フランソワ・オゾン新作「Ricky リッキー」空飛ぶ赤ちゃん以上に驚きなのは、フランス母娘の女力対決!

現実的なことを語る、非現実的な物語。

シングルマザーのカティは、娘リザと二人暮らし。ある日、職場で中途採用のスペイン人・パコと出会い、恋に落ちる。ところが、二人の間にはなぜか翼の生えた赤ちゃんが授かり、平凡な家庭に突如嵐がやってくる。

これはフランソワ・オゾンの映画。今作はファンタジーだけれど、描かれているのはあくまで“女性”だ。

バツイチ×子持ちでも、決して女を捨てない生粋のフランス女・カティ(アレクサンドラ・ラミー)。職場の新入りを瞬時に品定めし、「あの彼、セクシーだわ」と狙いを定めたら即行動。彼女が目をつけたのは、優しいラテン男・パコ(セルジ・ロペス)だった。野性味たっぷりで流暢じゃないフレンチを話すスペイン男は、初婚に疲れたフランス女にとって癒しの存在なのだろう。カティは当たり前のように、娘リザを一人家に残してパコとデートを重ねるようになる。やがて二人の間に不思議な赤ちゃんが授かる。

そんなママを持つ、フランス娘にサバイバルが始まる。ママの新しい男とか、生まれてくる弟の存在に、「自分は捨てられるかも」と怯え、必死に良い子をアピール。わがままも言わず、ママの良き理解者や相談役に徹している。

そんな娘役のリザを演じたのは、大注目の子役・メリュジーヌ・マヤンス。今年の東京国際映画祭のコンペティション作品「サラの鍵」での熱演も記憶に新しいが、本作でもセクシーなママを凌ぐ存在感がある。健気で愛くるしいのは言うまでもないが、切実に訴えるまなざしや、不安や諦観の表情など、いろんな顔を見せてくれる。目の下にクマを作りながらの疲れきった表情なんかは、濡れたママの肌以上に妖艶かも。なんて末恐ろしい子!

空飛ぶ赤ちゃんというマジックとフランス女のリアルな現状。そのバランスは絶妙だ。赤ちゃんの羽も、“天使の羽”のような可愛らしいものではない。そういったところも含め、随所にオゾン監督ならではの皮肉が感じられた。独特の世界観を堪能できる90分である。

おススメ度:★★★★☆

Text by 鈴木こより

11/27(土)より、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開!

監督:フランソワ・オゾン
出演:アレクサンドラ・ラミー、セルジオ・ロペス、メリュジーヌ・マヤンス他
原題:Ricky
2009/フランス・イタリア/90分
公式サイト:http://www.alcine-terran.com/ricky/
配給:アルシネテラン
(c) Eurowide Film Production – 2008 – Tous droits réservés

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