【TNLF】アダムズ・アップル

映画と。ライターによるクロスレビューです。

作品紹介

Adams æbler仮釈放受刑者の更正プログラムを行っている教会に、ネオナチのアダムがやってくる。彼を待ち受けていたのは、盲目的に神や善を信じる司祭と更生する気配のない仲間たちだった。ヨブ記をベースに、ならず者と聖職者の奇妙な心の交流を描く。アナス・トマス・イェンセンとマッツ・ミケルセンの強力タッグが送る幻の未公開作、ついに解禁!
2006 年デンマーク・アカデミー( ロバート) 賞:作品賞、脚本賞、特殊効果/ 照明賞(公式サイトより)

クロスレビュー

藤澤貞彦/アナス・トマス・イェンセン監督の悪魔度:★★★★☆

この作品は聖書のヨブ記の物語をなぞっている。神と悪魔がヨブの信仰心が本物かどうかを賭け、彼に試練を与えることで闘うという話である。ヨブが皮膚病に懸かり醜くなっていったのに対して、司祭は殴られて顔が醜くなっていく。アナス・トマス・イェンセン監督は、マッツ・ミケルセンの顔を醜くするのが、趣味なのだろうか。それにしても『メン&チキン』が神の領域を科学者が犯すという話だったことを考えると、この作品もキリスト的というよりは、むしろ悪魔的な感じがしてしまう。特にマッツ・ミケルセンの不死身ぶりは、どう考えても悪魔の所業としか思えない。音楽もバーナード・ハーマン調(ヒッチコック『めまい』)で、ホラー映画の雰囲気を醸し出していたりもする。実は人間の善を信じ、自分は悪魔に試練を与えられ、神に救われていると信じる司祭のその本心は、真実に目を背け、神に愛されていると思い込むことでしかなかったという皮肉。この作品では善意はあまりにも無力であり、イェンセン監督は性悪説の人なのかと思えてきてしまう。悪魔と神の闘いはこれからも続いていくのだろうというラスト。人間の弱さが根底から滲み出て、笑わせながらもヒリヒリと痛い作品だ。

鈴木こより/イェンセン監督xマッツ様=奇跡度:★★★★★

昨年ノーザンライツで上映された「メン&チキン」を観たときも思ったけど、アナス・トマス・イェンセン監督の作品って最高に刺激的。両作とも、ものすごく変な話だけど、人間というものを深く掘り下げていて哲学的であるともいえる。今作は人間の良心はどこまで試練に耐えられるのか、という話で、教会に仮釈放受刑者のネオナチがやってくるところから始まる。冒頭からしてなかなか強烈な設定ではあるが、それを不自然にも、それでいて重苦しいリアルにも見せないのが、主演マッツ・ミケルセンの稀有な存在感であり、この風変わりな世界観にある種の説得力をもたらしている。本作のように毒気とユーモアのバランスが絶妙な脚本こそ、生かすのも殺すのも、演技を超えた俳優の佇まいなのではないかと思う。
同じデンマーク出身のラース・フォン・トリアー監督が好んで撮りそうなテーマで共通点も見出だせるが、こちらの方がより独創的な作風で、余韻も痛快。一度観たら病みつきになってしまう中毒性のある監督である。

トーキョーノーザンライツフェスティバル 2017開催概要

映画祭会期:2017年2月11日(土)~2月17日(金)
会場:ユーロスペース
イベント会期:2017年1月21日(土)~2月19日(日)
主催: トーキョーノーザンライツフェスティバル実行委員会
公式サイト:http://tnlf.jp/ (映画祭以外にもイベントが盛りだくさん。詳しくはこちらから)
※1/21(土)のオープニングイベントではラース・フォン・トリアーの「キングダム」イッキミ!を開催するほか、切り絵作家アグネータ・フロック展やアイスランド写真展、音楽イベントなど盛りだくさん。来日ミュージシャンによる伴奏付きサイレント映画の上映も!
Face book:https://www.facebook.com/tnlfes
Twitter:https://twitter.com/tnlfes
※前売り券はe+(イープラス)のWEBサイトにて販売中。前売り券は作品、日時指定でご購入いただけます。全席自由席、各回入れ替え制で、上映開始10分前から整理番号順のご入場となります 。整理番号をご確認の上、必ず開場時間までにお越しください。

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