それでも夜は明ける

映画と。ライターによるクロスレビューです

それでも夜は明ける_main【作品解説】
第86回アカデミー賞作品賞、助演女優賞(ルピタ・ニョンゴ)、脚色賞受賞、第71回ゴールデン・グローブ賞作品賞(ドラマ部門)受賞など、世界の映画賞レースを引っ張ってきた超話題作。奴隷制度が廃止される以前、19世紀前半に実在したアフリカ系アメリカ人男性ソロモン・ノーサップの12年に及ぶ壮絶な奴隷生活を綴った自伝を映画化した感動の伝記ドラマ。

【ストーリー】
自由証明書で認められた自由黒人で、ニューヨークで暮らすバイオリニストのソロモン(キウェテル・イジョフォー)は、白人を含む多くの友人にも恵まれ、愛する家族とともに幸せな生活を送っていたが、ある白人の裏切りによって拉致され、名前も尊厳も奪われ、奴隷として南部の農園へ売られてしまう。農園主エップス(マイケル・ファスベンダー)ら白人たちの容赦ない差別と暴力に苦しめられながらも、彼は決して尊厳を失うことはなかった。やがて12年の歳月が流れたある日、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バス(ブラット・ピット)と出会う。


【クロスレビュー】

法で認められさえすれば人間たるもの、非人道的なことがいくらでも許されるのか。たかだが160年ほど前の話なのに白人は黒人を奴隷として平然と売買し、彼らを痛めつけること、特に命の危険に晒すことに良心の呵責も感じない“常識”に戦慄を覚える。白人俳優の大多数が「非人道的なこと」に手を染める役を演じているが、よくぞここまで泥をかぶったと称賛したい。特に主人公の雇い主役ファスベンダーの歪んだ内面描写は秀逸で、愛すべき点が皆無という完全悪役を熱演。マックィーン監督が黒人であることも考えると、本作が持つ意味が非常に重く感じられ、見る側にも真摯に受け止める覚悟が問われることだろう。
(富田優子/★★★★☆)

いまの日本には「当時は奴隷制度があったんだから仕方ないじゃないか」とか言っちゃう人もいそうだけど、やっぱり問題はそこじゃないんだ。人から何を奪えば生に絶望していくのか。連鎖する暴力や嫉妬、欺瞞や自己保身、人間が陥る負のスパイラル。首を吊られもがき苦しむ主人公(キウェテル・イジョフォー)を静かに放置する光景にゾッとさせられ、農場主(マイケル・ファスベンダー)と奴隷の少女(ルピタ・ニョンゴ)の行く末が最後まで棘のように心に突き刺さる。それでも夜は明けるのか? 見終わった後は『ハンナ・アーレント』や『グラン・トリノ』を思い起こした。人間の愚かしい行為は、いつでもどこでも起こり得る。
(外山香織/★★★★★)


TWELVE YEARS A SLAVE監督:スティーヴ・マックィーン
出演:キウェテル・イジョフォー、マイケル・ファスベンダー、ベネディクト・カンバーバッチ、ポール・ダノ、ポール・ジアマッティ、ルピタ・ニョンゴ、ブラッド・ピット、アルフレ・ウッダード
原題:12 YEARS A SLAVE
配給:ギャガ
2013年/アメリカ・イギリス/134分
公式サイト:http://yo-akeru.gaga.ne.jp/
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2014年3月7日(金)TOHOシネマズ みゆき座 他 全国ロードショー

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  1. 映画感想 * FRAGILE

    それでも夜は明ける/名前も地位も奪われて

    それでも夜は明ける12 Years a Slave/監督:スティーヴ・マックイーン/2013年/アメリカ、イギリス 逃げることさえ諦めて、鞭の痛みも忘れ去る TOHOシネマズスカラ座、J-19で鑑賞。G列でも良かったかな。第86回アカデミー賞、作品賞受賞作です。 邦題がぜんぜん覚えられなくて困りました。つけるほうも困ったと思います。「12年」「奴隷」ってどう組み合わせてもSMみたいになってしまいそうだもの。 あらすじ:拉致されて奴隷になりました。 自由黒人でバイオリニストのソロモン・ノーサップ(キウ…

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