『太陽のめざめ』エマニュエル・ベルコ監督

監督作も主演作もカンヌで高評価「オープニングに選ばれたことは大きな意味がある」

―― 主演俳優のロッド・パラドは演技経験なしでの主演デビュー作ですが、彼への演技指導で難しかったことはありますか?

監督:「これまでも自分が作った映画で演技経験がない人は何人もいましたが、彼らとの仕事に難しさを感じたことはありませんでした。でもロッドと、このマロニーというキャラクターにはだいぶ距離があり、暴力性を表現させるところは大変でした。優しく親切で礼儀正しいロッドに、真逆ともいえるマロニーの暴力性を出させるのはギリギリまで大変でした」

―― 更正施設で子供たちがジャッジへの「不公平さ」を嘆く場面があります。更正させる大人たち自身の公正さ、公平性を問うているようにも思えましたが…

監督:「大人たちにとっても解決策や正解を見つけるのはとても難しいことです。だから、妥当だと思える判決が出ない時もあります。けれども、それも含めて判事は子供たちを救う道になると判断する場合もあると思うんです。映画のなかで、判事が“彼を少年刑務所へ送りましょう”という判決を出す。でもそれに対して、指導員たちは“あまりに行きすぎた判決ではないか”という。みんな正解を探しているけれど、つねに模索しているという状況が現実だと思います」

―― フランスでテロが多発していますが、監督の今後の映画づくりに何か影響を与えると思いますか?

監督:「今後も社会の問題を扱う映画を積極的に作っていきたいと思っていますが、テロを取り巻くフランスの状況はとても複雑です。その部分をテーマにしてフィクションを作るというのは、とてもデリケートな問題だと思っているので、今は映画で取り扱う気持ちはないです」

「太陽のめざめ」作品紹介とクロスレビューはこちら

8月6日(土)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開


エマニュエル・ベルコ Profile
1967年11月6日パリにて生まれる。当初はダンスを学び、ついでフロランの演劇学校で演技を、そして最後にFEMIS(フランス国立映像音響芸術学院)で演出を学んだ。在学中に制作した短編“Les Vacances”(1997)は、カンヌ映画祭で審査員賞を受賞し、卒業制作となる中編「少女」(1999)は、一躍、ベルコの名を世界に知らしめることとなった。また、同時に女優としても活動を開始し、クロード・ミレールの『ニコラ』(1998)、ベルトラン・タヴェルニエの『今日から始まる』(1999)と続けざまに出演して好演を見せ、女優としても非凡な才能を示す。2001年、自ら主演した劇場用長編第1作『なぜ彼女は愛しすぎたのか』で、少年と30歳の女性の恋愛を描いてカンヌ映画祭のある視点部門に招待され、衝撃を巻き起こす。続く“Backstage”(2005)は、人気歌手と彼女を神聖視するファンの少女との関係を描き、テサロニキ国際映画祭で最優秀監督賞を受賞。’13年にはカトリーヌ・ドヌーヴをヒロインに迎えて「ミス・ブルターニュの恋」を撮り話題に。そして本作で’15年のカンヌ映画祭のオープニングを、女性監督としては28年ぶりに飾るという快挙を成し遂げた。マイウェン作品の常連女優でもあり、’15年の「Mon roi/モン・ロワ(原題)」(※2017年春日本公開予定)ではカンヌ映画祭の女優賞を、『キャロル』のルーニー・マーラとともに受賞している。

© 2015 LES FILMS DU KIOSQUE – FRANCE 2 CINÉMA – WILD BUNCH – RHÔNE ALPES CINÉMA – PICTANOVO

1 2

トラックバック URL(管理者の承認後に表示します)