『フューリー』ブラッド・ピット&ローガン・ラーマン記者会見
11月28日(金)公開『フューリー』のプロモーションのため、主演兼製作のブラッド・ピットが共演のローガン・ラーマンと来日し、11月15日、東京ミッドタウンで記者会見を行った。ブラッドは通算10回目の来日、ローガンは3回目の来日だが、「インスピレーションやエネルギーを貰えるような、素晴らしい国」(ローガン)、「日本にはいつも驚かされていて、写真をいっぱい撮って子供たちへ送っている。“おもちゃを買ってこい”とリクエストされているけど」(ブラッド)と印象を語ってくれた。
『フューリー』は第2次世界大戦下、一台の戦車で300人のドイツ軍部隊と渡り合った5人の兵士たちの姿を描いた戦争アクションドラマだ。1945年4月、ドイツへ侵攻する連合軍の米兵ウォーダディー(ブラッド)は、「フューリー」と命名した戦車に乗り、戦いを続けていた。ウォーダディーと3人の仲間に新兵のノーマン(ローガン)も加わり、5人となった部隊は絆を深めていくが、進軍中にドイツ軍の攻撃を受け、他部隊がほぼ全滅。辛うじて生き残ったウォーダディーの部隊にも、過酷なミッションが下される・・・。監督は元軍人の経歴を持つデヴィッド・エアー、キャストにブラッド、ローガンの他にシャイア・ラブーフ、マイケル・ペーニャらが集い、本年度のアカデミー賞の呼び声も高い注目作だ。
そんな本作に編集段階から携わっていたブラッドは、「私たちが目指した、本当につくろうとした作品に仕上がりました。兵士たちの精神的にも肉体的にも毎日積み重なる過酷な状況をこの映画で表現できたと思います」と出来栄えに自信を示す。ローガンも「自分がスクリーンに映る姿を見るのはまだ慣れていなくて恥ずかしい」と初々しさを覗かせながらも、「全力で取り組んだので、誇りに思える映画」と充実ぶりをアピールした。
ブラッドは戦場の臨場感を大切にするために、撮影前に4か月に及ぶハードな合宿を共演者とともに敢行。ローガンは「睡眠時間を削ったりして、肉体的にも精神的にも苦痛で大変だったけれど、(キャスト同士の)サポートなしでは達成できないタスクを実行するうちに、一つの家族になっていくような団結力をつけていきました」と振り返った。“家族になっていくような”というのはまさに映画のとおりで、戦車を“家”と見立て、5人の兵士がまるで家族のよう。彼らの絆にも胸を打たれるが、それは厳しい訓練の賜物であったことを裏付けている。ただその“我が家”である戦車について、「狭くて臭かった」と二人は口を揃える。でもブラッドは「実際に戦った兵士の方々は、狭い空間で食べて、寝て、戦って、用を足し・・・と大変な苦労だったと思います」と当時の戦闘員に思いを巡らせた。
予告編などでも流れる「理想は平和だが、歴史は残酷だ」というウォーダティーのセリフについて、ブラッドは「とても大事なセリフ」とし、実際に退役軍人の人たちに取材を行い、そのなかの一人から実際に発せられた言葉だという。「本作で伝えたいのは、私たちの一般的な常識が戦場ではまるで通用しないということ。(ローガン演じる)ノーマンは人間の慈愛や正義を持った若者として描いていますが、戦場ではそういうものが一切通じない。殺すか殺されるかの世界で、冷酷にならなくてはいけない。本当は世界でも平和を考えている人は多いのに、人間は進化しているのにかかわらず、戦争は絶えることがない。戦争の愚かさや矛盾がそのセリフに凝縮されています」と力を込める。
一方、ローガンが演じるノーマンは1日で心優しい若者から、戦場の理不尽さを目の当たりにして変化を強いられる難役だ。ローガンは「理想を掲げて戦地へ来たのに、考えを曲げなければならない。ああはなりたくないと思っていても、殺戮しなければならない。物語を俯瞰して、意識しながら演じ分けることが難しかったですね。それとノーマンは新米だけど、僕自身も現場では新米扱いでした(笑)」と振り返る。そこへブラッドが「ローガンの役が一番難しかったはずです。撮影前、他のメンバーは先に仲良くなっていて、あとから彼が加わったものだから、確かに本当の意味で新米でした。でも彼には耐える力があったし、逆に私達に挑戦してくることもありました」と賛辞を贈り、ねぎらった。
本作はこれでもか!とばかりに苛烈な戦闘シーンの連続だ。ブラッドがコメントしたとおり、自分が生き残るためには子供も殺さなくてはならないし、女性の扱いも「こんなんでいいのかよ・・・」とモヤモヤ感が残る。戦場の惨状を描いた作品はこれまでも『プラトーン』『プライベート・ライアン』『戦場のピアニスト』『戦火の馬』など数多くあり、反戦の思いがひしひしと伝わるのだが、現実世界では一向に戦争はなくならず、虚無感が募る。ブラッドは「今度こそ」の思いで、この作品で世に問おうとしているのではないか・・・そんな思いもよぎった。それは『それでも夜は明ける』をプロデューサーとして手がけたことでも分かるのではないだろうか。『それでも夜は明ける』も『フューリー』も、“なぜ、今、この映画をつくらねばならかったのか?”という理由が明確に伝わるからだ。ブラッドの慧眼には、つくづく恐れ入る。余談だが彼が『テルマ&ルイーズ』や『リバー・ランズ・スルー・イット』でブレークした際、筆者は周りの熱狂ぶりとは別に「え?それほどでも・・・」と冷めていたのだが、だんだんと歳を重ねて醸し出すオーラ(加齢臭ではない)のほうが、若い頃より断然いい!・・・と今回の記者会見で改めて実感した。
また、子役時代から活躍し、『3時10分、決断のとき』でクリスチャン・ベイルの息子役で注目を集めたローガンだが、本作のノーマン役は実質的には彼が主役だ。もちろんこれまでも『パーシー・ジャクソン』シリーズや『三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』などの主役を演じているが、「これほど夢中になって取り組んだ映画はない、こんなに誇りに思える映画はない」と口にしたように、彼のキャリアにおいてターニングポイントとなる作品になるのではないだろうか。今後のさらなる飛躍にも期待を寄せたくなる、本作の熱演ぶりをぜひとも大きなスクリーンでも確認してほしい。
記者会見ではローガンの発言中にはブラッドが優しく見守るというような、まるで本作でのウォーダディーとノーマンのような関係も垣間見られ、じゃれ合う(?)二人の姿がやけに微笑ましかった。
▼作品情報▼
製作総指揮:ブラッド・ピット、サーシャ・シャピロ、アントン・レッシン、アレックス・オット、ベン・ウェイスブレン
監督・脚本・製作:デヴィッド・エアー
出演:ブラッド・ピット、シャイア・ラブーフ、ローガン・ラーマン、マイケル・ペーニャ、ジョン・バーンサル
原題:FURY
配給:KADOKAWA
公式サイト:http://fury-movie.jp/
(C)Norman Licensing, LLC 2014
2014年11月28日(金)TOHOシネマズ日劇他 全国超拡大ロードショー
2014年12月4日
フューリー/僕にその手を汚せというのか
フューリーFURY/監督:デヴィッド・エアー/2014年/アメリカ 平和のために、今はただ、人を殺す。 TOHOシネマズ日劇スクリーン1、K-18で鑑賞。 スルー予定でしたがシャイア・ラブーフが出ているので見ました。 あらすじ:戦争です。 連合軍がナチス倒そうとしてて戦車に乗ったウォーダディー(ブラッド・ピット)とバイブル(シャイア・ラブーフ)とゴルド(マイケル・ペーニャ)が男臭くしているところへ新人ノーマン(ローガン・ラーマン)がやってきました。 ※ネタバレはありません。おすすめポイントとにかく人…