【FILMeX】クズとブスとゲス(コンペティション)
【作品解説】
(東京フィルメックス公式サイトより)
妻子ある男と水商売の女が駆け落ちを試みるが、男は約束の待ち合わせ場所に現れない。女は男が来ないと知りながらも待ち続けていた・・・。デビュー作『東京プレイボーイクラブ』(11)で第12回東京フィルメックスコンペティションに選ばれた奥田庸介の3年ぶりの新作。
【クロスレビュー】
富田優子/ブスな女優でとことん演出してほしかった度:★★★☆☆
奥田監督が「撮りたいように撮った」心意気は素晴らしいし、その志は今後も持ち続けてほしいと思うのだが、簡単に“ブス”と言ってしまうようなタイトルからして、女性の描き方については不満がある。それに2015年の現在、本作のヒロインのように主体性のない女性は果たしているのであろうか。監督の前作『東京プレイボーイクラブ』のヒロイン(臼田あさ美)も周囲に流されるタイプだったことを思い起こすと、もしかしたら彼女達が監督の理想の女性像なのかな(笑)。とは言え、どうせならきれいな女優を起用せずに、ブスな女優で心も外見もブスな女を演出してほしかったところ。タイトルでは“クズ”“ブス”“ゲス”の三つ巴の印象だが、内容がそこまで到達していないのは残念だ。
藤澤貞彦/監督のひとり相撲度:★★☆☆☆
尖がった映画である。痛々しい映画である。3年間、何も映画を撮れなかった奥田庸介監督の執念が、自分自身が演じたゲスな主人公に乗り移ったような感覚がある。その気持ちはわかるような気がする。本当に血を流し、現場で殴った音を、増幅しているとはいえそのまま使う。それが生々しく痛々しい。ただ、劇映画って、いかに本物らしく見せるかということで、本物を見せることじゃないと思うのだけれど。その割には、夏の暑さがまるで感じられない、ゴミが溢れる屋敷の臭いも感じられない、母親など周囲の人物も妙に人物としての実感がないために、どこかちぐはぐさを感じてしまう。これは、監督の思い入ればかりが先行し過ぎた結果ではないか。こんな映画作りは長くは続かないですぞ。
▼第16回東京フィルメックス▼
期間:2015年11月21日(土)〜11月29日(日)
場所:有楽町朝日ホール・TOHOシネマズ日劇・有楽町スバル座
公式サイト:http://filmex.net/2015/