【TIFF】鋼のピアノ(コンペティション部門)

娘のためにピアノを作る(!)父親が奮闘する人情コメディ

(第23回東京国際映画祭コンペティション作品)

娘にピアノを与えたいが、買うお金がない父親が、仲間を集めてピアノを作ろうと奮闘する…。「七人の侍」的な展開で鋼鉄製のピアノを作るという奇想天外なアイデアと、そこで繰り広げられるドラマのハチャメチャな楽しさ、親子の愛情が印象的な人情コメディ。

 

 

冒頭、2人の男女が屋外で別れ話を始めたと思ったら、次に登場するのは、レインコートを着た楽団が雨の中で演奏するシュールな映像。しかもそこは葬式の場。その上、レインコートの下にアコーディオンを抱える人公は、思うように演奏ができない。このシーンが醸し出す可笑しさだけでツカミはオッケー。一気に引き込まれる。

娘をピアニストに育てたいが、買うお金はなく、盗むのも失敗した主人公は、自力でピアノを作ろうと(!)、仲間を集める…。こう聞くと、「七人の侍」や「荒野の七人」のようなプロフェッショナルな集団が特技を使って…という展開を想像するが、ここに集まってくるのは、貧乏な主人公にふさわしい問題児ばかり。娘の結婚に納得できず、相手の男のもとへ殴り込む父親、違法な工場経営で警察に追われる男…。しかも、製造マニュアルは手に入れたが、誰一人ピアノなんて作ったことはない。やむなく、自分たちの得意な鉄鋼材を使って鋼鉄製のピアノを作ることになる。

物語は、中心となるピアノ製作を軸に、問題児たちの様々なエピソードが展開する。一見どうでもいいような内容で、若干まとまりに欠けるきらいもあるが、これらのエピソードが気分を盛り上げる。唐突にミュージカルシーンが挿入されたり、ドタバタアクションが展開したりと、おもちゃ箱をひっくり返したような楽しさ。まるで、「黒猫・白猫」や「ウェディング・ベルを鳴らせ!」などのエミール・クストリッツァ作品を見ているようだ。(動物は出てこないが。)だが、ハチャメチャな展開ながらも、最後はタイトルにふさわしい締めくくりで、見るものをホロリとさせてくれるところがまた心憎い。

最優秀男優賞を受賞したワン・チエンユエン演じるドジな父親と娘役のリウ・シンユィの対照的な演技も上手くはまっており、愛すべき作品だ。

Text by いの

製作国:中国 製作年:2010年
監督・脚本:チャン・メン
出演:ワン・チエンユエン、チン・ハイルー、チャン・シニョン、リウ・シンユィ

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