【TIFF】ドリンキング・バディーズ(コンペティション)

映画と。ライターによるクロスレビューです。

監督:ジョー・スワンバーグ
出演:オリヴィア・ワイルド、ジェイク・ジョンソン、アナ・ケンドリック、ロン・リビングストン

作品解説(公式サイトより)
ビール工場勤務のケイトとルークは心許しあう仲。互いに恋人を伴って旅行に行くと微妙な展開に…。旬の俳優たちが自然体の演技で魅了する、現実味溢れるラブ・コメディ。インディーの気鋭ジョー・スワンバーグ監督のセンスに注目!

ゼロ年代後半から米インディペンデント映画界で注目されてきたジョー・スワンバーグは、俳優として多数の作品に出演する一方、小規模のクルーでフットワーク良く監督作品を製作し続けている(2011年の監督作品はなんと7本にも及ぶ!)。本作では製作規模は拡大したが、完成台本を作らないまま現場で俳優とセリフを作りあげる即興演出は変わらず、男女の友情と恋の微妙な関係を、カジュアルに、そして極めてナチュラルでリアルな肌触りのコメディに仕上げることに成功している。人物造形も配役が決まってから役者と行い、ケイト役にはオリヴィア・ワイルドの体験が反映されているという。本作がメジャー監督へのブレイクになるか、今後の展開が極めて気になる監督である。


クロスレビュー

飲めない人には申し訳ないけれど、「ビールが飲める人間で良かったー!」と思わずにはいられない。それくらい、映画全体にビールへの愛情が溢れてると思ったら実はスワンバーグ監督、自分で実際に醸造するくらいのビールマニアだそう。友達以上恋人未満、ビール工場で働くある男女の心の機微。時には酒で盛り上がり、時には酒で失敗しながらの一進一退は、男女の間柄でなくても「あるある!」と言いたくなる。やはり酒は共に飲む仲間(ドリンキング・バディーズ)がいるからこそ楽しいもの。互いに信頼できて、ビール飲みながら愚痴を言い合える友がいれば、人生は上々じゃないか。
(外山香織/★★★★☆)

親友同士の男女がやがて恋愛関係に・・・という展開ではありきたりだが、意外にも「ほぉ」という結末で好感が持てた。私見だが仲のいい異性の友人と恋愛関係になるほうが少数派だと思うので。男の恋人役にアナ・ケンドリック。筆者の知人男性には「アナ・ケンドリックと結婚したい」「アナ・ケンドリックが好み」とアナ推しが複数いる(恐らく『50/50 フィフティ・フィフティ』などの影響大)。本作のアナはさほどお酒は飲めないが、知的で控えめで、でもここぞの時は意思を通す女性を自然体に演じている。男の前で親友オリヴィア・ワイルドが素っ裸で泳いでいても(注:彼女自身に男を誘う意思は皆無)、欲情せず彼が選んだのは・・・。男が結婚したいタイプの女ってこんな感じなのかな~と妙に得心(苦笑)。
(富田優子/★★☆☆☆)

最初から最後まで、登場人物がずーっとビールを飲んでいる映画なのにグダグダにならず、テンポ良く“男と女の機微”を描ききっているのがスゴい。きめ細かな演出と伸びやかで自然な演技が成せる技だろう。他のコンペティション作品との毛色の違いに戸惑いつつも、程よい緊張感と心地良さに身を委ねて堪能してしまった。鋭い人間観察によって造り上げられた男女4人のキャラクターには、それぞれ共感できるところとイラつくところがあって、心の中で「あるある!」を連発。楽しいけどスリル満点な異性の“飲み友”。ハイリスク・ハイリターンの関係、アナタならどうする? 観た後、友達と語りたくなる映画だ。
(鈴木こより/★★★★☆)

二組のカップルが山荘で過ごす間に、それぞれ別の相手に惹かれてしまい・・・というドラマを想像していたがいい意味期待を裏切られた。『ドリンキング・バディーズ』とはよく言ったもの。飲み仲間はその関係でいる間が一番HOTというわけだ。逆にビール好きのケイトとウイスキー好きのクリスは、やっぱり相性が悪かった。ケイトの飲み仲間ルークにはジルという恋人がいる。ケイトとは正反対の女性。ケイトが積極的で、陽気で、男とも対等に呑みまくる、そしてちょっとだらしない女性なのに対して、ジルは慎重で、思慮深く、大人しいけれど芯のしっかりしたタイプ。そう、この類型はスカーレットとメラニーの変形。それが、いかにもアメリカ的で楽しくて、“酔わされた”
(藤澤貞彦/★★★☆☆)

それぞれ恋人がありながら、他愛ないやりとりでじゃれ合う、ほろ酔い関係のケイトとルーク。どう見ても相性バッチリな二人だが、陽気で繊細な脚本は、思いがけず、こちらが想像した安易な展開を裏切った。「男と女の友情は成立するか」という語り尽くされた問いに“カウチソファーから飛び出した1本の釘”が導き出す「友情でこそ成立する男と女もいる」という新しい答え。いずれにせよ、一緒に笑って泣いてくれるドリンキング・バディーさえいれば、それだけで人生は、十分すぎるほど幸せなんじゃないだろうか。
(北青山レオ/★★★★★ ←3つは作品に、残りの2つはビールという素晴らしい飲み物に捧げます。ビール最高!)


© 2013 Magnolia Pictures LLC, All rights reserved.
90分 英語 Color | 2013年 アメリカ |

上映情報
▼TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen6
10/18 14:45 – (本編90分)
登壇ゲスト(予定): Q&A: アリシア・バン・クーバーリング(プロデューサー)

▼TOHOシネマズ 六本木ヒルズ Screen7
10/19 10:55 – (本編90分)
登壇ゲスト(予定): Q&A: アリシア・バン・クーバーリング(プロデューサー)


第26回東京国際映画祭
期間:2013年10月17日(木)〜10月25日(金)9日間
場所:六本木ヒルズ(港区)をメイン会場に、都内の各劇場及び施設・ホールを使用
公式サイト:http://tiff.yahoo.co.jp/2013/jp/tiff/outline.php