【TIFF】パティーとの二十一夜(ワールド・フォーカス)

映画と。ライターによるクロスレビューです。

【作品解説】

盛夏。キャロリーヌは疎遠であった母が亡くなったと報せを受け、パリから南仏の小さな村に赴く。母が遺した家に着くと、管理人のパティーが出迎えてくれた。ふたりで散歩に出かけるが母の話もそこそこに、パティーは自分の性生活を赤裸々に語りはじめ、奥手のキャロリーヌは唖然とするばかり。そんな不思議な出会いのなか、母の遺体が消えてしまう…。森の中のミステリアスな事件というラリユー兄弟らしい設定に、欲望に臆病なキャロリーヌの心の揺れが絡み、エロスとタナトスへのおおらかな賛辞に満ちた大人のコメディドラマである。どこか現実離れした空間を構築するラリユー・ワールドに加え、大人と子供の顔を併せ持つキャロリーヌ役のイザベル・カレ、あけすけな言動が爆笑を誘うカリン・ヴィアール、そして抜群の安定感で作品に奥行きをもたらすアンドレ・デュソリエなど、フランスを代表する芸達者たちの競演も見ものである。サンセバスチャン国際映画祭コンペティション出品作品。(TIFF公式サイトより)

【クロスレビュー】

富田優子/清々しいほどの人生(性)賛歌度:★★★★☆

ヒロインの母親の遺体が消える怪奇事件。だが、話の中心はキワどい下ネタトークだ。登場人物もズレた人々ばかりで翻弄される。変態チックな行為にも話は及ぶが、なぜか歌えや踊れで、挙句の果てに性愛万歳!と清々しい物語に昇華するという、ラリユー兄弟の自由な映画づくりには嬉しくなる。ある意味、人間たるもの“生”と“性”を楽しまなくては損!というありがたいお話。イザベル・カレやドゥニ・ラヴァン等の日本でも馴染みのある俳優たちの出演にも心躍るが、トドメはヒロインの夫役セルジ・ロペス。出番は少ないものの相変わらずの胸毛全開でクライマックスを盛り上げる。私にはむさくるしいオッサンにしか見えないのだが、彼が何でこうもエロ担当(?)として欧州の映画監督に愛されるのかが、理解できないところだ(笑)。

鈴木こより/夏山で老若男女みんな甦る度:★★★★★

ラリュー兄弟監督、今作も山を舞台に奇妙な物語を描く。母が遺した山の家をパリジェンヌが訪れるのだが、そこで出会う人々がキョーレツで、野性味溢れるというか、超自然体というか…とにかくパワフルで圧倒される。夏山の空気感が人々をそうさせるのだろうか。疲れきった都会人も、死者でさえも生き返りそうなエネルギーが画面から伝わってきて、観ていて元気になれる映画。下ネタだらけの不思議な話だけど、これまで見た監督作品のなかで、一番メッセージが直球で楽しめた。
過去に仏俳優マチュー・アマルリックが来日したときにラリュー兄弟監督について興味深いコメントをしているので、良かったらこちらの記事「マチュー・アマルリック、トークイベントで「映画にはリスクを!」と語る」も併せてご覧ください。


© Jérôme Presbois  © 2015 Arena Films – Pyramide Productions
115分 フランス語 カラー | 2015年 フランス |


【第28回東京国際映画祭】
開催期間:2015年10月22日(木)〜10月31日(土)
会場:TOHOシネマズ六本木ヒルズ、新宿バルト9、新宿ピカデリー、TOHOシネマズ新宿、東京国立近代美術館フィルムセンター、歌舞伎座
公式サイト: http://2015.tiff-jp.net/ja/

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