(笑)。

――本作のどういう点が高い評価を得られたと思っていらっしゃいますか?

HC:確かにSF映画と言えばSFだけど、現実に根差したSFを目指しました。ジャンルありきではなく人間のストーリーとして丁寧に描きました。そういう点が観る人の心を動かしたのではないかと思っていますし、日本の皆さんにも注目していただきたいと思っています。

<プロフィール>
アテム・クライチェ Hatem Khraiche
レバノン系のサモラ出身の監督・脚本家。ヴァラエティ誌で2012年に「注目すべき若手スペイン映画製作者」の1人に選ばれている。サラマンカのUPSAでジャーナリズムを学び、その後キューバのEICTVで監督と脚本コースを学ぶ。本作を監督する前に、『ヒドゥン・フェイス』(11)、『ゾンビ・リミット』(13)の脚本を手がける。また、6本の短編映画を監督/脚本し、多くの国際映画祭から注目を集めた。そのうち最も有名なものは2009年のゴヤ賞にノミネートされた‘Machu Picchu’と2010年マラガ国際映画祭特別審査員賞受賞したGenio y Figura’である。


© 2016 Mono Films, S.L./ Cactus Flower, S.L. / Movistar +/ Órbita 9 Films, A.I.E.
8/5(土)、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次ロードショー

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