「白いリボン」トークショー!カヒミ・カリィが見せた母の顔


「犯人はいったい誰?」考えれば考えるほど疑惑が深まり、もう一度観たくなる―ミヒャエル・ハネケ監督の最新作『白いリボン』が公開中だ。銀座テアトルシネマで21日、ヒットを記念したトークショーが開催され、アーティストのエドツワキさん、ミュージシャンのカヒミ・カリィさんが同作への思いを語った。
現在子育て中のカヒミさん。『白いリボン』を観て、「精神が揺らぐような恐怖を味わいつつも、久しぶりに質のいい作品を観て、芸術に触れる“充実感”を得た」という。第一次世界大戦前夜の北ドイツの村。そこに暮らす人々を、次々と奇妙な事件が襲う。姿の見えない犯人像に、村人たちは互いに疑心暗鬼に陥っていく。そして、スクリーンには、苦しく歪んだ表情の子どもたちの姿が映し出されるが……。カヒミさんは、ひとつの作品と対話することで癒しすらも感じ、怖いながらもセラピストと向き合うような気持ちを覚えたとか。考えさせられたことも多かったようだ。「子どもは生まれながら心に闇を持っているのか、それとも純粋な状態で生まれて、世の中に出てから変わっていくのか。自分にも子どもがいるので、今日ずっとそんなことを考えていました」と、母親の顔ものぞかせた。また、カヒミさん自身に兄弟がいて、親がプロテスタントという映画に登場する子どもたちと似た家庭環境で育ったという思い出話も。「子どもの頃の不安に揺らぐ感じがよく分かる。ちょっと犯人は自分のような気がして怖かった」とのドッキリ発言も飛び出した。
さまざまな想いが掻き立てられたのは、エドさんも同じのよう。「(同作のような)モノクロの作品は好き。まるでフェルメールの絵のような、絵画から抜き取ったようなシーンがたくさんある。モノクロ映像だと、イマジネーションが喚起される」と、アーティストらしい視点から作品の印象を語った。
また、ミヒャエル・ハネケ監督を「フォトジェニック」だと評するエドさん。「本人がフォトジェニックで、哲学者のような佇まいをされている監督はあまりいない。この『白いリボン』でハネケ作品の虜になって、さかのぼって過去作を続けて観た」という。一方、『ピアニスト』(01年)で初めてハネケ作品に出会い、「恋愛映画だと思って観に行ったら裏切られた。精神的にやられた」と話すカヒミさん。しかし、「精神的にぐさっとやられる」(カヒミさん談)のは嫌いではなさそうで、「『白いリボン』も“やられた”と思う作品なので、ぜひ皆さんに観ていただきたい。私はもう5回観た(!)けど、犯人はまだ分からない」と同作の醍醐味を伝えていた。

エドツワキさん(左)とカヒミ・カリィさん

2009年のカンヌ国際映画祭でパルムドール大賞を受賞した『白いリボン』。アカデミー賞の外国語映画賞ノミネートや、ゴールデン・グローブ賞外国語映画賞を受賞するなど、世界中で高い評価を獲得している。ハネケ監督の「最後まで語らず、観る側に自由をあてる」という狙いが、観るたびに新しい謎と発見を与えてくれる。一度と言わず、二度三度と繰り返し観る価値のある作品である。銀座テアトルシネマ、新宿武蔵野館他で全国順次公開中。

【取材・文】:新田理恵

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