【TIFF】ふたたび swing me again

音楽映画の枠に収まらない名作

(第23回東京国際映画祭・特別招待作品部門)

「いつかA列車に乗って」「大停電の夜に」など、ここ数年の日本のジャズ映画にはハズレがないと言っていい。そしてまた、ジャズ映画にハズレなしの法則にピッタリの映画となった「ふたたび swing me again」が東京国際映画祭の特別招待作品として発表された。この「映画と。」のサイトで、映画祭での上映前に塩屋俊監督にインタビューをさせて頂いた作品です。

レコードを出し、神戸の有名なジャズクラブでの演奏も決まっていたトランぺッターの貴島健三郎がハンセン病を患い、隔離されていた島から50年以上の時を経て家族の元に帰ってくる。そして、大学でやはりジャズトランペットを吹く孫の大翔とともに、必ず戻ってくるとかつて約束したバンド仲間を訪ね、旧交をあたためる・・・。

この映画は78歳の老トランぺッターと同世代の人達にとって特に心揺さぶられる映画ではないだろうか。ハンセン病に対してまだまだ差別意識が強かった当時。ロックンロールがまだなかった60年前の青春の音楽だったジャズ。半世紀も会えなかった、青春をともに過ごしたバンド仲間との再会と変わらぬ友情。離れていても変わる事のなかった息子とのつながり。息子を通してつながった、自分のレコードを聴いて同じトランぺッターになったという孫。

この映画にはバディムービー、ロードムービー、ファミリームービーの魅力がすべてつまっている。頑固ジジイと孫のやりとりは微笑ましく、道中でバンド仲間一人一人に会うすべてのシーンは感動を呼び、離れ離れだった家族が思いを伝え合うシーンに涙が止まらなかった。

加えて、この映画で演奏されるジャズの素晴らしい事!世界のナベサダ(ナベアツではありません、念のため)が劇中で演奏しているのもジャズファンには嬉しいサプライズだし、ライブで演奏されている曲は日本人が好むジャズであるマイナー調アップテンポの曲になっているのも納得。そして最後にはエノケンの歌でも有名な「私の青空」を孫が吹く。この曲、僕はよく分からないけど同世代の人にとってはたまらん気持ちになる曲みたいです。

僕はこの映画の後半、涙が止まりませんでした。ハンセン病の事をあまり知らなくても、ジャズに興味がなくても、多くの人に観て欲しい感動作です。

Text by 石川 達郎

オススメ度:★★★★★

【監督】塩屋 俊
【キャスト】鈴木亮平、MINJI、財津一郎、青柳 翔、藤村俊二、犬塚 弘、佐川満男、渡辺貞夫、古手川祐子、陣内孝則

©2010「ふたたび」製作委員会

111分 日本語 カラー 35mm | 2009年 日本 | 配給:[ギャガ株式会社]

2010年11月13日(土)より有楽町スバル座他、全国ロードショー

「ふたたび」公式サイト:http://futatabi.gaga.ne.jp/
第23回東京国際映画祭公式サイト:http://www.tiff-jp.net/ja/

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