『るろうに剣心』日本発、世界標準のアクションに目が釘付け

 「世界よ、これが日本のチャンバラ映画だ!」——と、思わず最近よく聞く某洋画の宣伝コピーに似た言葉が浮かぶ。語弊を恐れずに言うと、『るろうに剣心』は2時間14分ずっと殺陣のシーンでもいいくらい。『孫文の義士団』(09)『捜査官X』(11)など、香港映画を中心に活躍する谷垣健治をアクション監督に招き、佐藤健の身体能力の高さを存分に活かしたスピード感溢れるアクションの数々が間違いなく本作の最大の見所である。“ポーズ”ではなく、刀と刀がぶつかり合い、刀が肉体に斬り込むリアルさまでをも表現し、これまでの時代劇とは一線を画す。

原作は言わずと知れた和月伸宏の大ヒットコミック「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」(集英社刊)。動乱の幕末、倒幕派最強の暗殺者と恐れられた“人斬り抜刀斎”は、新しい時代の到来とともに姿を消した。それから10年。抜刀斎は緋村剣心と名前を変え、日本中を放浪していた。自らたてた不殺(ころさず)の誓いに従い、どんな悪人でも相手を殺さない剣心だが、初めて出会った大切な人たちを守るための戦いを決意する――。女性からの支持が高い原作の映画化とあって、剣心を演じる佐藤健は端正な顔立ちと華奢な体でさながらマンガの主人公のよう。それが一度剣を抜くと(“斬れない刀”=逆刃刀だが)、圧倒的なスピードで敵を、そして観客を圧倒する。

 ドラマ「龍馬伝」「ハゲタカ」、映画『ハゲタカ』等で知られる大友啓史監督の重厚かつケレン味ある演出は、原作の“いかにもマンガ”で柔らかい世界観を描くには、正直、馴染み切れない違和感も感じる。しかし、本作が目指したのは、原作を巧く映像化することより、エンターテインメントの高みの追求だったのだろう。ハリウッドで学んだ経験を持つ大友監督は、あくまでアクションシーンにこだわり、アクションを通してドラマやキャラクターを語る。

『グリーン・デスティニー』(00年、アン・リー監督)のワイヤーアクションで世界を魅了した中華圏映画に、過激な(どこかドラマティックな)バイオレンスシーンが十八番になりつつある韓国映画……それらに比べ、海外で日本映画のアクションはというと、いつまでたっても「クロサワ」「ミフネ」の時代劇から抜け出すことができずにいる。『るろうに剣心』は、久々に世界に打って出られる日本のアクション映画である。むしろ、国内以上に海外マーケットで受けるのではないか。その意味で、日本映画界にとって里程標的な作品だと言ってよいだろう。

▼作品紹介▼
るろうに剣心
監督:大友啓史
脚本:藤井清美、大友啓史
原作:和月伸宏「るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-」(集英社 ジャンプ・コミックス刊)
出演:佐藤健、武井咲、吉川晃司、蒼井優、江口洋介、香川照之
配給:ワーナー・ブラザース映画
2012/日本/134分
公式サイト http://wwws.warnerbros.co.jp/rurouni-kenshin/
8月25日(土)より新宿ピカデリーほか全国にて公開
※8月22日(水)、23日(木)、24日(金)先行上映決定!

(C) 和月伸宏/集英社 (C)2012「るろうに剣心」製作委員会

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