【TIFF】『シチリアの裏通り』エレナ・コッタさんインタビュー

べネチア主演女優賞! とんでもないというよりは挑戦的な作品で気に入ったの

 本作で老婆サミーラを演じた女優のエレナ・コッタさん(82)が、TIFFの上映にあわせてイタリアから初来日した。エレナさんはこの役で、今年のベネチア国際映画祭の主演女優賞を獲得。劇中では無口で頑固なキャラクターを演じているが、ご本人は溌剌としていて質問にもひとつひとつ丁寧に答えてくれた。上映後のQAでもエレナさんの良く通る声は印象的で、そのことを伝えると、「声は役者にとって大事な道具ですから。役柄によって色んな声が出るようにしなければなりません」と余裕の笑顔。そして日本の観客の反応について「この仕事をしていると観客の反応というのは良くわかるのですが、真剣に注意深く映画を観てくださるお客さんだなと感じました」と、その感触を語った。

 映画の舞台は南イタリアのシチリア島。独特の地域性をもつこの土地は『ゴッドファーザー』や『ニュー・シネマ・パラダイス』など数多くの映画の舞台となってきたが、本作では裏通りの路地で繰り広げられる女同士のバトルが描かれる。エレナさん扮するサミーラが闘うのは、エンマ・ダンテ監督自身が演じるローザ。両者は狭い路地で対向したまま、道を譲り合わないドライバーを演じる。舞台演出家として成功しているダンテ監督は、生まれ育ったこの場所を初の映画監督の舞台に選び、地元出身者ならではの目線でこの騒動をシニカルに活写している。

 サミーラ役はオーディションで決まったそうで、エレナさんは「監督は私と会って“やっと探していたものに出会えた”と思ったみたい」とニッコリ。そして脚本を読んだ時の感想と、物語に込められた意味を次のように語った。「とんでもないというよりは挑戦的な内容で、とても気に入ったの。ラストに向けて(例の)道の幅がどんどん変わっていくのだけど、そこには明確な意味があります。本当にくだらないことがきっかけで争いは起こるけど、視点を変えれば解決の方法は必ずある。戦争も含めて、無意味な衝突をやめようという意味が込められているんです」。

 アルバニアからの移民でイタリア語を話さないサミーラは、娘婿の家族から「頑固で何を考えているか分からない、イカれたババア」と虐げられ、こき使われる。エレナさん自身は北イタリアのミラノ出身だが、イタリア人の間でアルバニア移民に対する共通のイメージがあるのかを訊いてみた。「無知な人はアルバニア人に対して半世紀前ぐらいのイメージを持っていますが、それは不信感だと思います。そういう先入観に惑わされない人は、その人自身を見ると思います」と、言葉を選びながら答えてくれた。

 最初は陰気で謎めいてみえるサミーラの印象が、映画の進行とともに少しずつ変化していく。バックミラーに提げられた十字架の下で、神々しく見える瞬間もあるほど。語らないサミーラが見せた意味深な“ウィンク”は、アドリブだったのだろうか?
「あれは脚本に書かれていたものではなくて、演じていて自然に出たものです。ギリシャ悲劇みたいで、演じていて楽しかったわ。言葉が通じないと思って周りの人間はサミーラの悪口を言ってるけど、彼女は全てを理解している上でウィンクしてみせるの(笑)」。

 最後にエレナさんは、「東京はとても素晴らしいわ。3日間の滞在ではとても足りないので、また来るわね」と、笑顔で約束してくれた。
本作の劇場公開とエレナさんの再来日に期待したい。

※東京国際映画祭は10/17から10/25まで、TOHOシネマズ六本木ヒルズほかにて開催

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『シチリアの裏通り』(ワールド・フォーカス)クロスレビュー

監督:エンマ・ダンテ
出演:エンマ・ダンテ、アルバ・ロルヴァケル、エレナ・コッタ、レナート・マルファッティ、ダリオ・カサローロ、カルミネ・マリンゴラ、サンドロ・マリア・カンパーニャ
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91分 イタリア語、シチリア方言 Color | 2013年 イタリア=スイス=フランス