イタリア映画祭2017を振り返る

今年のテーマは「未来ではなく今、この瞬間を生きる」、そしてピフとの出会い

かけがえのない数日:★★★☆☆
二度と戻らない、青春の輝きが眩しい
大ベテランのジュゼッペ・ピッチョーニ監督が、女子大生4人組の波乱に満ちた卒業旅行を描く。彼女たちはそれぞれ恋愛や人生に問題を抱えながら、中には深刻な病を仲間に隠しながら、まるで逃避行のようにセルビアを目指して旅をする。言葉も通じない非日常のなか、新たな出会いにときめいたり、時には仲間とぶつかり合ったりして、自分の人生と向き合っていく。「自分の人生はこれからで、未来はもっと先にある」と信じていたあの頃の感覚や、人生の大きな一歩を踏み出す前の不安感や期待感というものが画面に満ちていて、懐かしい日々への郷愁にかられる。一方で、女子大生の親や先生たちもまた、彼女たちとの関係に悩んだり、戸惑ったりして生きている。どの世代の人が見ても、きっと心に響くシーンやセリフがあるだろう。「たとえ壊れても、カケラを集めて直せばいい」という言葉がじんわり沁みる。

切り離せないふたり:★★★☆☆
イタリア南部にもオペの必要性を感じる作品
腰から腿にかけて結合している美人姉妹は、貧しい海辺の町で、ある意味、見世物として家計を支えている。結婚式や教会のイベントで、父親が作った曲を歌い、珍しい肢体で人々の興味を惹きつける。彼女たちは自分たちの運命を受け入れているかのように見えるけど、ある日、スイス人医師から「二人を引き離すことは可能で、それは生まれた時からわかっていたはず」というショッキングな事実を告げられる。貧しさゆえに娘たちの障害をも利用して生きてきた家族や、彼女らを客寄せとして利用しようとする町の大人たち。普通に生きることすら許されない不自由な空気に気分が重くなるが、彼女たちの葛藤は、家族や貧しさに縛られて、もがいているイタリア南部の若者を投影しているように思える。また、自由の国アメリカのロサンゼルスを夢見て海に飛び込む姉妹の姿が、イタリア南部を目指して決死の覚悟でやってくるアフリカ難民の姿とも重なった。本作はナポリ出身のエドアルド・デ・アンジェリス監督の長編3作目。パオロ・ソレンティーノ監督がアカデミー賞のイタリア代表作品に強く推薦した他、ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞6部門受賞。

告解:★★★☆☆
現法王への期待度の高さが窺える作品
ロベルト・アンドー監督と主演トニ・セルヴィッロが前作『ローマに消えた男』に続いて再びタッグを組んだ作品。前作は好きだったので、今作も期待していたけれど・・・。宗教(良心)は資本経済と政治の暴走を止められるのか、と問いかける。セリフに聖書の引用が多く難解なうえ、サスペンスもテンポが・・・な印象。スッキリしないまま終わってしまったが、さすがはイタリア映画祭。宗教に触れている作品には、観客にカトリック信者の方も多いようで、上映後のQAに助けられた。トニさん演じる神父の宗派は「沈黙」を教義としているため、サスペンスのキーワードも「沈黙」。テンポに疑問を感じたのはそのせいかもしれない。登壇したプロデューサーによると、アンドー監督はこの神父にフランシスコ法王を重ねているところがある、とのこと。現法王への期待度の高さが窺える作品。

スイート・ドリームス(仮題):★★★☆☆
–準備中(近日掲載予定)–


会期:4月29日(土・祝)~5月6日(土)
会場:有楽町朝日ホール(千代田区有楽町2-5-1 マリオン11階)

<イタリア映画祭2017大阪>
会期:5月13日(土)~14日(日)
会場:ABCホール(大阪市福島区福島1‐1‐30)

主催:イタリア文化会館、朝日新聞社、イスティトゥート・ルーチェ・チネチッタ
後援:イタリア大使館 協賛:FCAジャパン株式会社、フェラガモ・ジャパン株式会社
協力:株式会社 帝国ホテル、アリタリア-イタリア航空、株式会社WOWOW
運営協力:有限会社エミュー/宣伝協力:樂舎/字幕協力:アテネ・フランセ文化センター
公式サイト:http://www.asahi.com/italia/

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