『美女と野獣』クリストフ・ガンズ監督インタビュー

ディズニーのリメイクと言われるのは不本意
クリストフ・ガンズ監督

クリストフ・ガンズ監督

人を愛し、愛されなければ人間の王子の姿に戻れない野獣と、薔薇を盗んだ父親の身代わりとして、その野獣の城に囚われの身となった美しい娘ベル――。そんな『美女と野獣』の物語と言えば、何を真っ先に思い浮かべるだろうか。日本ではディズニーのアニメか、劇団四季によるミュージカルかもしれない。ところがこの物語、実はフランスが原産国。1740年にヴィルヌーヴ夫人が発表し、その後多くの国で、絵本、映画、アニメ、ミュージカルなどにアレンジされ、現在に至っている。
今回、原作を徹底検証し映画化に臨んだのは、フランス出身、『ジェヴォーダンの獣』(01)などで知られるクリストフ・ガンズ監督だ。野獣役にヴァンサン・カッセル、ベル役にレア・セドゥというこの上ないキャストを得たガンズ監督は、ポットもお皿もキャンドルも歌わないし踊らない、大人が鑑賞するにふさわしい、気品あふれる作品に仕立て上げた。今回、本作のプロモーションのため来日したガンズ監督にお話を伺った。

――主役のヴァンサン・カッセルさんとレア・セドゥさんがとてもお似合いでした。ガンズ監督から見たお二人の魅力はどこでしょうか?ちなみに一昨年の話ですが、同じレアさん主演の『マリー・アントワネットに別れをつげて』(12)のプロモーションでブノワ・ジャコー監督のインタビューでも同じ質問をしましたが、ジャコー監督はレアさんを「町で彼女と会ったら追いかけたくなるほど魅力的」と評しておられました。(参考:『マリー・アントワネットに別れをつげて』ブノワ・ジャコー監督インタビューレア・セドゥ インタビュー

クリストフ・ガンズ監督(以下CG):私はジャコー監督のような冗談は言えませんよ(笑)。この映画は、実は短い期間での出来事を描いています。レア演じるベルは最初、父親に甘える幼さを宿しています。ですが、そこから父親の身代わりとして野獣の城へ行き、彼と出会い、恋する大人の女性への変化を遂げる必要がありました。私がレアを魅力的と思うのは、彼女が複数の顔を持っていて、瞬時に様々な表情を使い分けられる点です。だから“レア・セドゥは◯◯だ“というような固定したイメージを持っていないんです。でも普段のレアはボーイッシュで気さくな人で、普通にジーンズとか穿いていますよ。それなのにスクリーンに映ると一瞬でフェミニンになるので、とにかく感心しきりでしたね。
それからヴァンサンは『ジェヴォーダンの獣』で一緒に仕事をしていますし友人でもあるので、彼の性格は昔からよく知っています。本作の野獣はヴァンサンの性格、特に彼の欠点の部分をつぎ込みました。だから野獣の少々短気なところのある性格は、ヴァンサンそのものなんです。

美女と野獣_main  ――主演に関しては、ヴァンサンさんとレアさん以外には考えられなかったということだったのでしょうか?

CG:そうですね。彼らを想定して脚本を書いていました。二人が出演を承諾してくれたときは安心しました。どちらかがダメとなったらスケジュールを見直さなくてはならなかったですからね。

――本作の原作はフランスで生まれた物語ですが、過去にはジャン・コクトー監督が映画化したり、アメリカではディズニーのアニメやミュージカルもできました。監督はご不快に思うかもしれませんが、『美女と野獣』と聞くとディズニー版を思い浮かべる人が多いかと思います。本作をつくるうえでディズニー版への対抗心はあったのでしょうか?

CG:残念ながらフランスでも若い人たちは、『美女と野獣』と言えばコクトーの映画を知らずに、ご指摘のとおりディズニーだと思ってしまうようです。今回の映画化も、「ディズニーのリメイクをするんだよね?」と言われたことが癪に障りました。私は原作、そしてコクトー版に敬意を持っており、コクトーが描けなかった部分を描きたいと考えていました。つまりコクトーの補完版と言ってもいいかもしれません。だからディズニーのリメイクと言われるのが本当に不本意でした。

――監督はディズニー作品についてはどのようにお考えなのでしょうか?

CG:対抗心から言っているわけではないのですが、実はディズニー版は好きではないんです。何というかアメリカらしいと言えばそれまでですが、単純明快なストーリーになってしまっています。『美女と野獣』はそんなものではなくて、精神の崇高さや美の本質とは何なのかなど、深いテーマが通底した物語なんです。ディズニー版ではそのあたりが描き切れていないのが残念です。あ、でもすべてのディズニー作品が嫌いというわけではないですよ。『ピノキオ』はとても好きです。でも他の作品は・・・(苦笑)。

美女と野獣_sub1  ――本作はフランスで今年2月に公開されたということですが、観客の反応はいかがでしたか?

CG:こんなに特殊効果を多用した作品をフランスでつくれるとは思っていなかったみたいで、フランス映画らしくないと驚かれました。私は俳優の演技だけではなく、アクセサリーや調度品、光の当たり具合など細部にも意味を持たせていました。つまりベルと野獣が対話しているシチュエーションだけで恋に落ちる様子を描写するのではなく、いろいろな状況や環境の変化を通じて恋に落ちていく様子を表したかったのです。そのようなシンボルを散りばめながら深く、いろいろな意味を込めてベルの心境を表しています。でもそのあたりは西洋人には分かりにくかったようです。日本やアジアではそんなことはないと願っています。

(後記)
「(ディズニーへの)対抗心から言っているわけではない」という前置きはあったものの、ガンズ監督の言葉からはフランスこそ『美女と野獣』の本家だというプライドを伝わってきた。そのプライドが本作の完成度を高める原動力になったのではないだろうか。衣装やアクセサリー、城の庭園などの様子の細部にまで監督の熱意が込められている。もう一度劇場で再見したくなった。きっと新たな発見があるだろう。

(プロフィール)
クリストフ・ガンズ Christphe Gans
1960年フランス、アルプ=マリティーム生まれ。10代の頃から8ミリで自主映画の制作を始める。80年代初期に映画雑誌を創刊し、批評家としても活動。その後、オムニバス映画『ネクロノミカン』(93)の一話で、劇場映画監督デビューを果たす。日本のコミックを映画化した日仏合作『クライング・フリーマン』(96)を手がけ、『ジェヴォーダンの獣』(01)で国際的にも注目される。日本のコナミの大ヒットゲームを映画化した『サイレントヒル』(06)のアーティスティックな永劫が高く評価された。日本通としても有名で、今日本で訪ねたい場所は北海道とのこと(『クライング・フリーマン』の舞台が北海道でリサーチを重ねていたが、実際はカナダで撮影したため)。

▼作品情報▼
美女と野獣_sub2監督:クリストフ・ガンズ
出演:ヴァンサン・カッセル、レア・セドゥ、アンドレ・デュソリエ
原題:La belle et la bete
配給:ギャガ
フランス・ドイツ/2014年/113分
公式サイト:http://beauty-beast.gaga.ne.jp/
(C)2014 ESKWAD – PATHE PRODUCTION – TF1 FILMS PRODUCTION ACHTE / NEUNTE / ZWOLFTE / ACHTZEHNTE BABELSBERG FILM GMBH – 120 FILMS
11月1日(土)より全国公開

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