【TIFF】シチリアの裏通り(ワールド・フォーカス)

映画と。ライターによるクロスレビューです。

監督:エンマ・ダンテ
出演:エンマ・ダンテ、アルバ・ロルヴァケル、エレナ・コッタ、レナート・マルファッティ、ダリオ・カサローロ、カルミネ・マリンゴラ、サンドロ・マリア・カンパーニャ

作品解説(公式サイトより)
ふたりの女性がローマからシチリア島のパレルモを訪れる。ひとりは明るく若いクララ。もうひとりはパレルモ出身で故郷に複雑な心境を抱えるローザ。ローザの運転する車は狭い路地を走り、やがて地元の家族を乗せた対向車が道を塞ぐ。運転席には老婆サミーラ。ローザとサミーラは、他人からは理解不能の意地を張り、道を譲らない。かくして道は塞がれ、渋滞が起き、近隣を巻き込む騒動に発展する。

舞台演出家として著名なダンテ監督はイタリア南部気質をシチュエーション・ドラマに凝縮し、自らローザを演じる。クララにはイタリアの若手トップ女優アルバ・ロルヴァケル。そして石のように動かないサミーラを演じたエレナ・コッタは、本作でヴェネチア映画祭の主演女優賞を受賞した。


クロスレビュー

無意味な意地の張り合いに辟易した。さらにたちが悪いのは、女2人のどちらが先に道を譲るか賭けをする(しかもインチキ)、路地裏の住民の男たち。こんなバカバカしいことに時間と労力を費やすなら、他のことをしたほうが余程マシのはず。だがシチリアの路地裏から世界に目を転じれば、最近では先日まで続いた米国議会の混乱という似たような対立構造の事例があったことに思い出す。周囲への迷惑より当事者のメンツのほうが大切なのかという批判もあった。頭に血が上ることはあるとしても、どこかで冷静にならないと取り返しのつかない事態になってしまう。本作はそんな不毛な現実世界を、揶揄しているかのようだ。
(富田優子/★★★★☆)

道を歩いていて人と正面衝突しそうになることは誰でもあるだろう。その時、お互いが意地を張ったらどうなるかというアイディアが秀逸である。その戦場はシチリアの狭い裏通り。車の中に閉じ籠った女と女の意地の張り合いがとにかく凄い。動いたら負け、最初に道ばたで小便を済ませたのは、婆ちゃんのほうだ。婆ちゃん役エレナ・コッタが憎らしくもどこか可愛い。一番ひどいのは、周りの人たち。喧嘩を始めるは、これを賭けごとの対象にするはで、無責任極まりない。これは、電車の中・隣人・国、もめ事の多い今の世の中に贈られた、現代の寓話なのだ。ただし、それだけで90分はちょっとつらい。
(藤澤貞彦/★★★☆☆)

本作でヴェネチア国際映画祭の主演女優賞に輝いた、老婆サミーラ役のエレナ・コッタさんインタビュー記事はこちら↓
『シチリアの裏通り』エレナ・コッタさんインタビュー:とんでもないというよりは挑戦的な作品で気に入ったの


© 2013 Vivo film, Wildside, ventura film, Slot Machine
91分 イタリア語、シチリア方言 Color | 2013年 イタリア=スイス=フランス |

上映情報
▼TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen2
10/18 10:20 – (本編91分)
登壇ゲスト(予定): Q&A: エレナ・コッタ(女優)

▼TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen5
10/19 17:25 – (本編91分)
登壇ゲスト(予定): Q&A: エレナ・コッタ(女優)


第26回東京国際映画祭
期間:2013年10月17日(木)〜10月25日(金)9日間
場所:六本木ヒルズ(港区)をメイン会場に、都内の各劇場及び施設・ホールを使用
公式サイト:http://tiff.yahoo.co.jp/2013/jp/tiff/outline.php

トラックバック URL(管理者の承認後に表示します)