『ヒトラーの忘れもの』ルイス・ホフマンさん

TIFF最優秀男優賞受賞の19歳 「共演のローランと賞を分かち合えたのは映画のテーマとも通じる」

lom-sub1――サントフリート監督や軍曹役のローランさんとはセバスチャンの役づくりについてディスカッションなどはなさったのでしょうか?または彼らから何かアドバイスはありましたか?

LH:ローランは役の上では対立している関係にあるので、言葉を尽くして話すということはあまりなかったのですが、マーチンとはしっかり意見交換ができました。撮影前のリハーサルのときに役づくりについて試行錯誤できましたし、マーチンにいろいろと質問をぶつけることができました。マーチンは脚本も担当していたし、いわばこの映画のリーダーでもあり、生みの親みたいなものだから、そういう機会があったのはラッキーでした。マーチンの持つセバスチャン像と僕の考えるセバスチャン像を話し合いつつ擦り合わせていきました。その過程で僕はすんなりセバスチャン・モードに入っていけたんです。
今回の撮影ではアドリブが多かったんですよ。例えばセバスチャンが軍曹に食糧について尋ねたとき、軍曹は「お前たち(ナチス)は酷いことしたのだから恥を知れ」という主旨の言葉を投げつけるのですが、このセリフは脚本にはなくて監督がその場でローランに言わせたんです。そうすると僕・・・というよりセバスチャンは不安になる。監督はその瞬間の表情をカメラに収めたかったらしいのですが、そういう即興に対応するためにもキャラクターを知り尽くす必要がありましたし、実際対応できたと思います。

――地雷処理のシーンはいつ爆発してしまうのではないか、とドキドキしながら見ていました。ルイスさんはじめ少年兵役の皆さんは地雷の扱い方について、どのようなレクチャーを受けたのでしょうか?かなりリアルに感じてしまったのですが。

LH:デンマークだか英国の人だか・・・ごめんなさい、はっきり覚えていないのですが、軍の専門家の人が軍の敬礼や姿勢のとり方、兵士同士でのリアクションなどを教えてくれました。そういうことと併せて地雷処理に関するレクチャーもしっかり受けました。セバスチャンはみんなのなかでは一番早く処理できる設定だったし、地雷処理に精通している人が映画を観ても、あまりにも不自然だとは思われたくはなかったです。
それと最も怖かったのは、撮影直前に実際に地雷を見つけてしまったことです。ロケ地となったデンマークの海岸線は5~6年前にはすべての地雷が撤去されたと知らされていたのに、偶然にも見つかり、フィクションが現実になってしまったみたいで怖かったですね。

lom-sub2――最近の日本で見られるドイツ映画は、『顔のないヒトラーたち』『ヒトラー暗殺、13分の誤算』『ブルーム・オヴ・イエスタディ』(今年のTIFFグランプリ、ドイツでは来年1月公開)などナチスやホロコーストなど戦争犯罪に絡めた作品が多いように思います。またドイツだけではなく本作のようにヨーロッパ各国でも負の歴史と向き合う映画がつくられていますが、ルイスさんはこういう映画界のトレンド(と言って良いのか悩みますが)をどう思っていらっしゃいますか?俳優としてこういうことにどう取り組んでいけば良いかと思っていらっしゃいますか?

LH:海外でドイツの歴史ものに特に触れる機会が多いのは理解できます。多くの人が史実を知っているから物語に入りやすいのだと思います。ただ僕個人の意見としては、ドイツの歴史ものは以前に比べて減っているように感じています。ドイツでは戦争ものはヒットしない傾向があって、この『ヒトラーの忘れもの』もデンマークでは大ヒットしたけれど、ドイツでは2万人も動員できませんでした。こういう物語を見たがらないのか宣伝が良くなかったのかは今の段階では判断できないけれど・・・(苦笑)。
個人的には歴史もの、現代ものなどのジャンルにこだわらず、自分以外のキャラクターを演じられることに興味があります。もちろん歴史に目を向けることはとても大切だし、過去に自分、もしくは自分の家族、そして先祖がもしかしたら関係していたかもしれないと考えるととても興味深いけれど、その一方で新しい物語に触れることも大好きなんです。

image6<プロフィール>
ルイス・ホフマン Luis Hofmann
1997年、ドイツ・メンヒェングラートバッハ出身。09年に俳優としてのキャリアをスタートし、出演第2作となる『Tom Sawyer(原題)』(11/ヘルミーネ・フントゥゲボールト)でトム・ソーヤを演じた。その後、『Freistatt(原題)』(15/マーク・ブルムント)で、ババリア映画賞最優秀新人賞を受賞。新作に、ヴァンサン・ペレーズが監督を務め、ダニエル・ブリュール、エマ・トンプソンと共演した『Alone in Berlin(原題)』(16)などがある。

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